ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

気負わず、気取らず、ありのまま。
ゆるりと思ったことを書いていってます。
お気に召したらうれしい限り。

歌詞を考える 柴田淳『人魚の声』

2018年12月08日 01時26分00秒 | 歌詞を考える
こんばんは、ジニーです。


久しぶりの歌詞考察。
4か月も開いてしまったのですね。

当ブログで、実はこの歌詞を考えるシリーズはなかなか人気のようでして
定期的にいろんな方に見ていただいているようです。
ありがとうございます。


さて、今回考察するのはこの曲。
柴田淳さんの「人魚の声」。

この「人魚の声」は2007年にリリースされた「月夜の雨」という
アルバムに収録されている曲です。

実はずっと前から、この曲のことを書きたいと思っていました。
柴田淳さんではこの「月夜の雨」は本当に僕の中で傑作でして、
以前歌詞考察をした「HIROMI」もこのアルバムに収録されたシングル曲です。
歌詞を考える 柴田淳 『HIROMI』


それでは、始めましょうか。
歌詞はこちらでご確認ください。


しかし、柴田淳という女性は本当にこういう歌を歌わせると天才的です。
女の情念や寂しさ、切なさ、儚さ、どうしようもなさ、男の僕にまで伝わってきます。

中でもこの「人魚の声」は、もう凄いとしか言えない。
こういう歌詞は男には書けないですよ。

「愛されたい」と一心に思う女性が主人公であるこの歌は、
冒頭からサビを迎えます。

「愛されていないって 思いたくない
 あなたを失うのはこわいの
 これ以上 それ以上 期待していても
 傷つくだけと知っても・・・」

もう、ここからつらいじゃないですか、染みるじゃないですか。
本当にね、この女性の彼氏に「もっと大事にしろよ」って言いたくなります。
Aメロ、Bメロはそんな彼氏のひどさが浮き彫りになります。

「どうしたの?って心配する
 映画の恋人は優しい
 そんな場面を見る度に
 悲しくなったの」

「電話したって 私が一人
 ただずっと喋っているだけ」


なにこれ、哀しい。
彼女も彼女です、そんな彼氏に対して素直になれないのです。
2番の歌詞にその気持ちの部分が色濃く表現されます。

「作り笑いを真に受けるし
 「やだ」の「いいよ」もわからないなら
 何も話さなくなった
 私に気付いて・・・」

男からすれば、それは無理だよ、とついこぼしたくなる歌詞ですが、
僕はここにこそ女性の心理をとても強く感じます。
「やだ」の「いいよ」ここにこの歌の神髄がすべて込められている気がします。

男の僕なりに考えるのですが、
女性の心理には「見ていてほしい」という願いが込められている気がします。
自分から言って気づいてもらうのは、違うんです。
「ほしい」ものを「ほしい」と言わず気付いてほしいのです。
そこに、愛されているという確証を得るから。


「せめて ねえ 気付いてよ
 いつもと違うって」


ここにもその心情が見て取れますね。



さて、この物語、僕はすでに恋は取り返しのつかないところに来ている気がします。
おそらく彼氏の心は彼女に向いてはいない、ひょっとするとほかの女性を思っているかも
しれません。

そこをちゃんとこの女性は気づいています。
だから、言えないのです、「愛して」って。
だって「愛して」って言ったら、「もう君を愛せない」と言われてしまうから。

確かめることをしなければ、少なくともあなたを失う時間は少し先に延命できる。
その先に満たされることがないと知りつつも、切れないのです。
だって、かつては確かに「愛されていた」
「愛されていた」ことを知っているから。
「愛されなくなる」恐怖がそこにあるから。

少し盲目的になっている節もありますが、
だからこそ恋なんだと感じさせるのです。

読めば読むほど、空回りする女性の胸の音が聞こえてきそうですが、
バカだなとは思えないんです。
胸が締め付けられるんです。

誰だって愛してほしいに決まっています。
自分が愛した人に対してはなおさらです。


この女性はどこか、愛さなくちゃ愛されないくなるという義務になっています
冷静になれば、それが正常ではないこともわかるはずなのに、そうできない。

どうしようもない人だけど、ふとした時の笑顔を見て、ただそれだけで「好き」ってなる気持ち。
10のうち9つ外れても、たった1つ拠り所があればそれだけでいいんです、恋は。

だからそんなに簡単に割り切れない。
そもそもそんな理屈で愛してなんかない。


読み解けば読み解くほど、空しさではなく、
女性の強さを感じる歌詞です。

男がどんなに頑張ったって、こんな風に情念の微かな隙間に母性を感じさせる歌詞なんて
よっぽど書けないですよ。
だから、こういう歌詞をかけて、適度な温度感で歌えることが
本当に心から凄いと思うし、羨ましい。



このどこにも行けない恋は、どんな結末を迎えるのでしょう?
そんなに自分を追い詰めないでと手を差し伸べたくなりますが、無意味でしょう。
その手を彼女は求めていない。
求めているのは彼なのだから、それ以外は見えない。


次の愛を知るには、一度泡になり海の藻屑にならないといけないのかもしれませんね。
それこそ、果てしなく深い宇宙のような海底で。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丸戸史明 『冴えない彼女の育て方 2巻』 読了

2018年12月08日 01時00分53秒 | 読書
こんばんは、夜更けにジニーです。



お笑い漫画道場の富永一郎さんよろしく、2コマー!!な感じで
「読了」の連投です。

12月の1冊目は、丸戸史明さんの「冴えない彼女の育て方 2巻」です。



ハードボイルドの後にラノベ!
なにこの落差(笑)

でもいいんです、これくらいでなくちゃ!
読みたいものを読みたいときに読む。


チャゲアスだって「SAY YES」の大ヒットの後に、同じようなバラードで来るかと
思ったら「僕はこの瞳で嘘をつく」なんてアッパーチューンを持ってきました。
「YAH YAH YAH」の大ヒットの後に、同じようなアップテンポをリリースするかと
思ったら「Sons and Daugthers~それより僕が伝えたいのは~」なんて美メロな
バラード持ってくるんです。

やっぱり落差を楽しまなくちゃ!



