原題 MAO'S LAST DANCER
製作年度 2009年
製作国・地域 オーストラリア
上映時間 117分
原作 リー・ツンシン 『毛沢東のバレエダンサー』(徳間書店刊)
脚本 ジャン・サルディ
監督 ブルース・ベレスフォード
音楽 クリストファー・ゴードン
出演 ツァオ・チー/ジョアン・チェン/ブルース・グリーンウッド/ カイル・マクラクラン/アマンダ・シュル/ジョアン・チェン/ワン・シャン・バオ/グォ・チャンウ/マデレーン・イーストー/カミリア・ヴェルゴティス
オーストラリアでベストセラーとなった、リー・ツンシンの自伝を映画化した感動作。中国の貧しい村出身の少年が幼くして両親と別れ、バレエダンサーとしての才能を開花させる過程をドラマチックに描く.主演は、自身も中国出身で現在は英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍するツァオ・チー。
リー(チー・ツァオ)は1961年、中国・山東省で7人兄弟の6番目の息子として誕生する。彼は11歳で親元を離れ、北京の舞踏学校でバレエの英才教育を受ける。やがてたくましい青年に成長したリーは、中国を訪れていたヒューストンのバレエ団の主任ベン (ブルース・グリーンウッド)の目に留まり、アメリカでのバレエ研修に参加することになる。
物語は18歳で留学の為に初渡米した中国人ダンサー、リー・ツンシン(李存信)が、
自由の国アメリカの地に降り立ち、カルチャーショックを受ける様子を映し出し、
生まれ育った故郷・中国山東省での彼の運命を決めたある日に思いを馳せるところからスタートする。
この夏万国博で入場者の記録を塗り替えた中国の、僅か40年ほど前の国内事情が描かれている。
まさにリー少年の小学時代は、毛沢東婦人であり元女優という江青の悪名高い文化大革命の真っ只中。
江青の
革命的現代バレエを指導する北京舞踏学院のスカウト隊に向けた、担任のたった一言で彼は故郷を離れることになる。
国家の為、村の希望の星と祭り上げられて―。
バレエがなんたるかも知らず、まして目にしたこともない少年たち。
ただ愛国心を植えつけられて、指導者の言うとおりのレッスンを重ねる日々に、
少年らしいホームシックや反発心もあり、好きで選んだ道というより、周囲の期待に応えるための訓練に心が折れそうなある日、
バレエを愛するチェン先生から託された
ホンモノと出会って、彼の中のスイッチが入り、練習に打ち込むようになる。
やがて毛沢東が死去、江青も逮捕された北京にアメリカからの視察団が訪れ、ヒューストン・バレエ団のベンとの運命を変える出会いに繋がっていく。
この時のベンが(北京舞踏学院の生徒に関して)
「技術は高いが、どちらかと言えばアスリート。ダンサーではない」
というような事をいっているが、流石にちゃんとした分析。
ダンスレッスンというよりは体育学校の訓練のようなイメージがあり、ちゃんと伝わっている。
たとえば、予告にある、チャン先生が反革分子だとして投獄されるきっかけとなった舞台の後、まるでどこぞの将軍サマの北の国かと思わせる、
軍服に銃という「紅色娘子軍」という中国バレエには、ハッキリクッキリ、当時リー少年たちが置かれていた状況が映し出されており、何の説明も要らないところ。
そして国を代表して渡米したリーは、運命を変えるエリザベスとの出会いを経て、
たった一度の幸運なチャンス、プリシンバルの代役という抜擢に見事応えて大喝采を浴び、自由に踊る事の出来る喜びを深くしていき、
更なる試練に向かう事となる。。。
原作に沿って再現された亡命劇の攻防。中国の領事館だから、あっても不思議ではないけれど、
判っていてもココは緊張と恐怖と怒りで胸が震えるシーン。
これは、先に鑑賞したジャッキー(中国)とジェイデン(米国)の「ベスト・キッド」で感じた両国のイメージ戦略は感じられず、
舞台はアメリカで、主人公は中国人。そしてこの映画を製作したのがオーストラリアなので、この当りの描写は公平なものだったと思われる。
リアルな亡命劇の舞台裏といった感があり衝撃です。
そして、力強い味方もあり、祖国・中国の広告塔としての将来を捨て、自由なバレエの道を選ぶ彼には厳しい現実と、
別れが待っていたけれど・・・・
ヒューストン・バレエ団プリンシパルに昇格したある公演は、VIP待ちとなり、
というリー役の現役プリシンバル、ツァオ・チーの素晴しい演技「春の祭典」の後、その時は訪れるのだけれど、
誰もが今、ここで気持ちよく号泣~となるまさにその時、
うわあぁぁ~~ぁん ・・と幼女の泣き声が。。。
しかし、その声の主はそれっきり声を立てませんでした。
実はおばさんもコドモ時代に覚えがあります。ちゃんと声を殺して、偉かったですね・・・
政治的時代背景も、きっと良くは解らないながら幼い少女も泣かずにいられなかった、、
(バレエをやっている子だったのか??)
実はその時、一瞬で現実に戻ってしまい涙も引っ込みましたが、
ラストのリーの晴れ晴れとした素晴しいバレエにまた蘇りました。
現在も活躍中の人物の「伝記」ということで、ストーリーとしての面白さには期待してなかったのでしたが、
無駄のない脚本と、惜しみないバレエシーンにただただ惹きこまれていた2時間でした
ただ、欲を言えば、
亡命してからの彼の心理をもっと丁寧になぞって欲しかった!
最後が駆け足で、勿体無かった。
もっとずっと、いつまでも美しい現役プリシンバルのCGなしの優雅でダイナミックなバレエを観ていたかった・・