異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!

言論宗教の自由が保障され、ひとりひとりの人権が尊ばれ、共に生きることを喜ぶ、愛すべき日本の地であることを願う。

「国民怒りの声」参院選を終えて ご報告 (小林 節)2016.7.15

2016-07-15 21:27:21 | 参院選

http://kokumin-no-koe.com/2016/07/15/%E3%81%94%E5%A0%B1%E5%91%8A/

 

ご報告

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ご報告

ご報告
  
2016年7月15日
小林 節
  
1.「国民怒りの声」を、メディアに無視された戦いの中でも支持して下さった方に心から感謝いたします。
  
2.党名を「国民の声」に変更し、残務整理の機能だけ残し、党を休眠させます。
  
3.小林節は、離党し、弁護士・憲法学者の生活に戻ります。
  
4.「現職がいない政党はメディアが無視する」という慣行を知らず出馬・惨敗し戦いきれなかった不満が残り、「またやる。次回に上手にやる」などと考えたこともありました。しかし、条件が変わらぬ以上、結果も同じですから、むしろ、無駄な再チャレンジはせず、自分に残された時間を大切に生きようと決めました。
  
5.安倍壊憲が迫って来る時に、憲法論議に精通した私は、また自由に発言を続ける所存です。
  
以上

 

 

 


【東京都議選】親族が応援でも除名…自民都連の通告文は憲法を完全無視/自民党の若狭議員が応援に

2016-07-15 13:42:24 | 都知事選 県知事選 市長選

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/185670より転載

親族が応援でも除名…自民都連の通告文は憲法を完全無視

2016年7月14日

「中国や北朝鮮みたい」「恐怖政治だ」――。14日告示された都知事選(31日投開票)で、増田寛也元総務相(64)を擁立した自民党都連が、党決定以外の候補を応援した場合に「除名」をほのめかす文書を党員に配っていた問題。さすが「自由」も「民主主義」も理解していない安倍独裁政権である。

 文書は11日付。都連会長の石原伸晃経済再生担当相、幹事長の内田茂都議らの連名で、「都知事選挙における党紀の保持について」と題し、〈党公認、推薦候補者以外の者を応援してはならない〉とある。まあ、ここまでは仕方ないとしても、問題は次のくだりだ。

〈各級議員(親族等含む)が非推薦の候補を応援した場合は(略)除名等の処分の対象となります〉

 これは仰天だ。この書面通りなら、親族に1人でも自民党員がいれば、一族郎党すべてが党紀に拘束されるということだ。憲法19条は「思想・良心の自由」を保障しているが、完全無視である。仮に小池百合子元防衛相(63)の応援に石原慎太郎元都知事が駆け付けたら、都連会長の伸晃だって処分されるし、小泉純一郎元首相が例の調子で「頑張れ」なんてエールを送ったら息子の進次郎はすぐに除名処分だ。

 都連に確認すると、「(理屈上は)そうなります。ただ、党は今回だけでなく、以前から(こうした)文書を配布しています。それ以上の詳しいことは分かりません」と答えた。

 前回の都知事選は、自民党が支援した舛添要一前知事の対立候補で出馬した細川護熙元首相を小泉は支援していたが、進次郎は除名処分になっていない。今回の都知事選だけ自民党が躍起になって締め上げているのは明らかだ。政治評論家の山口朝雄氏がこう言う。

「政治の現場を長く取材してきましたが、自民党が今回のような通知を出したのは聞いたことがありません。国会の議決で党議拘束をかけるというならともかく、今回は首長選です。かなり異常な対応です。これは選挙後も火種になるでしょう」

 都知事選が自民党「分裂」のきっかけになるかもしれない。

 

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http://www.sankei.com/politics/news/160714/plt1607140039-n1.htmlより転載

2016.7.14 19:27

【東京都知事選】
小池陣営に若狭勝衆院議員登場 「党が除名するというならしようがない」

 

 

東京都知事選が告示された14日、東京・池袋駅西口で行われた小池百合子元防衛相の第一声に、自民党の若狭勝衆院議員(比例東京ブロック)が駆けつけ「小池氏が都知事になれば、都政の利権追及を行う。東京地検特捜部の副部長をやっていた私も、チームができたら間違いなく関与する」と述べ、支持を訴えた。

 自民党は増田寛也元総務相を推薦し、都連は党が推薦していない候補者を応援した場合、親族も含めて「除名などの処分対象となる」との文書を所属国会議員や地方議員に配布。この日の小池氏の演説にも、若狭氏や一部区議を除き、自民党都連所属の議員の姿はみられなかった。

