過日、民主党の代表選が行われた。
その結果にとやかくの論評は避けたい。
しかし、ちょっと気にかかることがある。
大方のマスコミは菅首相が圧勝したと報じる。例えば、「大差で菅首相の勝利」「菅首相圧勝」(毎日新聞)、「民主代表に菅氏再選 党員・サポーター票で小沢氏に大差」(朝日新聞)、「菅首相が小沢氏に圧勝 721対491」(産経新聞)
数字のマジックである。
党員・サポーターの獲得ポイントは確かに小沢氏51ポイント、菅氏249ポイントである。確かに菅氏は小沢氏の4.88倍のポイントを獲得して大差をつけた。
しかし、得票数でいえば、小沢氏90,194票、菅氏137,998票で菅氏は小沢氏の1.53倍の票しか取ってはいない。決して圧勝などではない。この結果は、民主党の代表選の持つ構造的なものである。小選挙区制の死に票と同じ原理である。
ここで私が言いたいのは、民主党の代表選の問題点では決してない。
数字の恐ろしさである。数字は客観的で真実を表していると一般的に信じられている。しかし、そうではない場合もある。
数字のマジックの恐ろしさは、数字そのものは客観的に正確でもその使い方によっては誤解を与える場合も多い。
例えば、刑事事件に関し近年「死に至らしめる事件を起こした少年がここ数年急増している」と報じられると、被害者の数も、事件の発生件数も急増しているという印象を持つ人がいると思うが、事実は違う場合もある。つまり、加害者が集団化すれば、事件数や被害者の数は増えなくとも事件を起こした少年は増える。
要は、全体像やそこに示されていない数字を見ないか、民主党の代表選のように最後の結果だけにしか注目せず、その経過を見過ごしてしまえば、数字のマジックにまんまと引っ掛かり、事実認識を誤ってしまう。
巧妙な詐欺師はこの手をよく使う。客観的な数字を使いマジックを仕掛けてくる。告訴しても事件として成立しない例が詐欺事件に多いのはそのためである。被害者が慾に目がくらみまんまとはめられてしまうのである。
数字にご用心あれ!