「時空間の果てにある角度をゆっくりとよぎり、狙いを定めた獲物の匂いを何処までも飽くことなく追跡する貪欲な猟犬」
・「Hounds of Tindalos(ティンダロスの猟犬)」は、太古という言葉すら新しいと感じさせるほど過去の時空間の角に棲んでいる獰猛な怪物である。
・人間は、時空間の角ではなく曲線に沿って生きる存在であり、普通に暮らしている限りは、この怪物に遭遇する危険はないが、例えば、東洋の神秘的な仙人たちが調合した遼丹(リャオタン)や、「De Vermiis Mysteries(妖蛆の秘密)」に記された時間遡行効果を持つ薬を服用し、過去の時間を遡っていくようなことをすると、この獰猛な猟犬の尋常ならざる嗅覚に引っ掛かってしまうことがある。
・彼らは現実の肉体を備えておらず、生命活動に必要な酵素を青い膿汁のような原形質を構成している。
・「Hounds of Tindalos(ティンダロスの猟犬)」が、この空間に姿を現す前後には、名状しがたいほどの凄まじい悪臭が漂うが、その時には、既に手遅れであり、何ら慰めになっていない。
・「Hounds of Tindalos(ティンダロスの猟犬)」の住処を外宇宙とする文献も残っている。
・この怪物は、常に飢えており、一度捕捉した獲物は決して諦めることがない。しかし、彼らには、時空間の角度を通り抜けることでしか現実世界にやって来ることができないため、四隅の全てをセメントやパテなどで埋めて、角度をなくした空間に閉じこもり、この「Hounds of Tindalos(ティンダロスの猟犬)」が、別の獲物を見つけるまでやり過ごせば、生き残ることができるかもしれない。
・遼丹を手に入れ、時間を遡行する危険な実験の最中に「Hounds of Tindalos(ティンダロスの猟犬)」に察知された奇怪幻想作家ハルピン・チャーマズは、死を遂げる前にドールやサテュロスといった存在が、この怪物の追跡を手助けしていると書き残しているが、詳細については不明である。
・猶、この事件の際に残留していた「Hounds of Tindalos(ティンダロスの猟犬)」の体液を分析したジェームズ・モートン博士は、自らを被験者とする実験の結果、不死とこの怪物との融合を果たし、彼らの王であるムイスラを地球上に解き放とうと画策した。