亀が本当は何を望んでいるのか
その問いは とても難しい
なので 亀は心の内外に起きる出来ごとを
とりあえず 楽しむ
亀が虚無の意識にさいなまされていた季節はすでに終わっている
遠い昔
意識の中で 時間を止め
この現実世界から 意識的に降り
異邦人のように
生きてきた時間
それでも 生身は
そのときどきに いっぱいの傷をうけ
その傷口が乾かぬままに 新たなる傷口をつくってしまうという
初歩的なミスを犯してきた
生身である限り 生傷は絶えない
それは 意識がどこにあろうとも 避けられない
意識が出来るのは
その生傷を
認めてあげること
受け入れてあげること
生身はことのほか
命の歴史の中で 鍛え上げられている
自覚的意識の手の届かないところで
日夜 裏方を になっている
決して 表舞台には登場することはない
その懸命さ けなげさは
表層意識の及ぶところではない
季節は秋
それぞれの秋が 一気にやってきている
亀は毛布や布団を引っ張りだす
生身にもぬくもりは必要なのだから
こころにもぬくもりが必要なように