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こんなにたくさんの方に集まっていただいて、名称も「鳥越俊太郎を応援する市民センター」発足集会ということで、私は生まれて初めてこういう晴れがましい場面に立って、少し、私を昔から知っていらっしゃる沢地久枝さんからすると、どうですか。
沢地さんとは、毎日新聞の東京社会部に大阪から来て、最初に出会った著名な人です。沢地さんと一緒に取材に行ったことも昨日のように覚えていますが、もう何十年もたっているわけです。
ですから沢地さんは、僕がひよこのような存在だったころを知っていらっしゃるので、なんであの鳥越なんかが東京都知事に立候補したのだろう、と思っていらっしゃるでしょうけれど、昨年の7月に国会前で、「アベ政治を許さない」という、昨年の安保法制、集団的自衛権容認の事態が国レベルでどんどん進んで行くのを見ていて、どうにもいてもたってもいられなくて、何か発言しなければいけないということで、沢地さんと僕は電話で話をして、とにかく何かその、組織に一切頼らない、政党にも何も頼らない、市民の声を上げましょうということで、最終的には沢地さんの判断で「アベ政治を許さない」という書を、俳人の金子兜太さんに書いていただきました。
それで全国にもあっという間に動きが広がって、国会前でも集会をやりました。あれからちょうど1年だなあと思っております。1年経って自分がこういう場に立っていることに、自分としても何か因縁があったのだなあと思っております。
今回は東京都政の問題ですから、都政の話をしないと、都の政治ですね。都政の話をしないと、またお前は国政の話ばかりしていると言われるのですが、東京都政も国政も同じなんですよ、基本的には。こっちからこっちが都政、こっちからこっちは国政なんて分けられるものじゃないんですよ。都政の問題は同時に国の問題であるし、国の問題は同時に東京都知事の問題でもあるんです。
よく、「鳥越さんは国政の話ばかりする」と聞かれることがあるんですけど、そうじゃないんです。都政も国政も全部つながっていると思って、私は国政の話もしながら、都政の話もしようとしているんです。
去年1年(前に)ちょうど、集団的自衛権、安保法政があっという間に強行採決された。そのことに黙っておれなくて、1年経って私は知事に立ってしまったということです。立っても立つところが違うんじゃないかと思います。
私ははっきり言って、この選挙は勝てると思っています。自民党、公明党の与党勢力はふたつに割れました。宇都宮(健児)さんが苦渋の決断をしていただいて、野党統一候補としてご推薦をいただいたことで、野党勢力の一本化が結果的になりました。
私は皆さんのご声援を背中にいっぱいいただいて、力いっぱい最後まで戦う覚悟でいます。そしてそれは、先ほどから申し上げていますが、やはり参院選では残念ながら3分の2を自民党などの与党勢力にとられてしまいましたけれども、その直後に行われた都知事選では、ちゃんと旗を取り返したぞということを都民の皆さんはもちろん、同時に日本国全体に「やっぱりそうじゃないんだよ。そうじゃない道もあるんだ。東京都は新たな知事を選んだ」ということを全国の皆さんにもお伝えしたいと思っています。
私はご存じの通り、毎日新聞の記者をしてテレビに移りました。今年で51年間、ほとんど報道の現場を歩いてきています。報道の現場というのは何をやっているかというと、1日中24時間、48時間ずっと人の声に耳を傾けている。いろいろな人にインタビューをして、何を言っているんだろう、この人は何を言っているんだろうということを一生懸命聞きながら、隠れている事実は何なのか、真実は何かということを見極めながら私は仕事をしてきましたから、もう身体に人の声に耳を傾けるということが染みついている。
これは石原慎太郎さんにはなかったことだし、残念ながら猪瀬(直樹)さんにも舛添(要一)さんにもなかった。まあ、いろいろおいしい話をされたと思いますけども、皆さんの本当に、東京都民に何が足りないのか、何を必要としているのか本当に耳を傾けてこなかった。
