こんにちは、ジニーです。
今日の読書感想は村山由佳さんの「はつ恋」です。
僕の読書の原点でもある村山由佳さん。
時折発作のように村山さんの小説を読みたくなる時があり、
それくらい僕にとって影響の大きな作家さんでもあります。
「はつ恋」。
なんだか初々しいタイトルですが、登場する人物に学生などはおらず、
基本的には、大人の男女のふたりです。
主人公は南房総の古い日本家屋に一人で住む小説家ハナ。
これまでに離婚を2度経験している40代の女性。
ハナの恋人はトキオ。
トキオも離婚を経験している40代男性。
実はハナとトキオは幼少期に幼馴染として姉弟のように
時間を共にしてきた存在。
そんな二人を、ハナの生活を中心に、季節ごとに追うように綴ったのが
この「はつ恋」という小説です。
小説は、卯月からはじまり弥生までの各月と「後悔」、「爆発」、「初恋」という
3つのタイトルの内容を加えた15編の短編集となっています。
季節ごとにハナの住む日本家屋の庭の景色とともに移ろう恋愛模様が
書き綴られているのですが、大きな事件のようなものは特に起きません。
淡々と「恋」をする二人の様子を追いかけていく感じです。
二人の気持ちが試されるようなことなんてまるで起きない。
寄り添って、安らいで、求めて、けんかして・・・。
40代の二人が織り成す恋愛模様が続きます。
それが恋愛小説として面白いのか?と感じるかもしれませんが、
これが面白いんです!
何にもないのがよりリアルに見えるんですよね。
奇しくも読み手である僕も40代ですが、ある程度の酸いも甘いも経験してますから
自分の気持ちは、基本的に自分で解決できるんですよね。
そう、自立しているんです。
自立している人間がすでに自分の人生をしっかりと歩いている中で
その生活のアクセントとして「恋」が存在している。
すでに安定している場所にふと訪れて、すぐに消えてしまう「不安定」。
その瞬間的な歪が、またいつも通りに戻っていく様に
妙に読み手のリアリティも刺激されていくのだと思います。
裏表紙にある「大人のための傑作恋愛小説」のコメントは伊達じゃないですね。
村山由佳さんの書く小説には一つの特徴を感じています。
それは描写のうまさ。
本書最後の「解説、あるいは恋文」にて小手鞠るいさんも触れているのですが、
読みながら、その景色を連想させる巧さは村山由佳という作家の
強烈な武器の一つだと思います。
前述の小手鞠るいさんも「解説、あるいは恋文」で触れていますが、
こんな文章があります。
「ふと、独特の匂いを嗅ぎつけて、ハナは再び縁側の向こうがの庭を見やった
乾いた土埃が湿っていく時特有の、きなくさいような、錆くさいような、
どこか酸っぱい匂いが鼻腔に届く。
水色から薄紫に色づいた紫陽花の花たちが、上下にうなずくように揺れる
蛙の合唱が急に大きくなる」
-本文より抜粋ー
「雨」という言葉を一言も使わず、雨の降り始めを表現されています。
ここからも感じていただけると思うのですが、文章における言葉が情景を説明
するだけではなく、情景をイメージさせるのです。
だから、本書では卯月、皐月・・・、と月ごとに物語が進みますから、
文章の中から季節の移ろいがイメージされていき、小説を読むうえでの
奥行きと、そこに連動する登場人物の目線や感触などとのリンクする錯覚にも
似た読書体験にもつながっていくのだと思います。
この筆力が根底にあるので、大きな事件が起きないアラフォーの恋愛模様が
小説として成り立つのではないかと思います。
いい大人が、体いっぱいに「恋」をする物語。
懐かしさのような、新しさのような、いつか使わなくなってしまいこんだ
感情がひょっこり顔を出してきそうな、そんな気分。
村山由佳という作家をまだ知らないという方には、
最初に手を伸ばしてもらうにもちょうどいい作品かもしれません。
今日の読書感想は村山由佳さんの「はつ恋」です。
