僕と、お父さんとボクとの約束(6)

2016-03-21 09:33:40 | 童話
『ねぇお父さん、お父さんは小さな子供の頃は、走るのが速く、鉄棒の逆上がりもできていたの?』
『走るのが遅く、鉄棒の逆上がりも全然できなかったよ。』
『でも、今はできるでしょ?』
『そうだね、逆上がりはできるけれど、今は走るのは遅くなっただろうね。全然運動をしていないからね。』
『でも速かったんでしょ?』
『そうだね、速かったよ。』

『お父さんはだれから教えてもらったの?』
『お父さんのお父さんから教えてもらったのだよ。』
『ふぅ~ん。僕はね、お父さんに教えてもらったんだよ。』
『お父さんは教えていないよ。』
『ううん、お父さんの子供の頃の男の子から教えてもらったんだよ。』
『そうか、お父さんも、お父さんのお父さんの子供の頃の男の子から教えてもらったんだよ。』
『僕と同じだね。』

『これは、お父さんとお前との秘密だよ。』
『うん、僕とお父さんとの秘密だよね。それから、僕はボクとずっと仲良くするからね。』

               終わり

僕と、お父さんとボクとの約束(5)

2016-03-20 09:27:01 | 童話
僕は、ご飯を食べている時に、徒競走で3番になった事と、鉄棒の逆上がりができるようになった事を、お父さんとお母さんに話をした。

お母さんは
『すごいわね。』
と言ってくれて、お父さんは
『どうしてできるようになったんだい?』
と聞いたので、僕は
『新しい友達が教えてくれたんだよ。』
と答えた。

だけれど、ボクの事は話をしなかった。

そしてある日、僕は友達とボクの3人で自転車で近くの公園に行った。

公園までの道は上り坂だが、ボクが1番で僕が2番で、友達が3番目だった。
今迄は僕は友達にかなわなかったので、友達が
『どうしてそんなに速く走れるようになったの。』
と言って驚いていた。
 
僕を頑張れるようにしてくれたボクはすごいと思う。

ボクは本当に僕のお父さんの子供の頃なのだろうか?

僕と、お父さんとボクとの約束(4)

2016-03-19 13:46:43 | 童話
僕は、その日から毎日、ヒザを高く上げて走る練習を続けていて、学校の徒競走で5人で走って3番目になった。

『今度は逆上がりをやってみようよ。』
『うん、頑張るよ。』
『分かった、手が伸びてしまっているからできないんだ。鉄棒を回り始める時にヒジを曲げて、体を鉄棒にくっつけるようにするんだよ。ボクがやってみるね。』
『本当だ、すごいね。』
『ボクと一緒にやれば君もできるようになるよ。』

僕は、その日から毎日、ヒジを曲げるようにして練習を続けていて、逆上がりができるようになった。

僕は速く走ることと、逆上がりができるようになる練習を続けていたので、ご飯を食べるのも、学校へ行くのも早くできるようになった。

僕と、お父さんとボクとの約束(3)

2016-03-18 21:31:20 | 童話
『どうやってやるの?』
『ボクと同じ事をするだけだよ。』
『最初は走る練習をしようか?』
『うん、いいよ。』
『走る時はね、ヒザを高く上げるようにするんだよ。一緒にやってみようよ。』
『うん、だけれど速く走れるようになれるのかぁ?』
『なれるよ、ボクと一緒に頑張ればできるよ。』
『うん、頑張る。』
『よ~い、どん。もっとヒザを高く上げて、もっと高く。そうそう、もっと高く上げて。』
『なんか、速く走ることができそうだ。』
『本当に速く走れているよ。』

僕と、お父さんとボクとの約束(2)

2016-03-17 21:21:01 | 童話
次の日も、僕と友達が学校へ行っている時に、その知らない子が一緒に歩いていた。

『ねぇ、君はだれ?』
『ボクの名前はツヨシ。ボクは君をよく知っているよ。』
『なんで君は僕を知っているの?』
『ボクはね、君のお父さんの子供の頃なんだ。』
『でも、お父さんは大人で大きいよ。』
『お父さんも子供の頃があって、それがボクなんだ。』
『ふぅ~ん。だけれど、僕は朝お父さんが会社へ行く時に、行ってらっしゃいと言ったんだよ。』
『それはお父さんで、ボクはお父さんの子供の頃なんだよ。』
『ふぅ~ん。だけれど君はなぜ、いつも僕の所にいるの?』
『ボクは君が頑張っているのは知っているけれど、ボクと一緒にもっと頑張れるようにしようよ。』