それよりも、都民が汗水流して働いて、納めた税金を何の一顧だにせず、ファーストクラスに乗ったりスイートルームに泊まってみたり、納税者意識のかけらもない、そういうことが舛添さんの結末だったんじゃないですかね。
私は皆さんの働いた結晶である税金を、私はもし知事にさせていただきましたら、そのことをしっかり腹の中に入れて、この税金をどう使うのか、予算の配分ももちろんそうです。もちろん議会との折衝も必要ですけれども、公共工事をがんがん進めて、待機児童は解決しない、介護の問題もなかなか解決しない、これでは困るんです。やっぱり人が生きているわけですから、命、健康、こういうものにちゃんとお金を使わないでどうするんだ。
道路、橋、トンネルは必要ですよ。必要だけど、もっと大事なものがあるじゃないですか。それが皆さんの命ですよ。生活ですよ。働きですよ。家族ですよ。こういうものを大切にする都政をもう一度、皆さんのご支援で取り戻して、そして新たな都政の夜明けを迎えたいと思っております。
私は一応いろいろ考えた末に、3つのキャッチコピーを考えました。住んでよし、働いてよし、環境によし。この3つのよしを踏まえて都政を考えていきたい。そういうつもりであることを、キャッチコピーで皆さんにお知らせしました。ありがとうございます。
これは実はすごく大事で、東京都には多くの人がさまざまな形で住んでいる。暮らしをしている。この暮らしの部分をしっかりと、そして困ったときには行政の目が届くようにしたいと、そういうことをちゃんと考えたいと思います。
そして、働いてよし。残念ながら日本は格差がどんどん開いています。非正規労働が増えて、非正規労働の人は結婚したくてもできないという現実があるんですね。そういう人たちは結婚ができないから、東京都の出生率は1・1という最低レベルになっている。
そういう背景があるんだということを今回都知事選にでて学んでみました。イチから学んでみて、ああそういうことがあるのかと、これだけ多くの人が東京にいるんだけれども、出生率は低い。なぜ低いのか。
それは結婚したくてもできない、しても生活をするだけの保証がないという現実があることがわかりました。とりあえずは、働けばきちんと生活できる。暮らしていける。
環境ということも大事ですよね。もちろんさまざまな環境の問題がありますけど、やっぱり一番の問題は、皆さん何だと思います。原発ですよ。原発はやはり、福島でわかったように、人間の手に負えるものではありません。これは広島、長崎以来、私たちが知っていることです。
広島でも長崎でも、多くの命が一瞬で失われた。それと同じことですよ。核分裂という同じ原理に従って、それを日本中に54基もつくってどうするんですか。日本中は核兵器に囲まれているようなものですよ。できるだけゼロに近い形に、一足飛びにゼロというわけにはいきませんけれども、限りなくゼロに近い形にしていきたいと思っています。
あとひとつだけ言わせてください。やはり東京は、平和と憲法を守る拠点である。そういう都市であると思います。ですから、まず非核都市宣言をしたい。東京は平和都市宣言はやっています。非核都市宣言はやっていません。やはり東京は先駆けて非核都市宣言をやって、世界中にそのメッセージを届ける。それが東京の、私たちの望む街の姿だと思うんですね。
それを都民の皆さんが「東京に生まれてよかった」という誇りを持てる街にしたいんですね。同時に、世界中で東京というのはそんなに素晴らしい街なのかと、世界の人たちが思ってくれる都市にしたい。それが私の願いです。
そういう私の願いを、実は私ひとりが頑張っていても仕方ありません。やはり皆さん方が、発言して私に聞かせてくれる、私のそばにいつも立っていてくれて、私とともに歩んでいただき、私とともに進んでいただく。こうして初めて東京都政がみんなの手に取り戻すことができるんです。ぜひ一緒に新しい都政を作りましょう。ありがとうございました。