新潟県にある弥彦(いやひこ)神社の鳥居には、一つのミステリーが存在する。
鳥居の両側の太い親柱が宙に浮いているのだ。
弥彦神社は、霊山として信仰されてきた弥彦山の麓にある。
地元の人からは「おやひこさま」の愛称で親しまれてきた。
建立は第10代・崇神(すじん)天皇の御代とも言われる。
祀られているのは天照大神の曽孫にあたる天香山命(あめのかごやまのみこと)で、越後地方で最も格の高い一の宮である。
その境内に入る為にくぐる大きな鳥居の親柱と地面の間には、確かに6cmほどの隙間が開いている。
じつは、それにはれっきとした由来があるのだ。
昔、津軽藩主が船旅で嵐に遇い、弥彦の神様に「助かったらこの船の帆柱を鳥居として奉納します」と願ったところ嵐が止んだという。
しかし、鳥居の奉納を忘れていたところ、夜な夜な火の玉が飛び回り始めのだ。
あわてて鳥居を鳥居を奉納すると、火の玉は現れなくなった。
そこで、奉納した鳥居の柱が浸水などで万が一にも腐らない様に、宙に浮かせて設置してあるのだ。
この時飛び回っていた火の玉も「火の玉石」として境内に残っている。
願い事をしながらこの石を持ち上げてみて、重く感じて持ち上げられなければ叶わず、軽く感じて持ち上げれれば願い事は叶うという。
宙に浮いている様に見える親柱の両側には補強の柱が立っている。
現在は中心に入れられた鉄芯も、親柱をしっかりと支えている。
長い年月を経て守られてきた鳥居の不思議な姿には、神様との約束は決して破ってはならないという、一種の戒めが込められているのかも知れない。