色鮮やかなウエットスーツ、背にはボンベ。手にしたスポンジで壁やアクリルガラスをゴシゴシ擦ります。洗剤は使いません。名古屋港水族館で目にした、職員による水槽内の掃除風景のひとコマです。
昨年、放映された「水族館ガール」といったテレビドラマなどの影響もあって、「水族館の仕事」はとりわけ女性たちの間で人気の職種のようですが、仕事の内容は想像しただけでもさまざま。
窓口の切符販売から客の案内、イベントの企画、館内アナウンス、迷子の保護・・・。最も「狭き門」といわれる飼育員も、エサやり、魚の健康調べ、水質検査、繁殖、いろいろな研究など。エサやりといっても、大量の魚肉を細かく切ったり、冷凍エサを解凍したりと容易ではないでしょう。
イルカを調教するドルフィントレーナーだって、ドラマ通り、いやそれ以上の厳しさかもしれません。絵にした水槽内でのダイバーの掃除も、壁やアクリルガラスの汚れを取るだけでなく、エサの食べ残しやフンの除去もあります。水中の冷たさだけでなく、生理現象を我慢することも免れないでしょう。
もちろん「水族館ガール」の仕事はひとつのことだけを担当するのではなく、いくつもの役をこなさねばなりません。動物園や農業センターなども同様ですが、生物に関わる仕事の大変さを思いつつ絵筆を進めました。
掃除中の水槽内の魚は外に出したりはしません。この水槽でもダイバーの周りを小魚が泳いでいましたが、小さすぎて描き入れるのをやめました。また、掃除を終えると、作業を見守っていた我々に気づいてニコッと笑顔を見せてくれましたが、水中メガネ越しの表情を描くのは難しすぎてできませんでした。