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「ブランコの少女」<下>

2010-08-10 19:12:53 | リチャード・アダムス

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 『ブランコの少女』下、リチャード アダムズ著、百々佑利子訳、評論社


<あらすじ>
 アランとカリンの甘い日々が始まる。アランの周りの人々もカリンの魅力に惹きつけられていった。そして、彼女の思いもかけない大手柄…… 。幻の陶磁器「ブランコの少女」を思わぬことから手に入れたのだ。


 二人の幸せな日々は、いつまでも続くかと思われた。しかし、不気味な出来事が次々と2人のまわりに起き始めた…… 。言い知れぬ不安に苛まれる2人。徐々に大きくなっている焦燥感と不安。


 そして、突然のクライマックス―― 。




<感想>
 カリンという女性は、海のイメージ、もしくは陸に上がった人魚姫のようなイメージを持つ。波間に現れる泡のようだ。
 美しくありながらも、どこか儚げで、ふっと風に消えてしまいそうな感じがする。


 カレンは何かを隠していた。自分は罪深い人間であると自覚していた。そこから逃れるようにアランに寄り添った。


 アランは、カリンという海を泳ぐ魚だった。まさに水を得たと言わんばかりに、彼女によって新たな世界を見ることになる。
 彼にとって今のカレンは、自分の一部であるかのようになくてはらない存在となっていた。だから、カレンの過去に興味はなかった。というよりも、今のカレンを失うのが怖くて彼女の過去を詮索できなかったのだ。



第無夜 怪談 コーヒーブレイク 其の伍(前編)

2010-08-10 06:57:45 | 不思議夜話
 本来ならば、怪談話でなくて、ちょと横道に逸れた回ですが、今回は特別、学校の七不思議の1番目「体育館裏の開かずのトイレ」について書いていこうと思います。


 都市伝説の「赤い紙、青い紙」という話は、ご存知でしょうか。


 夕方の学校で、少年がトイレで用を済ませ、拭こうとすると紙が無かった。するとどこからともなくこんな声が聞こえてきた。



「赤い紙が欲しいか? 青い紙が欲しいか?」


少年が「赤い紙」と答えた。 その瞬間、身体中から血が噴き出し、少年は死んでしまいました。


この話を聞いた別の生徒は、怖がりながらも我慢できずにトイレに行った。
 するとやはり「赤い紙が欲しいか? 青い紙が欲しいか?」という声が聞こえて来た。少年は血が噴き出した話を思い出し、「青い紙」と答えた。


その瞬間、少年は身体中の血液を全て抜き取られ、真っ青になって死んでしまいました。


 と、この「赤い紙、青い紙」を元にしているのが、「体育館裏の開かずのトイレ」で、出没する妖怪が「赤座布団」と言います。
 トイレの天井から「赤が好いか? 青が好いか?」と聞いてくるのです。


 ヴィクターが通っていた中学校の体育館裏は、松林になっていて昼でも薄暗い場所です。だから、そこにあるトイレは、昼でも電灯を点けないと暗くて、ものがよく見ないくらいでした。
 その男子トイレには4つの大用の便器があって、その一番奥がうわさの開かずのトイレでした。現に扉に「使用禁止」の張り紙がしてあり、開かないようにロックがしてありました。


 体育館は、主にバスケット部が使用していました。自慢ではありませんが、その頃のバスケット部は、とても強くて全国大会の常連で、優勝、準優勝、ベスト3など華々しい活躍をしていました。
 だから、それに比例して朝昼晩と、凄まじい練習を誇っていました。それはもう、勉強などする暇なんかないくらいに…… 。


 ところで中学になると、やたらテストが増えます。学期ごとの中間テスト、期末テストなど。中間テストは5教科(国数英理社)、期末テストは9教科(5教科+音体美図)です。
 ヴィクターの通っていた中学では、成績上位は張り出され、逆に平均点の半部以下の点を取ると、「赤点」となって追試を受ける必要があります。。もちろん教科ごとにです。
 さらに、その追試で平均点以下だと、補習を受けなけれならなくなります。もちろん教科ごとに。


