一年を通してサーファーで賑わう江の島海岸の向こうにぽっかりと浮かぶ江の島は、観光スポットとして賑わうだけでなく、その昔は修行の島だった。
島の一番奥に岩屋洞窟があるが、太平洋から打ち付ける波によって、長い時間を掛けて浸食された二つの洞窟は、どちらも奥行きが100m以上あり、かなり深い。
ここでは平安時代に空海や日蓮をはじめ、多くの僧侶が修行した事で知られる。
しかし、それより更に遡った奈良時代に、この岩屋洞窟で初めて修行した人物がいたという。
それは役小角(えんのおづぬ)だ。
役小角は飛鳥時代から奈良時代にかけて生きた呪術者で、山に籠って厳しい修行を行う修験道の祖と言われており、江の島の岩屋洞窟には700(文武天皇4)年ごろに籠っていたという。
日本古来の宗教である修験道は全国各地の霊山を修行の場としていて、深い山で命がけの修行を行う事で、超自然的な能力を得て、人々を救済する事を目的としていた。
深山幽谷に分け入った修験者は、洞窟に修行の場を求める事が多かった。
その為か、江の島の岩屋洞窟は周辺にある霊山の洞窟や、富士山の風穴に繋がっていたなどと言う言い伝えも残っている。
岩屋洞窟の内部は、今では証明や音響で演出されるなど、随分と整備されているので、当時はかもし出していたであろう霊気を感じる事はできない。
太陽の光が届かないこの薄暗い洞窟の中で、僧侶たちが一体何を悟ったのかは、現代人が知る事は出来ないのかも知れない。