爺さんが伝えたいこと

寡黙に生きて来た爺さんが、一つの言葉ででも若い人達の役に立つならば、幸いです。

高御産巣日神

2021-07-02 04:36:54 | 日記
たかみむすひのかみ。

天孫降臨を指令した神聖な生成力の神。

『古事記』に登場する神で、別名高木神(たかぎのかみ)、『日本書紀』では高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)。

『古事記』や『日本書紀』神代上・第一段、第四の一書(異伝)にある天地創成(開闢)神話によれば、天地の初めに
高天原に出現した造化三神のうち、天之御中主神を(あめのみなかぬしのかみ)継ぎ、神産巣日神(かむむすひのかみ)に先立って出現した第二の神である。

『古事記』では、別天神(ことあまつかみ)五柱の一神で、独神[ひとりがみ(配偶神のいない神)]でもある。

神名は「ムス=産巣・産」(生ずる・生成する)と「ヒ=日・霊」(神霊)との合成語に美称(尊称)である「高御」という語がついたもので、偉大で神聖な生成の霊力の神という意味である(漢語表記の「日」を強調して、天照大御神以前から信仰された根源的な太陽神とする説とある)。

また、高木神という別称の通り、草木植物の生成、さらには農耕の成就をつかさどる神である。

生成という抽象性・一般性の高い働きと関係する神格ではあるが、天照大御神と並ぶ高天原の中心神として具体的にその活動を描写されている点で、他の別天神と比べて強い存在感を示している。

『古事記』や『日本書紀』では、天照大御神とともに天孫降臨を指令する一方、単独で降臨を指揮し、天孫・ニニギ尊を真床追衾[まどこおうふすま(神聖な床を覆う衾)]に包み、天降りさせたという記述も見られる。

また神武天皇の東征の際には記紀ともに現れるなど、もっぱら天孫系神話で活躍する。

これは国津神の活動を多く記す出雲系神話に頻出する、もう一柱の生成神である神産巣日神(かみむすひのかみ)と著しい対照をなす。

つまり、天地のうち天と強く関わる天津神系の生成神という事である。

律令時代には、神祇官八神殿における祭神の一柱として重視され、天皇の寿命を守る神ともされた為、御魂鎮め(衰弱した魂の回復)の祭儀である鎮魂祭に祀られている。

また、大嘗祭や祈年祭などの宮廷農耕祭儀でも祀られる点から、農耕の神としての性格もうかがえる。




河口湖の島に古代人の聖地

2021-07-02 03:25:10 | 日記
富士五湖の一つである河口湖には、五湖唯一の無人島「鵜の島」がある。

周囲1kmにも満たないこの小島は湖の真ん中付近に浮かんでおり、船以外で往き来出来ない。

別名「弁天島」とも呼ばれているが、これは島に根付く不思議な伝承に由来している。

その昔、島に住んでいた美しい娘が、ある男に見初められ身ごもった。

娘は産屋には近づかない様に頼むが、男がこっそり中を覗くと、そこに居たのは大ナマズだった。

怒り狂った娘は島に引きこもり、人前に姿を見せなくなった。

そして、のちにこの娘は弁天様として祀られたという。

しかし、地元ではこうした伝承よりも、じつは古代遺跡がある島として有名なのだ。

出土したのは、縄文から弥生時代にかけての石器や土器で、学術的にも貴重なものだという。

とはいえ、古代人がこの孤島で生活していたのかと言えばそうではない。

彼らは、現在の湖の北部にある大石地域に多く住んでおり、そのうち何らかの原因で生活区域が水に没したらしい。

やがて富士山が噴火して溶岩が川を堰き止め、現在の河口湖の鵜の島が出現した様だ。

つまり、鵜の島から出土したのは、今の形の河口湖が作られる前に暮らしていた、古代人の痕跡なのだ。

今では年に一度の例大祭の時だけ、神主や巫女、見学者が船で渡り、弁財天を祀る鵜の島神社で神事が執り行われる。

そして翌日には、またひっそりとした孤島に戻るのである。





天之御中主神

2021-07-02 02:19:30 | 日記
あめのみなかぬしのかみ。

宇宙の神聖なる中央にます最高神。

『古事記』冒頭の天地創成[開闢(かいびゃく)]神話の最初に登場する。

高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神産巣日神(かむむすひのかみ)とともに造化三神と呼ばれ、天地の初めに成った三柱の神の筆頭である。

またこれら三神に、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこじのかみ)、天常立神(あめのとこたちのかみ)を加えた別天神(ことあまつかみ)五柱の一神であり、高天原(たかまのはら)に配偶神を持たない独神(ひとりがみ)として成り、身を隠した。

「天」は大地を覆う宇宙(天空)、「御中」は尊意を込めた真ん中、「主」は主人、主君との意味である。

つまりこの神名は、宇宙の神聖なる中央にます宇宙最高神、至上神を意味する。

この神を祭神とする古社のない事から、道教など中国思想の影響を受けつつ、地上における天皇を宇宙的な次元に投影して造形された比較的新しい時代の観念的な神と言われる。

この神は天地世界の始源、宇宙の中心に位置し『古事記』の冒頭に置かれ、天皇・王権の正当性を強く根拠づける役割を果たしている。

しかし字義上では最高神を意味しても、具体的事跡の記述が無いために、この神を『古事記』での宇宙主宰神とするには無理がある。

一方『日本書紀』では本文にこの神は見られず、一書(あるふみ)でも国常立尊(くにのとこたちのみこと)の後に出現するなど、この神を『古事記』ほど重要視していない。

中世の伊勢神道では伊勢外宮の祭神・豊受大御神に比定され、水徳の神・元始神として根源神的に観念された。

これは多神教である神道の中の一神教的な傾向の始まりである。

この神が一般の信仰対象となったのは、近世に入って北斗・北極星信仰と集合し、さらに仏教の妙見菩薩との同一視がなされて以降である。

また、平田篤胤(ひらたあつたね)が北斗七星の神、宇宙の主宰神とする教学をたて、さらに明治初期、大教院の祭神として祀られた結果、より広く知られる様になった。

北辰社・妙見社は明治以降、この神を祭神としている。