”人は愛するたびに誤ちをおかし
ているのかも知れない。それでも
愛さなかったより、愛する幸福を
一度でも知った方がより深い人生
を生きたことになる”
余談だが、
北鎌倉の駅から鎌倉よりに、東慶寺
という静かな尼寺がある。
江戸時代から有名な「かけこみ寺」
である。
封建時代には、女は結婚の自由は
もちろん、離婚の自由さえなかった。
親や兄弟の利益のため政略結婚に
利用され、どんなに横暴で非道な
虐待をうけても、女は一たん嫁(か)
した以上は、死ぬまでそこで辛抱を
強いられた。
そのくせ、女は夫の都合によって、
いつでも勝手に離婚されることが
あった。
妻が夫と別れたい時は、死ぬしか
道がなかった。
ただ一つ北鎌倉の東慶寺まで逃げ
のび、一歩この寺へたどりつけば、
法律の届かない世界になっている。
今でも昔のままに残っている東慶
寺の石段の下までたどりつくと、追
手に追われた女は、必死になって、
履物を寺の境内にむかって投げ
こんだ。それが片方でも境内に
とどきさえすれば有効で、体は
捕らえられても女の逃走は認め
られるというきまりがあった。
・・・・・・・。