ほんわか村(1)

2017-11-25 10:04:11 | 童話
ここは南の島のほんわか村、村長さんはカピバラさんです。
村人は、ゾウさん、キリンさん、カバさん、アライグマさん、ナマケモノさん、ミーアキャットさん、そしてチンパンジーさんです。

村長のカピバラさんは、いつもボーとしていているノンビリやさんです。
野菜を食べる事と、お風呂に入ってボ―としているのが大好きです。

ゾウさんは、どっしりしたおとなしい性格で、みんなに信頼されています。
暑い時は鼻でみんなに水をかけてあげます。

キリンさんは、村一番のノッポさんで、その長い首でいつも村全体を見て、村の平和のために頑張っています。

カバさんはいつも川の中にいて、暴れん坊のワニから村の動物達を守っています。

アライグマさんは料理が上手で、村の動物達を喜ばせています。
もちろん料理をする時は手をきれいに洗います。

ナマケモノさんは、うん~と、何しているのかな?
でも、みんな集まって相談する時は、いろいろな意見を言ってくれるので居ないと困ります。

ミーアキャットさんはダンスが上手なので、みんなが集まってダンスをする時に、ダンスを教えてくれます。

チンパンジーさんは、道具を持つのが上手なので、道具を使ってみんなの家を作ってあげます。

村の動物達が最初に相談したのは、村に名前を付ける事でした。
それぞれの動物から代表が集まり名前を相談しました。
いろいろな意見が出ましたが、ナマケモノさんが
『私はみんなと同じように早く動く事ができないが、ここは危険な動物が居ないので安心して暮らせて、ほんわかとしていて良い所だよ。』
と言いました。それを聴いたチンパンジーさんが
『ほんわかして良い所だから、【ほんわか村】にしたらどうだろうか。』と言いました。
他の動物達もみんな
『いいね。』
『いいよ。』
と言ったので、村の名前は【ほんわか村】にする事にしました。
そして、村の入口に『ここは、ほんわか村の入口です。』と、チンパンジーさんが書いたカンバンを取り付けました。
そのカンバンを見て、全員の動物が手をたたいて喜びました。
ゾウさんは鼻を高く上げて、キリンさんは首を大きく振って、カバさんは口を大きく開けて、みんなと一緒に喜びました。

僕は自転車(3)

2017-11-24 21:29:04 | 童話
僕が他の家に貰われて行く日、今度の家のおじさんが自動車でやって来た。
おじさんが僕を自動車に積む時に、僕を大事にしてくれた男の子が、サドルをポンポンと叩いて『今迄ありがとう。』と言った。
僕はみんなに見つからないようにして涙を流した。
『バイバイ。』男の子と男の子のお父さんに見送られて、走り出した自動車の中から手を振った。いや、手ではなくハンドルを振った。

ほどなく、自動車は今度僕に乗ってくれる子供の家に着いた。
『わ~い自転車だ、ピカピカの自転車だ。』
『大事に乗るんだよ。』
と言っておじさんが僕を自動車から降ろした。
『うん、大事にするよ。』
『明日の日曜日に、公園で乗る練習をさせてやるよ。』
『うん。』と言って僕をずっと眺めていた。

次の日から、自転車の練習が始まった。
『ほらほらっ、下を見ないで前を見て。』
僕は、練習する時に大人はみんな同じ事を言うのだなぁと思った。
『お父さん、手を離さないでね、離したらダメだよ。』
前の男の子の時と同じようにグラグラ、グラグラとしている。
僕は必死になってこらえて転ばないようにしていた。
しかし、おじさんが手を離した時に僕は転んでしまった。
そして、この子も膝を擦りむいてしまった。
『うわ~ん、痛いよ~。』おじさんは『少し怪我するくらいでないと自転車に乗れないよ。』
また僕は前の男の子のお父さんと同じ事を言っていると思った。

毎週、練習をして、グラグラするが、やっと転ばないようになった。
この子も僕を大事にしてくれる。転んだ時は家に帰ってから、僕を綺麗に洗ってくれる。
この子も大きくなって、大きな自転車を買っても、僕を大事にしてくれると思う。
そして、外から帰って来た時に、何も言わないでサドルをポンポンと叩いてくれると嬉しいなぁ。そう思いながら、この子と練習を続けている。

おしまい

僕は自転車(2)

2017-11-23 08:53:47 | 童話
男の子は、夕飯の時にお母さんに
『あのね、僕、自転車に乗れるようになったよ。』
と、うれしそうに話した。
お母さんは『あらそう、頑張ったのね。良かったわね。』と喜んでくれた。
そして、しばらくお父さんや友達と一緒に僕に乗って楽しんだ。

ある日、お父さんが男の子に
『大きくなったので新しい自転車を買ってやろうか?』と言った。
男の子は嬉しそう『うん。』と言った。
だけれど、男の子は『要らない、僕が自転車に乗れるようになったのは、この自転車だったからなんだ。僕はこの自転車が大好きなんだ。僕がこの自転車を乗らなくなると自転車がかわいそうだから。』と言ったので、僕は『ありがとう、だけど僕は違う子供に乗ってもらうから大丈夫だよ。』と涙を抑えて言った。

