母に自分の絵を見せて 「何か感じる?」って訊いたら
「何も感じない」 だって
おろおろってなって 少しあとずさりしてしまった
体勢を立て直して もう一度訊いてみた
「ちょっとは何か感じるでしょ?」
母は再び静かに 「何も感じない」 だって
そ、そうか そんなもんなんだよね
しかし もう一度 すこしむきになって いろいろと説明してみたが
けんもほろろの返事が返ってきた
ちょっとさみしかった いっぱいさみしかった
母にはなかなか思いが伝わらない 気持が伝わらない
それってもしかしたら ははの思いも気持も自分に伝わっていないんじゃないか
ごめんよ母さん
自分が感じるさみしさは おなじように 母も感じているに違いない
母もさみしいに違いない
父が亡くなって五年
どんな思いで母は毎日生きているのだろう
母の耳がますます遠くなり 会話もままならなくなり
お互いの気持を お互いにうまく伝え合えなくなり あきらめぎみに時が過ぎる
ごめんよ母さん ほんとにごめんよ
自分のこころにむきあい 人の心にむきあっているのに
肝心の母さんの心に ちゃんとむきあえない
間に合うかなー
母さん 自分は 母さんに 間に合うかなー
母さんに こころから感謝できるようになるかなー
恨みつらみはもうないけど
どうしても まだ 母さんにはひねくれてしまうところがあるみたいだ
もっともっと素直に正直になって
母さんに間に合うようになっていくからね
「産んでくれて ほんとに ありがとう」 って
母さんが生きてる間に必ず言うからね