僕の読書の原点でもある村山由佳さん。
時折発作のように村山さんの小説を読みたくなる時があり、
それくらい僕にとって影響の大きな作家さんでもあります。
「はつ恋」。
なんだか初々しいタイトルですが、登場する人物に学生などはおらず、
基本的には、大人の男女のふたりです。
主人公は南房総の古い日本家屋に一人で住む小説家ハナ。
これまでに離婚を2度経験している40代の女性。
ハナの恋人はトキオ。
トキオも離婚を経験している40代男性。
実はハナとトキオは幼少期に幼馴染として姉弟のように
時間を共にしてきた存在。
そんな二人を、ハナの生活を中心に、季節ごとに追うように綴ったのが
この「はつ恋」という小説です。
小説は、卯月からはじまり弥生までの各月と「後悔」、「爆発」、「初恋」という
3つのタイトルの内容を加えた15編の短編集となっています。
季節ごとにハナの住む日本家屋の庭の景色とともに移ろう恋愛模様が
書き綴られているのですが、大きな事件のようなものは特に起きません。
淡々と「恋」をする二人の様子を追いかけていく感じです。
二人の気持ちが試されるようなことなんてまるで起きない。
寄り添って、安らいで、求めて、けんかして・・・。
40代の二人が織り成す恋愛模様が続きます。
それが恋愛小説として面白いのか?と感じるかもしれませんが、
これが面白いんです!
何にもないのがよりリアルに見えるんですよね。
奇しくも読み手である僕も40代ですが、ある程度の酸いも甘いも経験してますから
自分の気持ちは、基本的に自分で解決できるんですよね。
そう、自立しているんです。
自立している人間がすでに自分の人生をしっかりと歩いている中で
その生活のアクセントとして「恋」が存在している。
すでに安定している場所にふと訪れて、すぐに消えてしまう「不安定」。
その瞬間的な歪が、またいつも通りに戻っていく様に
妙に読み手のリアリティも刺激されていくのだと思います。
裏表紙にある「大人のための傑作恋愛小説」のコメントは伊達じゃないですね。
村山由佳さんの書く小説には一つの特徴を感じています。
それは描写のうまさ。
本書最後の「解説、あるいは恋文」にて小手鞠るいさんも触れているのですが、
読みながら、その景色を連想させる巧さは村山由佳という作家の
強烈な武器の一つだと思います。
前述の小手鞠るいさんも「解説、あるいは恋文」で触れていますが、
こんな文章があります。
「ふと、独特の匂いを嗅ぎつけて、ハナは再び縁側の向こうがの庭を見やった
乾いた土埃が湿っていく時特有の、きなくさいような、錆くさいような、
どこか酸っぱい匂いが鼻腔に届く。
水色から薄紫に色づいた紫陽花の花たちが、上下にうなずくように揺れる
蛙の合唱が急に大きくなる」
-本文より抜粋ー
「雨」という言葉を一言も使わず、雨の降り始めを表現されています。
ここからも感じていただけると思うのですが、文章における言葉が情景を説明
するだけではなく、情景をイメージさせるのです。
だから、本書では卯月、皐月・・・、と月ごとに物語が進みますから、
文章の中から季節の移ろいがイメージされていき、小説を読むうえでの
奥行きと、そこに連動する登場人物の目線や感触などとのリンクする錯覚にも
似た読書体験にもつながっていくのだと思います。
この筆力が根底にあるので、大きな事件が起きないアラフォーの恋愛模様が
小説として成り立つのではないかと思います。
いい大人が、体いっぱいに「恋」をする物語。
懐かしさのような、新しさのような、いつか使わなくなってしまいこんだ
感情がひょっこり顔を出してきそうな、そんな気分。
村山由佳という作家をまだ知らないという方には、
最初に手を伸ばしてもらうにもちょうどいい作品かもしれません。
あれからずいぶん経ちますね
私も天使の卵シリーズやおいしいコーヒーシリーズは読みました
良い作家さんですね