今回はスコットランドの国民的大作家で妖精学の始祖、サー・ウォルター・スコットを紹介しよう。
今やゲームや映画で大人気の中世ファンタジー物の元祖とも言える作家だ。
まずはイギリス騎士道浪漫の代表作であるこの本。
(アイバンホー ウォルター・スコット 19世紀版)
アンドルー・ラングによる装丁も美しいアイバンホー上下2冊揃いだ。
スコットはこの他にも「獅子王リチャード」「湖の貴婦人」など今でも世界中で人気の高い物語を幾つも書いていて、英国騎士道を世に知らしめた功績は大きい。
日本では大佛次郎の翻訳本がありその初版本も持っているのだが、装丁が余りにも貧相なので原典と並べるのは御勘弁だ。
そしてこれぞ妖精学の聖典、スコット詩集。
(スコット詩集 ウォルター・スコット 19世紀版)
この中のスコットランドに伝わる妖精譚やケルト伝説を集めた吟遊詩歌集は、後の浪漫派k作家や妖精学者らに多大な影響を与えた労作だ。
厚革の浮彫り模様に三方金の重厚な装丁が如何にもサーの称号にふさわしい。
男爵だった彼のアボッツフォードの壮大な城館とその蔵書家具装飾品などは、ゴシック〜ビクトリア期の英国文化を象徴する物として今も保存公開されている。
もう一冊は我家にある洋書では最も古い本。
(最後の吟遊詩人 ウォルター・スコット 1806年版)
「最後の吟遊詩人」はスコットの初出版物でコールリッジの詩形をモデルにした叙事詩だ。
友人のワーズワースも絶賛していて、この作品で彼の名は一気に高まった。
初版は1805年だが写真の本はそれに加筆修正した改訂初版となっている。
英国の猟書家達が初版とか刊行年より装丁の方を重視するのは英国貴族達が蔵書をその家毎に装丁していた文化の名残で、内容も刊行年も全く同じ本に装丁違いの物が沢山あるのも楽しい。
夏の土用のこの時期は昔から暑かったが、今月の首都圏の猛暑日数は新記録だそうで諸賢も御自愛されたい。
スコット卿に因んでゴシックロマン調の歌を一首。
ーーー老鶯が山気を呼ばふ荒庭の 荒れ行くままを諾ふ詩魂ーーー
©️甲士三郎