蒲田耕二の発言

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iPhono

2015-07-23 | 音楽
をキーワードにアマゾンで検索すると、「もしかしてiPhone」と訊かれる。違うんだよねえ。スマホではなく、イギリス渡来のフォノイコライザー(って何だ? グーグル検索してください)。


この製品、並の価格なのに珍しくもイコライザー・カーブを変更できる。無論、EMTの目の玉が飛び出るプロ用プリアンプみたいに種々のレコードに合わせてピンポイントの調整ができるわけじゃないが、3種のカーブが選べるだけでもLPを聴く上で大きな福音だ。

LPは普通、高音と低音の補正にRIAAカーブなるものを適用する(この辺りも分かりにくかったらグーグルとウィキペディアで調べてね)。補正値がメーカーごとにバラバラだとユーザーが迷惑するから、1950年代半ばに米レコード協会が定めた規格だ。以後、オーディオメーカーはアンプのイコライザーをRIAAで一本化するようになった。

ところが、肝心のレコードをRIAAでイコライジングしていたのはアメリカと日本ぐらいで、ヨーロッパでは1980年まで、高音の補正量がRIAAより少ないDeccaカーブが主流だったらしい。てことは、1948年に始まり80年代半ばにCDにバトンタッチしたLPの歴史のほとんどじゃん。

ヨーロッパは日本と違って、アメリカの決めたことにすぐには従わない。

どうりで、50年代にプレスされたマリア・カラスの英コロンビア盤がしばしばキーキー甲高く聞こえてたわけだよ。RIAA一本槍のアンプだと、再生音が高音過剰になってしまうから。

で、Deccaカーブを使ってカラスを聴いてみる。なるほど、声が大分落ち着いて陰影が濃くなった。

iPhonoはさらに、カートリッジの負荷抵抗値も変更できる。これは他のアンプでもできるが、100Ωと47kΩだけとか大雑把な上に、100Ω以下はノイズが多くて使い物にならなかった。iPhonoはマイクロスイッチの組み合わせで8種類の設定ができて、SN比もいい。

カートリッジは負荷抵抗値が大きいほど高音が強くなり、少ないほど低音が豊かになる。したがって、レコードを制作者の意図どおりの高低バランスで再生しようと思えば、負荷抵抗も各カートリッジの適正値に合わせる必要があるわけです。アナログって、メンドくさいね。

オレの使ってるオルトフォンの推奨値は10Ωだが、さすがにそんな低い設定は無理なのでiPhonoで可能な最低値の22Ωにしてみる。すると、おおーっ! カラスの声からあの険しいカドが消えて、温かな潤いに富んだシルキー・ヴォイスに一変したではないか。硬いこわばりが取れたので、彼女が歌に載せた表情がよりよく聴き取れる。そうか、カラスがナマで聞かせていたのは、こういう歌だったのか。

CDのカラスはぜーんぶ本物ではないが、負荷抵抗の不適切なカートリッジで再生されたLPのカラスも本物ではない。負荷抵抗値の調整機能は、イコライザー・カーブのそれ以上に御利益大だった。

iPhonoなるちっぽけな機器、代理店の態度が悪いので(問い合わせを送ってもナシのつぶて)あまり持ち上げたくないのだが、使いでは結構ある。

しかし英国って、病的な老害国のイメージが強かったが、最近はなんか往年の日本のお株を奪ったみたいに元気だね。独創的なデザインと機能のダイソンとか。

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