 若狭氏は応援演説後、記者団に「党が除名するというならしようがない。親族を含むというが、例えば、小泉純一郎元首相が応援に来たら、小泉進次郎さんが対象になる。ブーメランにならないか」と指摘。小池氏は「私を応援すると、一族郎党を罰するということだが、それを乗り越えてきてくれた(若狭氏の)覚悟と信念に心から感謝する」と語った。

 

 

 


室井佑月「有権者は、始まる前から馬鹿にされ負けていた」? 〔dot. 2016.7.15〕

2016-07-15 11:01:42 | 参院選

http://dot.asahi.com/wa/2016071300115.htmlより転載

室井佑月「有権者は、始まる前から馬鹿にされ負けていた」?

(更新 2016/7/15 07:00)
はじまる前から、我々有権者は馬鹿にされ負けていた(※イメージ)
はじまる前から、我々有権者は馬鹿にされ負けていた(※イメージ)
 
 
作家・室井佑月氏は、週刊朝日で連載中のコラム『しがみつく女』で、国民はいつも馬鹿にされ負け続けていると憤る。 このコラムがみなさんの目に触れる頃には、参議院選は終わっている。

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 わかっていることはひとつ。たぶんほとんどの人間が負けた。それは選挙の報道をみればわかる。

 ぜんぜん盛り上がらなかった参議院選。

 きっと、はじまる前から、我々有権者は馬鹿にされ負けていた。

 参議院選の報道が極端に少なかったのは、

「どうせあんたら、考えたって仕方ないでしょ」

 そういわれているのとおなじこと。

 参議院選の最中は、イギリスのEU離脱と都知事選・小池の乱と、目黒切断遺体事件の話題で盛り上がっていた。

 国民投票でイギリスがまさかのEU離脱となったことに対して、

「だから、国民投票なんて駄目なんだ」

 といっていたコメンテーターがいたっけか。

 参議院選を報道しないこともおなじ理由か。

 国民に考えさせても無駄。馬鹿なんだから。この国のエリートが未来の筋道を立てておる。馬鹿はうるさいこといわず黙ってついてくればいい、って感じであろう。

 エリートも間違うことはあるのにな。歴史を遡れば、いろんな場面で間違っている。

 そして、間違ってしまっても、彼らは責任を取らない。金も力もあるから、結果が出る少し前に逃げきることも可能。尻拭いは、逃げられなかったその他大勢が引き受けることになる。

 この件についてもおなじか。「原発汚染土『8000ベクレル以下』なら再利用を決定」(6月30日付毎日新聞電子版)

<東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の汚染土などの除染廃棄物について、環境省は30日、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下であれば、公共事業の盛り土などに限定して再利用する基本方針を正式決定した>

 ちなみに、5000ベクレルの廃棄物が100ベクレル以下まで低下するには170年かかるらしい。だが、盛り土の耐用年数は70年だ。

 じつはこの数字、環境省が非公式会合で出していたというから驚く。なのに、なにがしたいんだ?

 この国は地震の活動期に入っている。汚染土の上にアスファルトなどを50~100センチ以上かぶせるから大丈夫だといっているけど、地震によって決壊したら、どうやって汚染土を回収するのだ。付近の川や海も汚れるだろう。それらを除染するには、盛り土どころじゃない、莫大な金がかかると思われる。

 ま、こういうことを決める人々は、そこまで考えちゃいないわな。俺らはその付近に住まないし、情報は真っ先につかめるから危ない目にも遭わないし、ってなもんか。

 まさか、あたしたちの命や健康と引き換えに、利権や汚い金が動いていたりしていないよね? ここまで疑わなきゃいけないって、ほんとに疲れる。

週刊朝日  2016年7月22日号

 

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人権否定の自民改憲草案 泰斗の言葉(下)樋口陽一 〔カナロコ 2016.7.9〕

2016-07-15 08:17:25 | 憲法

神奈川新聞社http://linkis.com/this.kiji.is/FDpaSより転載

人権否定の自民改憲草案 泰斗の言葉(下)

2016/7/10 05:00

画像樋口陽一  東大・東北大名誉教授

 
 憲法学者の樋口陽一さん(81)=東大名誉教授=は、改憲勢力が目指しているものを知るために自民党の憲法改正草案を読んでほしいと呼び掛ける。国民には知る権利があるが、知る義務もあり、有権者の投票判断はまず知ることから始まる、と。

