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「マクベス」 舞台内容 一幕五場 (2)

2009-10-27 10:35:51 | 「マクベス」

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 国王ダンカンの使者が訪れて、その夜にマクベス城に泊まることが明らかになると、夫人の役割は、より一層重要なものになった。


 彼女は直ちに国王殺害という考えが脳裏にかすめ、国王の使者の声がしゃがれていることをもって、今後の凶兆を示す。
              'The raven himself is hoarse
   That roaks the fatal entrance of Duncan
   Under my battlements.'
        (烏の声もしわがれる、
 運命に見入られたダンカンが私の城に
 乗り込んで来るのを告げようとして)


 彼女は夫の大望を知っていたし、彼の性格を弱さが彼の成功を妨げることも知っていた。彼女はマクベスを国王にするために「女であること」どころか、「人間であること」すらやめようとしていたのだ。
                'Come, you spirits
   That tend on mortal thoughts, unsex me here;
   And fill me, from the crown to the toe, topful
   Of direst cruelty ! make thick my blood,
   Stop up the access and passage to remorse;
   That no compunctious visitings of nature
   Shake my fell purpose, nor keep peace between
   The effect and it ! Come to my woman's breasts,
   And take my milk for gall, you murdering ministers,
   Wherever in your sightless substances
   You wait on nature's mischief ! Come, thick night,
   And pall thee in the dunnest smoke of hell !
   That my keen knife see not the wounds it makes;
   Nor heaven peep through the blanket of the dark,
   To cry, "Hold, Hold ! "'
                (おいで、殺戮の陰謀に
 仕える悪霊たちよ、この場で私を女でなくしておくれ。
 頭の天辺から足の爪先まで、惨たらしい残忍さで溢れんばかりに
 満たして頂戴!私の血をどろどろ(残酷)にし、
 憐れみの情に通じる道を塞ぐのよ。
 同情の訪れに、私の惨たらしい決意を揺るがせたり、
 目的を遂げるのを邪魔だてしないように。人殺しの手先どもよ、
 私の乳房に入り込み、この乳を苦い胆汁に換えておくれ。
 今も今、その見えぬ姿で、何処かで悪事の陰をうろつき回っている
 お前たち。おいで、漆黒の夜よ、地獄でいちばん濃い煙で包み込み
 私の尖った短剣が、自分の切った傷口を見ないで済むように、
 天が闇のとばり越しに覗き見て『待て! 待て!』と
 叫ばないように!)


 恐いんですけど…… そう思うのは、ヴィクターだけですか?!

 ところで、マクベス夫人には名前がない。これは何を意味するのであろうか?

 それは、彼ら夫婦はふたりで一人という位置づけなので名前が必要ないからだ。
つまり、この『マクベス』は、夫婦の物語とも言える。この物語が始まる前、おそらく彼らはお互いを思いやり愛し合う、まだ十分若い幸せなカップルであったのだ。

 しかし、それが魔女の予言によって翻弄され、道を踏み外し全てを失っていくに従い、二人の間に溝が生まれ、最後は離れてしまうという悲劇を描き出だしているのだ。




 彼女が、この恐るべき決意を固めているところに、夫マクベスが帰って来るのだった。




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