 しかも追試で「赤点」を取った場合、最悪な事態が発生します。親を呼ばれての三者面談を受けるのです。そして、この事態を「赤座布団」と言われていました。
 結構、勉強にも力を入れていたんですよね。何せモットーが「文武二道」でしたらから…… 。


 だから、レベルの高いスポーツ部の生徒たちは、テスト期間になると悲壮感が漂うといった感じで、ちょっと可哀想でした(ちなみにヴィクターはテニス部)。


 そして悲劇が起きます。とあるバスケット部員が、期末テストで「赤座布団」を取ってしまったのです。しかも5教科も―― 。
 彼は悲嘆に暮れながらも部活をサボるわけにはいかず練習に参加します。しかし、時間が経つにしたがってテスト結果が頭をよぎります。
 親にどのように話すかを考えると、お腹が痛くなってきて、仕方なく件のトイレへいく―― 。


 と、ちょっと長くなりましたので、続きは次回…… 。
  



「オリオン座・オーリーオーン」

2010-08-08 17:19:27 | ギリシャ神話

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 「望んだものがすべて手に入るわけではない」


 オーリーオーンはギリシャ神話きっての美男子で、名狩人だった。しかも父親は、ポセイドーンとあっては、世の女の子が放っておくはずがない。
 名門のボンボンのオーリーオーンは、自分の魅力を十二分に理解していて、女の子をナンパすることにも名狩人だったのだ。


 彼が狙えば、望みのほとんどが叶えられるので、当然彼は、すこぶるプライドが高かった。彼の相手は、人間、ニュムペーたち、女神たちなど様々。


 「チッチッ、君たち。狩人が獲物を逃がしたら、廃業すべきさ。僕の場合、完璧だけど」


 なんてぬかし…… 、いえ、仰っていたらしい。


 そんなオーリーオーンの心を敗北感で満たして、初めての挫折を味あわせた娘たちがいた(ザマーミロ…… 、オホン、失礼しました)。
 アトラースの七人の娘たち、プレイアデス(ちなみに、これは彼女たちの総称です)だ。


 オーリーオーンは、追っかけた。武道館の楽屋口や雨の日のテレビ局でスケジュールをつかんで、先回りしている追っかけのように(その手の人たち、ゴメンナサイ)。
 野を越え、山を越え、川を渡り、海を渡って、林や森を抜け、走りに走って、隠れて、待ち伏せをして、彼女たちを追いかけた。
 されどプレイアデスは逃げる。どんどん逃げる。ひたすら逃げる。どこまでも、果てしなく―― 。


 彼女たちは、純潔を守ろうとして固く誓っていたのでオーリーオーンでなくても、同じであったかもしれない。
 そして彼女たちは、ゼウスによってさらわれてしまい、夜空の星にされてスバル星団になってしまったのだ。


 オーリーオーンは、負けた。初めての敗北。信じられなかった。しかし、しかしだ。彼は、ただでは起きなかった。
 この後、暁の女神・エーオースと結ばれる(だから、美男子って奴は…… )。エーオースはオーリーオーンに早く会いたくて夜明けの時間が短くなった。


 月の女神・アルテミスは、どうして彼女が、そんなに急ぐのか不審に思い、覗きに出かける。アルテミスは、なんとオーリーオーンを見るや否や、一目ぼれしてしまったのだった。
 オーリーオーンのほうも、アルテミスが狩りの女神でもあったので、ともに野を駆けたいと考えて、あっさりとエーオースを捨ててしまう(だから、美男子って奴は…… )。


 ところが、これに怒ったのが、妹のアルテミスをとられたアポローンだった。彼は、曾祖母のガイヤをけしかけて、巨大なサソリにオーリーオーンを襲わせる。
 サソリは、オーリーオーンを海辺まで追い詰めたが、海の飛び込まれて取り逃がしてしまう。しかし、アポローンは、あきらめずに妹を利用することを考えたのだ(悪どいぞ、アポローン)。


