かくれキリシタンが弾圧を乗り越え、450年以上守り抜いた歌が、カトリックの総本山に響いた。バチカンのサンピエトロ大聖堂で24日、長崎・平戸で唱え継がれた祈り「歌オラショ」の原曲であるグレゴリオ聖歌が、指揮者の西本智実さんが率いる合唱団によってミサの中で披露された。

 歌オラショは、平戸市生月島(いきつきしま)のかくれキリシタンの一部が唱える祈りだ。人口約6千人の生月島で、今も約400人が先祖からの祈りを守っている。

 キリスト教の聖歌は、日本へ伝わった最初の西洋音楽とされる。原曲の聖歌のうち「オ・グロリオザ」の譜面は、1982年にマドリードの国立図書館で皆川達夫・立教大名誉教授が発見した。16世紀にスペインの一地方だけで歌われ、欧州ではすでに歌われなくなっていたものだ。

 西本さんはこれらの聖歌を、自ら率いる合唱団で披露してよみがえらせ、かくれキリシタンの祈りを続ける人たちと合同のコンサートを催すなどしている。

 今回のミサは、第13回バチカン国際音楽祭の一環だ。曽祖母が生月島出身という西本さんは、活動の意義が認められて音楽祭の主催財団から名誉賞を受けた。「オラショを口伝してきた、無数の人々の魂に捧げたい」と話した。(バチカン=石田博士