愛知県あま市の萱津(かやづ)神社には、悲しくもロマンチックな伝説が残っている。
日本武尊(やまとたけるのみこと)が戦いの帰り道、傷ついた体で萱津神社にたどり着いた。
そして、愛しい妻に会えないまま、伊勢へと旅立つことになった。
彼は誰もこんな悲しい思いをしないようにと、2本の榊(さかき)を手折って植えた。
その榊がいつの間にか枝が繋がった連理の木になったのだという。
こうした伝説から、萱津神社は縁結び、恋愛成就の神様として知られるようになった。
連理の榊に恋愛成就を願うと、効果は抜群だという。
なかなか后が見つからなかった陽成(ようぜい)天皇も、この葉を献上されたところ、結婚でき世継も授かったそうだ。
しかし、ここのご利益は縁結びだけではない。
日本人にはなじみ深いものの、ほかの神社ではけっして見られないものを祀っているのだ。
それは漬物(つけもの)の神様である。
昔、野菜や塩を供えても、野菜はすぐに腐ってしまった。
そこで、瓶に入れてみたら、供え物は腐らずに不思議な食べ物に変化したのだという。
これが日本における漬物の始まりだといわれ、それ以来、漬物の神様を祀るようになったのだ。
漬物を食べた日本武尊も「藪に神の物」と言って感動したと伝えられる。
これは森の中に神が与えた食べ物があるといった意味で、そこから香の物という言葉が生まれたとも言われている。
萱津神社では毎年、漬物を漬け込むというちょっと変わった神事である香の物祭が行われる。
この時には全国の漬物業者が集まるそうだ。
ちなみに、神社にある漬物樽を型どった石も3回撫でると、漬物上手になると言われている。