シリアに渡って中東の過激派組織「イスラム国」の戦闘に加わろうとしたとして、警視庁は6日、北海道大の男子学生(26)=住所不定、休学中=を刑法の私戦予備・陰謀の疑いで事情聴取したことを明らかにした。公安部によると、学生は日本人で、「『イスラム国』に戦闘員として加わろうとした」と話しているという。▼10面=ドイツの取り組み、35面=以前も渡航計画

 公安部は同日、関係先数カ所を家宅捜索し、学生の旅券を押収。「イスラム国」に関する求人に関与したとみられる古書店関係者からも事情を聴いた。日本人が「イスラム国」での戦闘に加わろうとする動きが明らかになるのは初めて。古書店関係者らの具体的な関与についても今後調べる。

 公安部によると、「勤務地:シリア」「詳細:店番まで」と書いた求人広告が東京・秋葉原の古書店に出ているとの情報を受けて捜査。古書店関係者の知人だったこの学生が7日にシリアへの渡航を図っていることが分かったという。学生にシリアへの渡航歴はなく、国際的なテロ組織との直接的な関わりも分かっていないという。

 求人に関わったとされる古書店関係者は日本人の男性。朝日新聞の取材に対して、求人広告を掲示したことを認め、「イスラム法学が専門の元大学教授に渡航希望者を数人紹介した」と話している。

 元大学教授も古書店関係者から「『イスラム国』に行きたい大学生がいたら紹介したい」などと相談を受けたことを明らかにしたうえで、「自分から『イスラム国』行きを勧めたりはしない」と話した。元教授はこれまで数回、調査などで「イスラム国」の支配地域に入ったことがあり、現地の様子を発表している。

 私戦予備・陰謀罪は、「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で予備または陰謀をした者」が対象で、3カ月以上5年以下の禁錮に処する、としている。公安部は「適用事例はおそらくないが、国際的な動きに対応して捜査を進めた」と説明している。

 

 ■80カ国の若者ら、中東で戦闘員に

 米政府によると、欧米など約80カ国から1万5千人以上の若者らがシリアイラクを含む中東地域に行き、戦闘員になったとみられている。その多くが「イスラム国」のほか、国際テロ組織アルカイダ系などの過激派組織に合流した可能性があるという。

 こうした若者が帰国後にテロを起こす懸念があるとして、国連安全保障理事会は、9月の首脳級会合で具体的な措置を各国に求める決議を採択。各国が法整備などを検討し始めている。また、「イスラム国」を掃討するため、米国はイラクシリアを空爆。欧州各国などが相次いで空爆への参加を表明している。