夜明け
監督
広瀬奈々子
脚本
広瀬奈々子
製作
北原栄治
(企画プロデューサー)
西川朝子
伊藤太一
製作総指揮
濱田健二
飯田雅裕
出演者
柳楽優弥
YOUNG DAIS
鈴木常吉
堀内敬子
小林薫
音楽
Tara Jane O'Neil
撮影
高野大樹
編集
菊池智美
公開
2019年1月18日
あらすじ(公式サイトよりそのまま抜粋)
ある日の明け方。白み始めた空の下、橋の上で朦朧としながら花束を河に投げる、ひとりの青年(柳楽優弥)の姿があった―。
その朝。釣りをするため河辺にやってきた哲郎(小林薫)は、水際に倒れていた青年を見つける。
「おい、大丈夫か? おい!」衰弱している青年を、哲郎はそのまま軽トラに乗せて自宅で介抱した。
一人やもめの哲郎の家。布団に包まれて目覚めた青年は、自分が東京の渋谷から来たことを告げ、自らを「ヨシダシンイチ」と哲郎に名乗る。それ以上のことは喋りたがらないし、もう帰らなきゃ、と言いつつ、特に行く先のあてもないらしい。
そんな謎めいた青年に妙な執着を覚えた哲郎は、自分が経営する木工所に連れて行った。
作業台や大きな機械が立ち並ぶ木工所。
そこに従業員の男ふたり――若手の庄司(YOUNG DAIS)とベテランの米山(鈴木常吉)が出勤してくる。
「あれっ、新人ですか?」見知らぬ青年の姿を目にして驚く従業員たち。
「元気になったんだね。なんか困ったことがあったら声かけて」事情を聞いていた宏美(堀内敬子)という事務員の女性が、青年に優しく声をかける。
彼女は哲郎との結婚を間近に控えた恋人。
今は兼業農家として働きながら六歳の小さな娘(高木美嘉)と母親(芹川藍)と一緒に暮らしている。
職場ごと家族のような温かい雰囲気の中、青年はなりゆきで「シンイチ」として哲郎の家で生活することになった。
まもなく哲郎は青年に、空いている二階の部屋を好きに使ってくれと申し出る。
それは亡くなった哲郎の息子の部屋だった。
宏美によると、8年前、哲郎の妻と息子は実家に帰る途中で交通事故に遭ってしまったらしい。
音楽好きの部屋らしく、たくさんのCDに楽器や機材が並ぶ。
綺麗に揃えられた衣服も。そして棚の上に飾られている国家試験の技能士資格には「涌井真一」と記されていた。そう、青年は偶然にも哲郎の息子と同じ「シンイチ」という名前を名乗っていたのだった。
徐々に木工の技術を覚え、周囲にも馴染んでいく青年。
会話の中からは、彼の身の上や本音が少しずつ漏れ出してくる。
大学を出ているが満足な就職口につけなかったこと。高校まではサッカー選手になりたかったこと。
支配的な父親のいる家庭で育ち、優秀な兄ばかり期待されていたこと……。
自分の家族のことを「茶番だ」と言う青年に対し、哲郎は自らのことを顧みるようにしみじみ語る。
「親父らしくあろうとすればするほど失敗するんだよなあ……」
哲郎は妻との折り合いが悪かったこと、木工所の仕事を継ぎたくないと言った息子の真一を殴ってしまったこと
――もう取り返しのつかない家族との確執を深く後悔しているようだった。
こうして青年は自分の素性を明かさないまま、「シンイチ」としての暮らしをだんだん定着させていく。真一と同じ金髪に髪を染め、彼が残した服を着るなど、青年は哲郎の息子の代役を、自ら引き受けるような振る舞いを見せる。互いの心の空洞や欠損を埋め合うように、絆を深める哲郎とシンイチ。しかしこの日々は本当に続くのだろうか?
その頃、彼らの周りで、数年前に町で起きた事件にまつわる噂が流れ始める。
そして、青年が抱えている、ひとつの決定的な暗い秘密が明かされる―。
評価・・・★★★★★
感想
青年「ヨシダシンイチ」と名前を名乗る青年(柳楽優弥)と、
妻と息子を交通事故で亡くし1人やもめの哲郎(小林薫)、
2人の静かな演技とセリフが心に染みるように入ってくる。
時々、自信なさげな「シンイチ」にもどかしさを感じながら、
青年の秘密を追求することなく、「自分の道くらい自分で決めな。落ち着くまで好きなだけ使っていいから」と哲郎の粗野だが静かな語りにホッとする。
劇中、セリフは多くない。2人の関係は少ない会話と、表情の変化で物語が進んでいく。
ジワジワと来る、そんな物語だ。
柳楽優弥の、切なくやりきれない表情がとにかく素晴らしい。
小林薫の、息子と同じ名前を語る柳楽優弥を、息子と重ね静かに、時に強く語る表情は深い。
ラストのシーンが素晴らしい。
夕方16:05スタート、18:00過ぎに観終わって、北風が強くなってきた暗い坂道を自転車漕いで家路に着きましたが、なんとも言えない心地でしたね。
生きるとは、自分とは、家族とは
そんなことを考えさせられる「夜明け」
一度観に行ってください。
映画「夜明け」予告編