人は生きている限り、何らかの形で競争をしている。
学校では、成績を競いあった。
友情を失って、合格するか否かで、受験の勝負をした。
会社へ入るにも、地獄の争い。
入ってからは、もっとむごく厳しい競争がある。
財産と地位でも、負けたくはなかった。
一生をいつでも競争で悩み、勝負で苦しみ、楽な時はいささかも無かったと、多くの現代人がつぶやく。
孔子は「吾が道は一、以て之を貫く」と、喝破する。
自分が一生を通して行った事は、たった一つであると。
ではその一つとは何か。
曾子(そうし)というお弟子さんは、こう言っている。
「孔子先生が、常に一貫して行っていた事は、忠(人と誠実に付き合う)と恕(じょ・人を思いやる)であった」…と。
自分が富んで豊かな時も、貧のどん底にある時も、貴い地位にいる時も、無位になってしまった時も「忠恕(ちゅうじょ)」のまごころ一つで生き抜く。
競争、競争で打ち勝った人は、四十代を過ぎた頃から、短気になる人が多い。
競走に勝ってきた人は「オレは正しい」という観念が強い。
もう一つ、相手はほとんど自分の敵だと、思ってしまっている。
三十代は体力も能力も優れているから、いわゆる大人の対応をして生きられる。
四十代、五十代になると、急に体が動かなくなったり、忘れっぽっくなったりして、思わぬ失敗をする。
若いうちから、いつも人を思いやって、誠実に仲良く友とつき合う修練をしていないと、そんな時に自分を制御できずにキレる。