忘れられない思い出

家に帰るや否や目を疑ってしまった。
「ここは我が家？？？」

何と下の娘の友達が20人以上集まり庭でバーベキューをしていた。
今春高校を卒業し、昨日最後の定期演奏会を終えた吹奏楽部のメンバーとの打ち上げらしい。
それにしても盛り上がっている。

部長をしていた娘は　仲間との最後の会を自分で催したかったみたい。

いろいろ気にかかることはあるけれど「高校最後の青春の思い出だろうし・・・。」
この際だから好きなようにやらせておこうと決めた。

そして父親は何も口を出さないことが一番いいと思った。


●我が家にこんな大勢の高校生が集まったことはない、あの日以来だ。

「あの日」とは、僕が高2の夏休みのこと。

初めて組んだバンドの初めてのコンサートが学校の方針で無理やり中止させられた。

チケットは300枚以上作ったが完売。
それが開催の数日前の急な中止命令、会場も学校からキャンセルされた。
今と違って頼りになる大人も知らなかったので途方に暮れた。

そんな時思いついたのが「我が家のお座敷でコンサートをやろう」ということ。
古い作りの家なので全部屋ふすまを外せば50人くらいは入るだろうと思った。
そして大人たちの力を借りず同級生が集まり手作りコンサートをやった。

ホールではない、畳の上のステージ。
このコンサートの写真は今でも涙なくして見ることはできない。

あの日父は音楽なんて何にも興味なかったが、息子の頼みを聞いてくれて、
家を開放し、一日姿を出さなかった。
何を手伝ってくれたわけじゃないけれど、今は父の優しさがわかる。


18歳、みんな人生で一番楽しい春だろう。
いい思い出になればと願う。