4階建てビル全体の空間で自由な暮らしをおくる小鳥たち
長野県阿智高校の生徒も協力して写し取ったJR飯田線の旧線トンネル壁面
今回は、あいちトリエンナーレの会場都市として初めて参加した豊橋市の会場です。
名古屋に次ぐ愛知県内2番目の規模を誇ってきた東三河地域の豊橋市。東海地方では唯一の路面電車が走る街ですが、近年は繁華街にもシャッターやビルの空室が目立ち、活性化を目指すさまざまな取り組みが進んでいます。
トリエンナーレ参加もそのひとつでしょう。
展示会場は芸術劇場PLAT、水上ビル、駅前大通の3会場。
PLAT会場の玄関先では、名古屋市美術館会場の野外展示でも人気のネットプロジェクトが迎えてくれました。ここでも風に揺れる色とりどりの毛糸を結ぶ観覧者の笑顔がいっぱいです。
館内に入ると、さらに驚きの光景が飛び込んできました。
天井まで届く高さ7メートルもある鉄製・ウレタン塗装の巨大な壺。今回のトリエンナーレでは、愛知県美術館の大フロアを埋め尽くした花模様、プリウスや観覧者を乗せて走る自転車タクシーの装飾など、大活躍している岐阜県出身の大巻伸嗣の作品です。
水路だったところを埋めて建てられた水上ビル会場は長い商店街ですが、ひところの賑わいはなく空きビルも。そんな建物が楽しい展示場になっています。
そのひとつ、老朽化した4階建ての小型ビルが、そっくり鳥の楽園になっていました。
この作品の女性作家も、PLAT会場玄関の毛糸結びネットプロジェクトの作家と同じくブラジルのリオデジャネイロを拠点に活動。木で組んだ巣に鳥かごのペットでお馴染みのジュウシマツなど4種類100羽の小鳥が遊んでいます。
小さなケージから大きな空間に放たれ、自由な生活圏を楽しんでいる小鳥たち。
狭くて急な階段を上り、身をかがめて見守る観覧者。
人間と小鳥の関係、立場や視点を変えることなどを考えつつ鑑賞しました。
駅前大通の開発ビルは、まず10階までエレベーターで上がり、階段を下りながら各階のフロアを観覧するというユニークな会場です。
アメリカ先住民の技法でデザインしたテキスタイル。砂糖細工のロイヤルアイシング技法で描いた大阪の作家・佐々木愛の大作。それに、愛知県美術館や名古屋市美術館でも興味深く鑑賞した鉛筆で建造物や樹木を擦って写し取る岡部昌生の大作にも出会えました。
岡部の豊橋会場での作品は、沖縄と北海道の旧海軍飛行場などの滑走路や、秘境駅巡りでも人気のあるJR飯田線(豊橋―長野県辰野)の旧線のトンネルだった夏焼隧道の壁面を写し取ったものです。
長野県阿智高校の生徒たちとの共同作業という714枚からは、ダイナマイトで発破をかけ、岩肌をツルハシで削り取った作業員たちの労苦が伝わってきます。
水上ビルの商店街
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ここでも人気のネットプロジェクト