奈良 映画『A2-B-C』11月1日(土)自主上映!
上映会場へのアクセス: http://wp.me/s2K3q2-ac
http://dot.asahi.com/wa/2014100200056.htmlより転載
安倍晋三首相は、再増税をするかどうかの決断を12月に下すという。再増税は果たして正しいのか。ジャーナリストの斎藤貴男氏は「消費税は弱い者いじめの税制だ」と主張する。
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そもそも消費税という言葉自体が、誤ったネーミングです。「消費者が払う税金だから消費税と呼ぶ」と思い込んでいる人が多いようですが、間違いです。実際は、原則すべての商品やサービスのあらゆる流通段階にかかります。
問題なのは、立場の弱い下請けは元請けに消費税を請求しにくいこと。また、価格競争が激しい業界では、販売価格に転嫁することができにくい。このため、自腹を切って消費税をかぶる企業が出てきます。
自腹を切った企業は従業員の給料を下げ、さらに弱い立場の孫請けや仕入れ先を泣かせるでしょう。生き残るためにはそうするしかない。消費税は弱い者いじめの税制なのです。
自民党政権は、価格への転嫁を促すため、いわゆる「消費税還元セール防止法」をつくりました。しかし、消費税という言葉を使わずに、「春の生活応援セール」などとすれば、罰せられることはありません。
実は、消費税は滞納が最も多い税金です。国税庁によると、2013年度の新規に発生した滞納額は2814億円と、国税のワーストワン。滞納額全体の半分以上を占めました。
価格転嫁できなかった立場の弱い企業は、自腹を切って、もしくは借金をして納税する羽目になります。納めたくても納められずに廃業してしまう中小零細企業が後を絶たないのです。
一方、輸出の比率の高い大企業は笑いが止まらないでしょう。「輸出戻し税」をご存じですか。輸出企業は、部品などを仕入れた際、消費税を支払った“形”になっています。だけど、外国の顧客からは消費税を預かることができないので、支払った形になっている消費税が還付されるのです。
とはいえ、取引の力関係上、実質的に支払わずに、相手に自腹を切らせていることも多いのです。それなのに還付をもらっている。輸出の多い大企業にとって消費税は「いただく税金」なのですね。政府の予算書の説明によると、13年度に国内の事業者が納めた消費税額は約12兆円(税率5%)。そのうち3兆円が大企業に還付されました。
さらに消費税増税は、非正規労働者を一気に増加させることにもなります。
カラクリはこうです。そもそも、納税義務者は、売上高に消費税率を乗じた金額を丸ごと納めるわけではありません。仕入れや必要経費として支払った形になっている消費税額を差し引いた金額を納めるのです。
特筆すべきは、非正規の人手を調達するため派遣会社などに支払った外注費に消費税として乗せた形になっている金額も控除の対象になることです。会社にとって人件費の圧縮になり節税にも通じるとなれば、まさに一石二鳥で、非正規社員が一気に増えることになるわけです。
※週刊朝日 2014年10月10日号
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014101002000246.htmlより転載
自民党は十日の総務会で、七日の前回会合から継続審査になっていた特定秘密保護法の施行令案と運用基準案を了承した。十日午後に自民、公明両党の政策責任者会議も了承した。これを受け、政府は十四日にも閣議決定する方針。施行令案は同法の施行日を十二月十日と定める内容。
この日の審査は五十分に及び、罰則を大幅に強化することへの疑問や、政府が国民に知られたくない情報を意のままに指定できるといった懸念が相次いで示された。説明者が答弁に詰まる場面もあった。出席者からは「質問に答えられないということは、中身が詰め切れていないということだ」「問題を残しているので、しっかり改善してほしい」などの指摘も出た。
二階俊博総務会長が採決を求めた際、反対する村上誠一郎衆院議員は退席した。村上氏は記者団に「きちんと内容を精査しないで、国会議員と言えるのか」と述べた。
秘密保護法は国民の「知る権利」を侵害するとの懸念が根強い。運用基準案に対するパブリックコメント(意見公募)でも、約二万四千件の半数超が法律の廃止や条文の見直しを求めていた。
しかし、政府は運用基準案を二十七カ所修正しただけで、与党に閣議決定前の審査を要請。自民党は七日の総務会で、同法施行令案とあわせて議題にしたが、異論が噴出したため、了承を見合わせていた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014100902000125.html より転載
日米ガイドラインの見直しに向けた中間報告について、山口大の纐纈厚教授(政治学)に課題などを聞いた。 (聞き手・後藤孝好)
-中間報告では、平時や有事の区分がなくなった。
「自衛隊と米軍による日米軍事共同体制が、質的に強化されていくことの証しだ。これまでの周辺事態という一定の制約を取り払って、自衛隊が米軍と一緒に『地球の反対側』まで派兵される可能性が高まる。米国には、自衛隊をもっと自由に活用したいという思いがある。安倍晋三首相がそれを望んでいなくても、自衛隊が、より使い勝手のいい部隊となり、米国の雇い兵的な存在になってくるのではないか」
-区分がなくなることによる問題点は。
「切れ目がなくなれば、いつでも鉄砲を撃てる体制にしておくということで、歯止めがなくなる恐れがある。かつてコマーシャルで『二十四時間戦えますか』というのがあった。自衛隊にも二十四時間、いつでも戦闘モードに入れるような体制を強いることになる」
-集団的自衛権の行使で自衛隊の役割も変わる。
「自衛隊はこれまで、専守防衛の基本理念にのっとり、米軍の補完戦力と位置付けられ、自衛隊が『盾』、米軍が『矛』の役割だった。今後は自衛隊が主体的に『矛』として、前線に出ていくことも考えられる。米国は軍事力が台頭する中国に対抗するため、米軍ではなく自衛隊を前面に立たせる戦略を描くだろう」
-自衛隊が海外派遣で危険にさらされる懸念に現実味が出る。
「自衛隊が殺される危険より、殺す側に回ってしまう懸念も大きい。同盟関係などに基づいて、敵対関係でなかった国と戦争を強いられることを『自動参戦』という。集団的自衛権の行使は、日本が『自動参戦』の状況に追い込まれ、自分たちが望まない戦争に巻き込まれかねない」
-国会の論議よりも、日米の協議が先行している。
「集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更は、安倍政権が七月に閣議決定し、行政権の肥大化が問題となった。国会が関与しないまま、行使の結論ありきで走りだしてしまっている。ガイドラインも日米両政府が国会に先行して決めてしまうのは、民主主義の全否定に近い。物事を決めるプロセスの中に、国民が入っていくシステムである民主主義のルールを無視した状況だ」
<こうけつ・あつし> 1951年岐阜県生まれ。一橋大大学院博士課程単位取得退学。2010年から山口大副学長。著書に「日本はなぜ戦争をやめられなかったのか」など。