 アポローンは、妹ではあったけれど、アルテミスのことが好きだった。だからオーリーオーンを許すことができず、さらに自分を裏切った(たぶん自分勝手な思い込みだと思う)妹にも悲しい目に遭わせずにはいられなかったのだ(なんか、昼メロみたい)。


 アポローンは、海岸へ妹を連れていき、遠くの海面に浮かぶ人の頭を指して言った。


 「あれは、お前のニュムペーを襲った野蛮な賊だ」


 アルテミスは、銀の弓に銀の矢をつがえて、男の頭を見事射抜いた。その男こそ、オーリーオーンだったのだ。
 まもなく真実を知ったアルテミスは、オーリーオーンを海から引き上げて、夜空の中で狩りが永遠に続けられる場所に置いた。
 そこは、スバル星団となった娘たちを追い、サソリ座が夜空に現れる頃には水平線に沈むという場所だった。
 そして、オリオン座は今でも、夜空に輝いている。



「ブランコの少女」<上>

2010-08-06 18:35:35 | リチャード・アダムス

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 『ブランコの少女』上、リチャード アダムズ著、百々佑利子訳、評論社


<あらすじ>
 イギリスで陶磁器の店を営むアランは、仕事先のコペンハーゲンで、輝くように美しいドイツ娘カリンと知り合い、たちまち恋に落ちる。
 アランは、彼女をイギリスに呼び寄せ結婚し、二人の甘い日々が始まった。


 当初カリンに不審をいだいていた人々も、やがて彼女の魅力に惹きつけられていく。しかし、アランは彼女の過去を何も知らないままだった…… 。




<感想>
 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』や 『疫病犬と呼ばれて』といった動物ものファンタジーとはまったく違った雰囲気の恋愛小説になっている。


 アランは、彼の仕事で取り扱う陶磁器のように繊細で、もろさを備えた人物として描かれている。この点、著作者アダムスの心情を投影した、自伝的な小説といった趣きがある。


 相変わらずの描写の細かさ、美しさは当然のことながら、カレンの美貌について、意図的に細かい描写をしておらず、読者の想像にまかせて、より一層美しさを際立たせているのは鮮やかだ。


 あまり恋愛小説は読まないが、男性視点による本作品は、一気に読んでしまった。アダムスの読者を惹きつける文章力は、さすがというほかにない。
 



「金星・ヘスペロス」

2010-08-05 21:45:47 | ギリシャ神話

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 「心優しき巨人の男、星となる」


 ヘスペロスは、巨人アトラースの息子。ヘーラクレースの物語に出てくるヘスペリデスの兄弟でもある(アトラースを参照してください)。


 ヘスペロスは非常に賢くて優しい親切な巨人で、人々からこよなく愛されていた。でも、人に好かれるという人物は、ギリシャ神話には滅多にいないこともあって、彼の人気を嫉妬する神もいたのだ。


 「別に憎むとか、羨むとか全然してませんよ(ご本人の希望により一部音声を変えてございます)


 この嫉妬は、ついには殺人未遂事件にまで発展する。
 ある日、ヘスペロスが山登りをしていると、件の神が目ざとくそれを見つけた。一思いに殺してしまおうと思ったその神は、強い西…… オホン、か、風を送って彼を吹き飛ばしてしまう(危うく暴露しまうところでした)。
 このままでは地面に激突して、哀れヘスペロスは木っ端微塵に、しかし、この殺人は未遂に終わった。


 木の葉のように天を舞うヘスペロスを見かけたのがヒヒ爺こと全能神ゼウス。それではいくらなんでも可哀想だと、彼をそのまま天空へ上げることにした。
 かくしてヘスペロスは、夜空の中にあってもひときわ美しい星となった。その星の名は、宵の明星、金星というわけだ。


 珍しくゼウスの善行が光るエピソードだが、ヘスペロスを殺そうとした犯人は判らずじまい(限りなく黒に近い人物はいるが、推定無罪ということで……)。結局、迷宮入りとなってしまった。