お父さんが『それでは、新しい自転車を買ってやるが、この自転車も家に置いておくから、時々この自転車にも乗ってやればいい。』と言ったので、男の子は『うん、そうする。』と応えた。
僕は嬉しくなり、『ありがとう、ありがとう。』と何度も言った。

そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。
新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをポンポンとたたいてくれる。
何も言わないが僕は嬉しい。
少し経って、僕の仲間ができた。男の子が大人になって、自分のお金でカッコいいマウンテンバイクを買ったのだ。
そして、今迄乗っていた大きな自転車も綺麗にして、僕の隣り置いてあるり、2台の自動車で時々お話しをするので僕は寂しくない。

ある日、僕は他の家に貰われて行くことになった。
小さな子供が居る家で、自転車の練習をしたいというのだ。
僕は昔を思い出した、転びながら練習をしたことを。
僕は今度の小さな子供も上手く乗れるようにしてあげようと思った。

僕が貰われて行く日に、男の子がやって来て、サドルをポンポンと叩いた。
僕は涙をこらえるのが大変だった。僕は幸せだったし、今も幸せだ。

僕は自転車(1)

2017-11-22 09:06:37 | 童話
僕は自転車、この家の男の子の自転車。
男の子のお父さんの自転車は古いが、僕は新しい。
もう一つ、お父さんのとは違うところが有る。
僕には補助輪が付いている。
男の子は頑張っているが、なかなか補助輪が外せない。

今日も補助輪を外して、お父さんと公園で練習をしている。
『お父さん、手を離さないでね。』
男の子が乗った僕がグラグラ、グラグラ。なかなか上手くならない。
お父さんが『下ばかり見ているからだ、もっと遠くを見ないとダメだよ。』
だけれど男の子は遠くを見ることができない。
『ほらほらっ、前を見て、遠くを見て。』
お父さんの声は聞こえるが、顔が自然に前の車輪の地面を見てしまう。
急に僕がグラグラして転んでしまった。お父さんが手を離したのだ。
男の子は血のにじんだ膝を見ながら泣くのを我慢している。

『少し乗れるようになってきたから、もう少しだよ。』
お父さんが励ましているが、男の子は膝が痛くて仕方がない。
『男だろっ、頑張れ。』
男の子は『僕は男でなくてもいい。』と思った。

そこへ、男の子の友達が自転車でやって来た。
『なんだ、まだ乗れないのかよ。』と言った。
自転車の僕は男の子が乗れるように頑張ることにした。
グラグラしていても、僕が倒れないようにすればいいのだ。

僕は男の子に『一緒に頑張ろうよ、僕も倒れないようにするから。』といって励ました。
『うん、頑張る。』と言って、友達の前で僕を漕ぎ始めた。
僕はグラグラしながらも倒れないように男の子を支えた。
友達は『なんだ、乗れるじゃないか。』
男の子は嬉しそうに『うん、そうだね。』と言って公園の中をぐるぐると、いつまでも僕に乗って走っていた。
だんだん上手くなり、僕はグラグラしなくなった。
お父さんさんが『おぅ、乗れるようになったじゃないか。』と言い、男の子以上に嬉しそうにしていた。

山の上のロックの永~い旅(6)

2017-11-21 21:20:39 | 童話
『あれっ、あっちこっちの角が取れちゃったので、段々丸くなってきた。』
そして、取れた角の小石も川の中でコロコロと転がっていた。

『お~い、みんな大丈夫かい?』
『大丈夫だよ。一緒に転がっているからね。』
『だけど、君達の方が小さいから転がるのが速いね。』

段々川が広くなって、魚も多くなってきた。人間が川下りする船とも出会った。
『僕はロック、君達は?』
『ぼくはコイ。』
『わたしはアユ。』
『ぼくはイワナで、あそこにウナギも居るよ。』『ロックはどこへ行くの。』
『海へ行くんだよ。』
『海はまだ遠いよ。』
『この川を転がって行くと海へ行けるよね。』
『うん、海の少し前まで行った事があるけれど、遠いよ。』
『ありがとう、頑張って行ってくるからね。』

そして、何年か転がって海の入口にやって来た。
『水が少し塩辛くなったね。』
遠くに大きな船が見えてきた。
『海だ、海だ、海に着いたのだ。』
僕の上を大きな波がザブン、ザブン。
『ここは、波でユラユラと楽しいな。』
『やぁ、僕たちよりも前に来た石達もみんな丸くなっているね。』

『お父さん、お母さん、僕は海に着いたよ。お姉ちゃん、弟、海で待っているからね。気を付けて来るんだよ。』

何年もかかったけれど楽しい旅だったと、僕は思った。

    おしまい