 自民党が2012年に発表した憲法改正草案は、明治憲法への逆戻りだと批判する人がいますが、そうではありません。明治憲法は日本の近代化のために立憲政治を導入することが必要だという立場に立って作られました。改正草案はそれよりはるかにひどいものです。

 私が信頼する法史家は、江戸時代に高札を立てて「民よ、こういうことをしてはいけない」と示すようなものだと言っています。

 国民の側が権力を縛るのではなく、権力の側が国民のすべきではないことを示すようなものです。

 明治以前の法秩序に戻るようなもので、改憲草案は近代法からの逸脱であり、前近代への回帰、近代国家の否定になります。「普通の国」の原則を捨て去っています。この国の主はわれわれ国民なのですが、主という資格が奪われようとしています。「国防軍」にしても、「普通」の民主主義国の原則から離れるような憲法の中に位置付けられることこそが、何よりも問題なのです。

■知ることから 

 それだけではありません。競争至上主義を徹底して、「世界で一番企業が活動しやすい国」にするという安倍政権の目標と似た考えが改憲草案に盛り込まれています。

 経済活動の自由を定めた日本国憲法22条1項には、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と書かれています。ですが、改憲草案には憲法の条文にあった「公共の福祉に反しない限り」という言葉が消えています。経済活動の自由だけは、制限を加える言葉がないのです。

 それとは対照的に、表現の自由には、これまでなかった制限の根拠として「公益及び公の秩序」という語句が加えられており、それと比べて22条1項の突出ぶりは特別です。

 経済成長第一主義ともいえる新自由主義の考え方が背景にあるのでしょう。確かに、世界は新自由主義の方向に向かって動いてきました。ですが、その結果生じてくる社会の亀裂、伝統の破壊などに抵抗する動きが世界中で現れています。日本だけは憲法改正をしてまで、憲法の中にその思想を書き込もうとしています。

 改憲草案の前文には、新自由主義の競争・成長至上主義とは両立しないはずの郷土、家族など、古き良き日本を表す言葉が散りばめられています。経済活動によって分断される社会のゆがみを観念の世界で癒やそうとしています。

 安倍政権が目指す憲法改正は、みんなの理想を持ち寄り、新しい憲法を最初から議論しましょう、というものではありません。ぜひ改憲草案に目を通してください。憲法改正の議論の出発点としては、あいまいな議論ではなく、自民党改憲草案から出発するべきでしょう。現政権が目指す憲法改正について国民一人一人が賛成なのか、反対なのか、議論する座標をはっきりさせることが必要です。賛成、反対を言う前に、どのような論点で何が議論されているのか、多くの人に理解してほしいと思います。

 国民には知る権利がありますが、知る義務もあるのではないでしょうか。有権者の投票判断は、まず「知ること」から始まります。少しばかりの知る義務を果たすことをお互いに心掛けましょう。■個人が前提に 多くの人が日本国憲法を守るために努力してきたことを忘れてはなりません。ちょうど60年前の参議院議員選挙で、有権者が野党に議席の3分の1を与え、「占領が終わったから憲法改正だ」という流れに「待った」を言い渡しました。

 岸信介首相があらためて改憲のための世論づくりを目指し、1957年に内閣憲法調査会を発足させたとき、私の恩師の憲法学者を含めて多くの方々が憲法問題研究会を立ち上げ、世論の流れに大きな影響を与えました。

 その後、60年安保があり、池田勇人政権の登場によって、自民党が政治主義路線から経済路線に変わり、憲法を前提にした政権運営がおこなわれるようになりました。その間に選挙があり、有権者の投票が駄目を押しました。以来、歴代の自民党政権は憲法改正に慎重な立場をとってきました。

 中曽根康弘内閣に対し、米国から海外での機雷除去の協力要請があったとき、官房長官だった後藤田正晴さんが「憲法が認めていない。どんな巨大な堤防でもアリの一穴から崩れる」と進言したことは知られています。そのような御意見番がどこにもいなくなれば、国の行方が危なくなるのです。

 昨年の夏、集団的自衛権の行使容認に対する反対運動が全国に広がりました。それは長い目でみれば、日本の社会に大きな変化を促すものになると思います。日本国憲法がデザインした、個人が前提にある上での連帯が生まれています。

 かつて、大学紛争のなかでは、「連帯を求めて孤立を恐れず」と語られました。その信条は理解しますが、そうであってはいけないはずです。個に徹しつつ、あえて連帯を求める、ということであれば、大学紛争の運動が壊滅はしなかっただろうと思います。

