般若心経

写経
四国八十八ヶ所

般若心経

2023-10-19 | Weblog

 竹の水仙

 落語に「竹の水仙」という話があります。

※~※~※
 東海道は藤沢の宿。とある旅篭の二階に朝から晩まで酒を飲んで長逗留している男がいた。宿賃は出立のときにという約束だったが、あまりにも長いので、女房からせきたてられた宿の主人が内金をもらえないかと取り立てに行った。すると男は「一文無しだ」と言う。
 「どうするつもりだ」と主人が問い詰めると、男は「裏の竹藪から竹を切ってこい」と言いつける。言われるままに主人が竹を切ってくると、男はその竹でつぼみのついた水仙を彫り上げた。
「これを水に差し、売り物と書いた紙を貼って表においておけ。これが売れたら宿賃を払う」 男の言うとおり、主人がその水仙を宿の軒先に置いた。
すると翌明け方つぼみが割れ、竹の水仙の花が見事に開き、あたり一面なんともいえないよい香りがただよい広がった。
 そこへ肥後熊本細川越中守様の行列が通りかかる。竹の水仙が越中守様の目にとまり、側用人に「求めてまいれ」と命じて通り過ぎた。
側用人に価はいかほどかと聞かれた主人が二階に上がり、男に尋ねると「相手が越中ならば200両にしておけ」と言う。主人がその旨を御用人に伝えると「竹細工に200両とは ふざけるな」と怒り、主人を殴って帰ってしまう。
主人が二階の男に「200両なんていうから、殴られたではないか」となじると、男は「もう一度、表で待っていろ、すぐに買いに戻ってくるから」と言う。
一方の側用人、本陣に着いて休んでいた越中守様にかくかくしかじかとことの次第を申し上げたところ、「あれは左甚五郎の作である。200はおろか500両出しても惜しくはない。直ちに戻り買って参れ、もしすでに買われていたら切腹、お家は断絶だ」とえらいご立腹。青染めて旅篭へ飛んで戻った側用人は主人に平身低頭平謝り、水仙を売ってくれるように頼む。立場が逆転した主人は殴られた腹いせから100両を上乗せし300両で水仙を側用人に手渡した。
 二階に300両を持って行くと、男こと左甚五郎は「100両はお前の儲け、50両は宿賃と殴られ賃だ」と言って150両を渡した。
※~※~※
(宿場、旅篭、旅篭の主人、大名などの名は演ずる落語家により異なることがあります)

 私が初めてこの話を聞いたとき、竹で作った彫り物の水仙が開く訳はない、これはよくできた落語の話であると思いました。
 ところが、先日の新聞(2023/10/13朝日新聞)に木彫の開花する水仙を作った大竹亮峯さんの記事が載っていました。
落語のとおり水仙の花が実際に開くのです。


 私たちはともすれば科学的に考えるとか理論上などと言って、まずできない理由を考えるようになってしまったのではないでしょうか。できる手段よりできない理由の方が簡単で、圧倒的に多数見つけることができます。そして安易に「そんなことは絶対にできっこない」と口にしていませんか。
木彫の水仙を開かせることは並大抵のことではなかったと思います。作りあげた大竹さんのアイディアと努力は賞賛するに価あるものです。
落語の竹の水仙はひょっとすると実話かもしれません。
竹の水仙などできるはずがないと考えていた、ちょっと反省した次第です。

 ところで、また落語に「抜け雀」という話があります。
※~※~※
 東海道は小田原宿の旅篭の話。夕刻、無理やり引き込んだ旅の男が一向に旅立つ気配がない。そればかりか、昼五合、晩一升の酒を飲み、宿賃はたまるばかり。せめて酒代だけでも入れてもらえないかという主人に、男は「金は一文もない、代わりに絵を描いてやろう」と言って襖に5羽の雀の絵を描いて出立した。
 翌朝主人が雨戸を開けると襖の雀が待っていたかのようにチュチュチュと鳴いて外へ飛び出し、しばらくすると舞い戻り襖におさまった。
 そのうわさが広がり、宿は大繁盛。・・・・・・・。
※~※~※
 やはり、これも襖に描かれた雀が飛び立つことはない、落語の作り話と思っていましたが、そのうち絵に描いた雀が飛び出すようになるかもしれません。


この記事についてブログを書く
« 般若心経 | トップ | 般若心経 »

Weblog」カテゴリの最新記事