話がずれましたね。

1巻の感想はこちら(冴えない彼女の育て方 1巻 読了)から。

とあるヲタク男子が、無個性なクラスメイトにうっかりと決めてしまったものだから、
彼女を、胸がドキドキキュンキュンする誰もがうらやむようなゲームのヒロインに仕立てようなんて
思い立ってしまって・・・そんな感じでドタバタとストーリーが進んでいくシリーズ物のラノベです。


今回の2巻では、ようやくサークルとして活動を始めたところから
物語のプロットを固めるあたりまでが描かれていきます。

ちなみにこのサークルには
高校生ながらラノベ小説家として大ヒットした新進気鋭のシナリオライター(美人先輩)と
表の顔は美術部のエース、裏の顔はエロ同人漫画作家のイラストレーター(美少女同級生)と
無個性だけどよく見ると可愛いメインヒロイン(よく見ると可愛い)と
主人公の男で組まれています。(のちにメンバーは増えます、減ります、変わります)
ホントにラノベでしか設定できないような、豪華絢爛最強の布陣。

しかし、クリエーターの闇ともいえるような世界を面白おかしく書けちゃうのも
やっぱりラノベならではの面白さであり、ともすれば作品を重くしてしまいそうな
テーマもふんわり軽く笑いの種にしてしまうのは、なんか病みつきになります。


ラノベだってやっぱり立派なエンターテイメントです。


以前の感想にも書きましたが、本作はアニメから入っている僕です。
そのため、すべてのキャラクターが頭の中で声付きで再生されます。
脳内リピートってやつですね。
そんなもんでサクサクと読むことができました。

アニメとはまた違う面白さがあって、続きもどんどん読みたくなってきます。
ええっと、何巻まであるんだっけ?
え、13巻?

うん、50歳になるまでには読めるかな。


50代でラノベってw

ええやん。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤原伊織 『ひまわりの祝祭』 読了

2018年12月08日 00時23分34秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


いつの間にか12時過ぎちゃいました。
仕方ないです、チャゲアスのライブDVD観てたんで、そうなりますよ。


さてさて、遅くなりましたが11月のノルマ3冊目。
読み終わったのは12月になってからですが、まあ大目にみてください。

今回読んだのは、藤原伊織さんの「ひまわりの祝祭」。
「テロリストのパラソル」以来、2冊目の藤原作品です。
「テロリストのパラソル」の感想はこちら


主人公は30半ばの男、秋山秋二。
天才という呼ばれた過去を持つこの男は、プラスチックのようなツルツルな生活を送り続けています。
実に無味乾燥な自堕落な日々。
コンビニの恩恵を受け、虫歯にさいなまれる日常。
そんな男があれよあれよとハードボイルドな波に呑まれていく。
変なおっさんとしか印象のなかった人が、ギャンブルで勝つわ、銃の腕はあるわ、
何ともかっこいい無頼漢になるなんて想像できませんよw


本作は、ゴッホ(ファン・ゴッホ)の「ひまわり」という絵をめぐって
物語が進んでいきます。
誰も知らない幻の「ひまわり」。
その行方を、7年前に自殺した妻が知っていた。
これがハードボイルドな時間を過ごすことになるきっかけになります。

美術的はもちろん、商業的な価値も莫大な幻の「ひまわり」は
いったいどこにあるのか?
妻の自殺のショックでその当時の記憶があいまいになっている秋二の
その霧がかった記憶の中にヒントが眠っているため、やくざな組織から
監視され、脅され、命の危険まで晒されます。


前回読んだ「テロリストのパラソル」でもそうでしたが、
藤原さんの作品は、本当に登場人物が魅力的。
誰に寄らずとも確固たるキャラの立ち位置をもって、物語を彩ります。

先ほど命の危険と書きましたが、一枚の買いがをめぐり命が
天秤にかけられるのです。
僕はここに本作のとてつもないテーマを見た気がしました。

いわば、
時代を越えて生き続ける絵画の価値と、
時代を繋いでいく人間の命の価値、
この二つを天秤にかけたときに、掲げられるのはどちらなのか?
このテーマに向けて、物語は終焉に向かい加速度をつけて展開していきます


そして、最後に秋二が下した決断。
プラスチックのようなツルツルな生活を送っていた人間の下す
人間臭い最後の決断。

ハードボイルドはそんなにたくさん読んでいるわけではないですが
こういう本がハードボイルドの教科書というのだと思います。


自分の信じたものを信じ抜く強さ。
僕はやはりここに、どうしようもないかっこよさを感じるのです。
そして、自分もそうでありたいと思うのです。


どんなに時代が廻ろうとも、こういう部分は失くさずにいたいなと
男としてあこがれる部分を見せつけられた作品でした。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする