堤保有つれづれ日記

つれづれに感じること

行政の文化化

2009年05月06日 | 地方自治

NHKの憲法記念日の特集番組で第25条を取り上げていた。言うまでもなく第25条は「生存権」を規定したものである。
 第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」という規定の「文化的」について、演劇や絵画鑑賞のできる程度の生活も保証しなければと言うのとは大分違うのではないかと思う。
 これは本来「文化」という言葉の持つ意味が深くかかわっており、そのことを理解しなければこの条文を本当に理解できないのではないだろうか。
 現在の日本において第25条の存在は大きく、それを具体化する必要性を感じた。
 そんな中で、「文化」に関連して、ふとあることを思い出した。

 かつて、「行政の文化化」について議会で取り上げたことがあった。
 相当前の話で、いつだったか記憶にないが、当時、企業の考え方に変化が生じ、コーポレートアイデンティティ(Corporate Identity )という概念に注目が集まっていた。TVコマーシャルも企業が販売する物を直接・ストレートに表現するのではなく、会社のイメージや社会貢献に資する姿を映像化し、企業のアイデンティティを表面に出すという方向に変わってきていた。
 行政も、東京都が先駆けとなって、コーポレートアイデンティティをもじって、シティアイデンティティ(CI)ということを言い出した。
 つまり、各自治体がその街の持つ歴史的背景や地域性、住民のパワー等の特性を生かし、更に発展させていくことが地域住民にとって住んでよかったという街になることの要件であると感じたからであろう。
 これが、のちに地方分権の確立につながり、都市間競争へとの流れを作ったものと思われる。
 その頃、行政の文化化ということも言われ始めた。
 当時、議会で「行政の文化化」を取り上げると、文化行政と混同され、議論が噛み合わなかったことを思い出す。

 憲法第25条でいうところの「文化」とは、単に演劇とか絵画とか彫刻、音楽という「狭義」の文化ではなく、むしろ「行政の文化化」でいう「文化」に近いものだと思う。
 そろそろ本題に入らなければならないが、次の予定が入っており、日を改めて書くこととする、取敢えず本日はこれまで。


議会基本条例について

2009年01月14日 | 地方自治

 2009年1月13日付毎日新聞の多摩版に、「議会基本条例 動き鈍い都内自治体」という記事が載っていました。
 記事は、全国的に議会基本条例が制定される動きの中、23区も多摩地域もその動きは鈍いと指摘しています。
 その中で、多摩市が3月以降に条例案を作成し、09年度内に制定を目指そうとしていることを紹介しています。

  自治基本条例と議会基本条例
 先進的な地方自治体では、地方主権、行政への市民参加の時代にあって、地方自治体の憲法ともいうべき自治基本条例を制定する動きが起こっています。
 自治基本条例は、自治体の骨格ともいうべき、市民、議会、行政(市)のあるべき姿とその関係性を明確に規定するものといえましょう。
 市民、議会、行政は相互が密接な関係にあり、互いに影響しあいながら、理想的な地方自治体を形成していく必要があると考えます。
 そのような観点からすれば、議会基本条例は単独の条例とするのではなく、自治基本条例の中に含ませるべきであると考えます。

  制定の過程が重要
 本来の議会の持つ権能で、最重要なものは条例制定権であることは言うまでもありません。議会が追認機関に堕してしまった大きな理由は、その条例制定権を放棄してしまっているという現実に起因すると言わざるを得ません。現在施行されている条例の99パーセントは市長提案により制定されたものと言っても過言ではありません。
 多摩市では既に自治基本条例が存在するにもかかわらず、議会基本条例を制定すると言うのは理解できません。
 たぶん、自治基本条例制定のプロセスにおいて、市民、行政、議会においてさえ、地方議会のあるべき姿、使命について十分な理解がなされていなかったのではないかと思うしかありません。議会がそのことに気がついたならば、市民、議会、行政の関係性の中から、再検討し、自治基本条例の改正という手続きを踏むべきであると考えます。
 議会という狭い範囲の中でだけ議論するのではなく、広く、市民の意見を聞きながら、市民参加の中で行うべきであると考えます。
 条例を制定するとき、そのプロセスが極めて重要であると考えます。

