昨年もここで取り上げた1年生向けの題材です。
今年で3年目の実践となりました。
どんな題材なのか、ざっと言うと…
①まず校内の景色の中から、「光の美しさ」を感じる景色を見つけて写真として切り取る。
②その写真をもとに水彩画として表現していく。…のですが、この題材のポイントは"有彩色一色で"描くという点。
白と黒の無彩色の使用も許可するのですが、メインはあくまで一色の有彩色。この一色だけで光の美しさを感じる絵に仕上げる題材です。
この題材開発のきっかけ。
絵画作品の制作過程で、
「鉛筆で描くのはいいけど、絵の具を使うとどうも上手く描けない…」
という生徒によく会うのですが、そういった子に多く見られる共通点が、『水を上手く使えていない』ということだと思ったからです。
絵の具と筆と水をどう使ったら、自分が表したい感じに近づくのかわからないんですよね。
だから鉛筆同様に一色だけで、鉛筆同様に塗り重ねて濃く暗くしていく描き方を、”絵具で”させてみようと。
一年目はねらいどおり上手くいきました。
教師が思っていた以上にきれいな作品が次々に仕上がりました。
二年目。
なぜかうまくいきませんでした。
彩色の段階に入る際に『有彩色、白、黒』の三本の絵の具チューブを所持させて制作を開始させました。「使えるのはこの三色だけ」とわかりやすくしようと思ったのです。加えて「できる限り有彩色一色で表現し、難しい箇所は白や黒混ぜてもいい」といったニュアンスで指導しました。
すると、
前半から何か違う感じの作品が多く生まれてしまったのです。
制作前半から無彩色を積極的に混色する生徒が数名現れ、ポスターカラーで描いたのと何ら変わらないような、指導者の意図とは異なる方向性の作品がいくつかできてしまいました。
ちょっとしたことで題材のねらいから外れていくものなんだなと実感。
難しいものです。
その時の気分…というか、思いで変わるものなんです。
『もっと自由に色んな表現をしてほしいな』
ここ1年くらいそういった思いが強かったので、あまり縛らず思ったことをどんどんやらせてみようとしていた結果だと思うのです。
そこで今年はこの題材に取り掛かるにあたり、指導方針・方法を改善。
『ひとまずは選んだ1色の有彩色しか持たせない・使わせない』
『選べる有彩色には制限を設け、こちらが選んだ明度の低い数種類のみしか使わせない』(黄色などを許可してしまうと、暗い部分を表現するためにすぐに黒を混ぜたくなりやすいため)
『白と黒は仕上げの段階ではじめて使用を許可する』
すぐに明るい部分に白を塗っちゃったり、暗い部分に黒を混ぜた色を塗っちゃったりできないので、筆に含ます水分量を調節したり、水でぼかしたりと、ねらいどおり水の使い方を工夫して制作を進め始めてくれています。
要するに、
その題材で何を学ばせたいかの軸をしっかりと持って、そのための制限はしっかりと設ける
ってことは大事だなと気づかされました。
また、『段階を追って3年間でどんな力を身に付けさせたいか?』ということも考え、一年生の段階では制限が多い中でしっかりとねらいを達成させる指導を心がけねばと思うのでした。
さて、年度末です。
三年生は卒業まで一ヶ月を切り、残りの授業数もあと数時間。
卒業を意識した題材を実践中です。
こちらもそのうち紹介させていただこうと思います。