 今起こりつつある若い人たちの政治や政治以前の社会への関心というのは個を前提にしています。深く、厚みのあるものになっていく可能性があります。大人にできることは少なくともそれを邪魔しないこと。支えていくべきではないでしょうか。

 いま、憲法について国民の理解は深まっています。しかも、日本国憲法の価値を理解する若い世代がいます。主権者はわれわれ国民です。それが奪われようとしています。近代国家を否定するような主張に対して、「なめんなよ」の精神を持つことが必要です。それが、「個人の尊厳」ということの意味であり、危うげになった日本社会を救うことになるのではないでしょうか。

 

◇ 自民党の改憲草案は、党憲法改正推進本部のホームページ(http://constitution.jimin.jp)からダウンロードできる。■「3分の2与えてはならない」 8日夜、都内の貸しホールでマイクの前に立つ樋口陽一さんの姿があった。同じ憲法学者の小林節さんが旗揚げした政治団体「国民怒りの声」が開いた集会。参院選の候補者と支援者を前に「憲法問題こそが争点だ。改憲を目指す人たちに3分の2の議席を与えてはならない」と熱く語った=写真。

 人生初という選挙の応援演説。「いまの日本の政治は異常で異様。生まれて初めての熱意が政治の暴走に少しでもインパクトを与えることになれば」と登壇した。

 理知に満ちたいつもの語り口から一変、時折拳を握り締めるしぐさににじんだのは憲法学者の矜持(きょうじ)だった。「首相自身が自国の憲法を『みっともない』と表現している。憲法が侮られている。怒らなければならない。甘んじて受けてはいけない」。押しつけられた憲法だと改憲を唱道する宰相を戴(いただ)き、しかし、その危機が共有されているとは思えない危機的状況。警鐘を鳴らすのが自らの義務との思いも背中を押した。

 世論調査で改憲の国会発議に必要な3分の2議席を改憲勢力が占める情勢も伝わる中、「日本の政治は今さえ何とかなればいいと、無責任なその場主義に流れている。そもそも、そうした議論が自由にできる世の中の仕組みそのものが憲法。その仕組みを壊してはいけない」と呼び掛けた。

 

 

 

 


人権否定の自民改憲草案 泰斗の言葉(上)樋口陽一 〔カナロコ 2016.7.9〕

2016-07-15 08:17:02 | 憲法

神奈川新聞社http://linkis.com/this.kiji.is/FDpaSより転載

人権否定の自民改憲草案 泰斗の言葉(上)

2016/7/9 10:40

画像樋口陽一  東大・東北大名誉教授

 
 参院選は自民党をはじめ憲法改正に賛同する公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党、無所属議員の改憲勢力が、改憲の国会発議に必要な3分の2を占めるかが焦点となる。10日の投開票日を前にいま一度、声に耳を傾けたい人がいる。憲法学の泰斗、東大名誉教授の樋口陽一さん(81)。
 自民党の憲法改正草案に立憲主義や人権尊重の否定の思想をみて、憲法記念日の5月3日に特別紙面のインタビューでは「主権者はわれわれ国民。近代国家を否定するような相手に対しては『なめんなよ』の精神を持つことが必要」と説いた。未掲載部分とともにインタビューを再構成した。

 憲法改正の議論をするには、まず議論の前提を考える必要があります。安倍晋三首相や自民党はどのような憲法改正をしたいのか、理解しなければなりません。そして憲法改正によって日本の形がどのように変えられてしまうのかを明らかにするのが憲法学者としての私に課せられた義務です。

 かねて安倍首相は日本国憲法を「みっともない憲法」と呼んで、憲法とその背後にある、戦後日本そのものを大きく変えようとしています。

 2012年12月に2度目の安倍内閣が成立して以降、憲法をめぐる状況に変化が起こってきました。首相は就任するとまず、憲法改正の手続きを定めた憲法96条を変え、改憲のハードルを下げようとしました。

 96条には、衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成で憲法改正を発議し、国民投票で過半数の賛成を得ることが必要であると定められています。このハードルを易しくしてほしい、ということをまず問題として提起しました。

 この問題提起には大きな反発が起きました。自民党は野党時代の12年3月に憲法改正草案を公にしていました。天下に憲法改正の構想を公表した上で、その手続きのハードルを易しくしようというのは、ゲームが始まってからルールを変えてくれと言うようなことです。反対の声を受けて、96条の改正は棚上げになりました。