  立川市議会の動き
 立川市議会でも、議会改革の動きがあり、議会基本条例の制定も視野に入れているようでありますが、違和感を感じないわけにはいきません。
 議会のあるべき姿の内の一つに、透明性の確保というのがあります。情報提供、市民との情報の共有ということであります。議会がどう変わっていくのかということは、市民の共通の関心事です。自分たちの選んだ議員で構成される議会が、地方主権の時代の中でどう変革していくのか、どう機能していくのか、市民とのかかわりはどうなるのか。
 議会改革のテーマは何なのか、論点は何なのか、市民が知りたいのは当然です。今からでも遅くはありません。懇談会の概略で結構です、明らかにしていただきたいと思います。
 


自治体のユニークな政策―杉並区

2009年01月04日 | 地方自治

  減税自治体構想杉
 並区は2007年7月に減税自治体構想研究会(会長:黒川和美・法政大学教授。)を立ち上げ、このほど、4回の会議を経て、減税自治体構想研究会報告書(案)がまとめられました。
 その構想の内容は、毎年一定額の財源を積み立てて、必要に応じてその果実を活かし、将来的には、区民税の減税を実現しようという「減税自治体構想」であります。

  地方主権
 2000年(平成12年)に地方分権一括法が施行され、地方分権の時代に入ったと言われています。
 「分権」「主権」という言葉の解釈については色々ありますが、「中央主権」、「中央集権」の流れの中にあった日本を変革するという意味において、私は、敢えて、『地方主権』という言葉を使いたいとかんがえます。

 地方分権一括法が成立した時に、これからは各自治体が独自性を発揮して個性豊かなもになると言われましたが、現実はどうでしょうか。
 財源の移譲が遅々として進まないのは確かですが、それを理由に自治体の経営改革が果たされていないのも残念な現実であります。
 そのような中で、杉並区の今回の独自の試みは注目に値するものであると思います。
 減税自治体構想は様々な理由から困難性を伴い、実現に向けて紆余曲折が予想されますが、健闘を期待したいです。


 
  首長と議会の関係は
 地方主権という言葉の中に、議会のあるべき姿も含まれると考えます。
 言うまでもなく、議会の最重要権能は条例制定権でする。条例制定に実効性を持たせるのが予算であります。
 従って、執行権の長である首長は条例が可決した後には、各条例に対し、予算化する義務があると考えられます。
 しかし、国会と地方議会の根本的違いは一方が議院内閣制であるのに対し、他方が二元代表制であるということです。
 そこで、首長と議会の間に緊張関係が生じる。これが地方自治体のあるべき姿であると考えます。
 しかし、現実はどうでしょうか。

  議会改革は進んでいるのか
 地方主権による横並び行政からの脱却が期待されたにもかかわらず、個性ある自治体経営がなされていないのは、市長をはじめとする行政側にも責められる部分はありますが、議会にも大きな責任があるのではないだろうかと思います。

 立川市においても議会内に検討のための懇談会が設置されたようですが、その審議の内容について全く市民に知らされていないのが現実であります。
 議会改革の重要な要素に「開かれた議会」というのがあります。市民への情報提供、情報の共有化は改革の大前提です。
 議会総体が、情報の開示に消極的であるとすれば、勇気ある議員の情報提供に期待するものであります。市民の評価がどうなるかは自ずから明らかであると思います。

 検討のテーマも仄聞するところによれば、非体系的で枝葉末節的なことから始まっているような気がします。議会・議員の本質的な権能は何か、使命は何かを明確にし、議会の機能を十分に果たすことができるような改革をなすべきであると思います。