京都の中心街から北へ上がっていくと、京の奥座敷と呼ばれる静かな場所がある。
鞍馬山は、そこを流れる二つの川に挟まれてそびえる標高584mの山だ。
今でも山岳信仰の地として崇められている鞍馬山には、その霊力に導かれて昔から多くの修行者が訪れている。
山の精霊である天狗もこの山に棲み、のちに源義経と名乗る牛若丸も、この霊気漂う山の中で精神を磨いたのだ。
鞍馬山のご本尊は千手観世音菩薩と毘沙門天、護法魔王尊で、これら三身を一体として「尊天」と呼んでいる。
この中でも最もパワーが強いとされる護法魔王尊は人類を救う為に、650万年に遥か金星から鞍馬山に降り立ったと伝えられている。
その姿は16歳のまま年を取らない永遠の存在であり、天狗の総帥とも言われている。
その護法魔王尊が降り立ったという場所が鞍馬寺にある。
寺の本堂金堂から杉木立の道を歩き、行く手を阻む様に木の根が道全体を覆う「木の根道」を抜けた所に奥の院があり、そこが護法魔王尊が降り立った魔王殿だ。
ここは鞍馬山の一番の聖地である。
どこにいても霊気を感じる事ができる鞍馬山の中でも、一層エネルギーに満ちていると言われるのはその為だ。
大地の霊王である護法魔王尊から発せられる、宇宙のエネルギーを感じる事ができる場所が、古都京都の山奥に存在しているというギャップも、人々を鞍馬山に誘う理由なのかも知れない。