 それから首相は方針転換をします。9条の解釈を変え、憲法改正でやりたかったことを閣議決定や安保法制の制定によって行おうとしました。集団的自衛権の行使容認です。

 閣議決定は14年7月1日に行われ、15年の5月15日には、関連する安保法案が提出されました。法案提出前の4月、安倍首相は米国議会で演説し、「夏までに成立させる」と発言しています。主権者である国民の前で議論する前に法の成立を約束してきています。この手続き問題一つをとっても、立憲主義と民主主義へのあからさまな攻撃でした。

 憲法違反という批判にまっとうに答えることのないまま、安保法制がこの年の9月に強行採決され、日本は異常な法状態に突入しました。憲法によって縛られるはずの権力者が憲法に反する立法を行い、憲法をいいように解釈し、無視する政治を続けています。国民主権に対する重大な抵触で、国民が憲法によって権力を縛る立憲主義を踏みにじっています。■普遍的な価値 首相が目指す憲法改正はどのようなものでしょうか。自民党が公表している憲法改正草案と、その内容を説明した「憲法改正草案Q&A」を見ると全体像が見えてきます。

 近代憲法には、国民が憲法によって権力を縛る立憲主義という考え方が基本にあります。ですが、自民党草案が目指しているのは権力が国民に注文を付ける憲法への転換です。立憲主義が破壊され、国の根幹が壊されようとしています。

 改正草案Q&Aには、改正草案全体のポイントとして「天賦人権説に基づく規定振りを全面的に見直」すと書かれています。天賦人権説というのは、全ての人、一人一人が生まれながらにして権利を持っているという考えです。さらにこうも書かれています。

 「現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました」 生まれながらの権利を保障するのは、やめたと言っていることが分かります。

 西欧の考えは日本に合わないと考えているのでしょう。ですが、日本では古くから、お天道様、天があり、勝手なことをしてはいけないという考えがありました。日本にも天賦人権説の思想的な実態がありました。

 だからこそ、福澤諭吉が米国の独立宣言の一節を「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と、当時の日本人の心に深く刻まれる言葉で言い表すことができたのです。天賦人権説は西欧だけの価値ではありません。普遍的な価値なのです。■個人を捨てる 日本国憲法の前文のキーワードは「人類普遍の原理」です。自民党の改憲草案では、その全文が入れ替えられています。

 13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と書かれています。自民党の改憲草案では「すべて国民は、人として尊重される」と変わっています。個人としての尊重から、人としての尊重というわずか1語の変化ですが、非常に大きな問題をはらんでいます。

 日本国憲法では、共同体の拘束から解放された自由な「個人」が主体です。それを、家族をはじめとした共同体のなかに置かれた「人」という表現に変えることで個人を捨てると、読み解くことができます。近代立憲主義が達成しようとしてきたのが人権の尊重です。個人を社会の価値の源泉とする考えを否定しています。

 自民党が目指す憲法はすでに示されています。白紙から憲法を考えているのではありません。人類社会が普遍的なものを求める歴史のなかで、積み重ねてきた知の遺産を否定している自民党の改憲草案が議論の土台なのです。

 

 ◆自民党憲法改正草案 
 自民党が野党だった2012年4月に策定。現行憲法の前文を含む全条文を改正する内容となっている。同党が作成した「憲法改正草案Q&A」によると、主要な改正点は「国旗・国歌の規定」「自衛権の明記」「国防軍の保持」「家族の尊重」「環境保全の責務」「財政の健全性確保」「緊急事態の宣言の新設」「憲法改正提案要件の緩和」などで「時代の要請、新たな課題に対応した」としている。基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」と明記した97条を全文削除している。9条は戦力の不保持を規定した2項を削除し「自衛権の発動を妨げるものではない」と明文化しており、政府与党が「限定容認」と説明している集団的自衛権の行使が全面解禁されることになる。第9章に新設した「緊急事態」では「武力攻撃」「内乱」「自然災害」などの緊急事態時に「内閣が法律と同一の効力を有する政令を制定できる」としており、ナチスの全権委任法にもなぞらえられる。自民党憲法改正推進本部のホームページ(http://constitution.jimin.jp)からダウンロードできる。

 ◆ひぐち・よういち 東大・東北大名誉教授。立憲デモクラシーの会共同代表。近著に「加藤周一と丸山眞男−日本近代の〈知〉と〈個人〉」(平凡社)、「いま、『憲法改正』をどう考えるか」(岩波書店)。憲法学者の小林節氏との共著で「『憲法改正』の真実」(集英社新書)など。