山の上のロックの永~い旅(5)

2017-11-20 21:48:04 | 童話
何年か経った時に台風が来た。
山に沢山の雨が降り、小川の水量が増えて、僕はまた動き出した。

そして、もっと広い川まで滑って来た時、急に水の流れが激しくなってきた。
あっちこっちぶつけながらすこしずつ進んだ。
その時、前の方の川岸や木が見えなくなり、空が見えてきて、急に体がふぁっと浮かんだ。 

次の一瞬、下へ下へと体が落ちて行った。
それは、お父さんやお母さんから聞いていた滝だ。
初めて見たし、初めて下へ落ちて行った。

ドボーン、ドスン。僕は滝壺に落ちてお尻をぶつけた。
その衝撃で体が半分くらいになってしまい、滝壺から飛び出した。
そして、僕の体の仲間が沢山できたのだ。

『みんな大丈夫かい?』
『大丈夫だよ。』
『大丈夫。』
『元気だよ。』
『一緒に居るよ。』
『僕も元気だよ。』
『良かった、良かった。みんな無事でよかった。』
『この滝壺から出るのに何年かかるかわからないけれど、みんなで海に向かっていこうね。』

僕は滝壺の中で、気が付かないくらい少しずつ動いていて、何年もかかって滝壺から出ることができた。
そして、出てくると目の前が明るくなって綺麗な空が見えてきた。大きな川だ。
僕はこの広い川の中で転がり、大きな岩にぶつかった。
『痛いっ。岩にぶつかったので、頭とお尻の角が取れちゃった。』
僕は次々と岩にぶつかりながら転がって行った。