「小利を見れば、則ち大事成らず」ーこれは、「論語」の子路篇にある、孔子の名言である。
小さな利益ばかり、追いかけてはいけない。
それでは大事業が出来なくなる。
私の友達が、二人でサラリーマンを辞めて、二人の有限会社を作った。
売上も順調に伸び、二人は脱サラをして良かったと、仕事が終わるとビールを飲んで喜び合っていた。
が、ある日の事、突然その友人の一人が、あまり経営状態の良くない会社と業務提携をし、うまく行ったら合併して大きい株式会社にしようと、強硬に提案して来た。
もう一人の彼は、前の会社より給料が少し多くなっているし、そんな事をしたら、折角上手くやって来た有限会社がつぶれてしまうのではないかと心配して、私の所へ相談にやって来た。
私はこう答えた。
「きみ、独立して経営者になったら、毎月の給料の事ばかりチョビチョビ考えていちゃいけない。
一緒に創業した彼を信じて、その縁の有った会社を救ってやる積もりで業務提携をして、自分の事業も大きく伸ばす努力をしたら、楽しい人生になるんじゃないかと」。
彼は合併に踏み切った。
友人も会社を失わず大利を得て、今日も悠然たる大社長の生活を送っている。
将棋の名人の舛田幸三さんの話に、次がある。
「日本の将棋は、常に全部の駒が生きておる。
これは能力を尊重し、それぞれに働き場所与えようという思想である。
しかも、敵から味方に移ってきても、金は金、飛車なら飛車と、元の官位のままで仕事をする。
みんな使って本当の民主主義ではないか」…と。