2020年の東京オリンピックや2027年のリニア中央新幹線開業などに向けて、日本列島は都市部を中心に新たな再開発の時代と言っていいでしょう。
これは、名古屋で見かけたビルディング解体現場の風景。40号です。
数か月前、水彩画教室の仲間たちと昼食に入ったレストランの窓際の席から、声が上がりました。「すごね。ビルの解体現場をこんなに近くで見たのは初めてだよ」
隣のテーブルから立ち上がった僕も、目が引き寄せられました。このような現場を絵にしたいな、と思っていたからです。
名古屋では、リニア中央新幹線の東京~名古屋間が27年に開通するのをにらんで、名古屋駅周辺や栄地区などで大がかりな再開発が進んでいます。少し前まであったビルが突然消え、新しい超高層ビルが出現するといった具合です。
絵を趣味にして「名古屋が様変わりする時代のひとコマを描いてみたい」と思ったのが動機でした。
とはいっても、仕事でいろんな現場にヘルメット姿で出入りできた現役時代と、リタイアした今との違いを改めて知らされます。
現場は高い衝立で囲われ、近づけないだけでなく、中の様子が見えないのです。通行人や周辺の安全、防塵、防風、防音、防犯、それに都市景観などのためにも、衝立を設けるのは当然のことですが。
近くの高層ビルのテラスや外の風景が見えるエレベーターから工事現場を一望したり、クレーン車やミキサー車の出入り口から垣間見たりの努力はしました。しかし、思った光景とはなかなか出会えず、今回の解体現場を目の当たりにした時は「よしっ」と興奮したものです。
描くために翌日も出かけ、じっくりウオッチ。大型クレーンの動きや防塵のための散水風景など、どれにするか迷いましたが、解体中のビルの様子を少し広く捉えることに。
数多く垂れていた鉄筋や、コンクリート塊の数や形を少し変えたものの、できるだけ現場に忠実に描きました。
それにしても、現場が意外に整然とし、工事の進行も予想以上に早いものです。しばらくして出向くと解体は終わり、新しいビルの建設が始まっていました。
自然の風景などを描くのとは違った楽しさと、出来はともかく途中で投げ出さずに描き終えた満足感。それに日本の建設力のすごさを知ることもできました。
作品は、名古屋市博物館で10月9日(祝)まで開催している、第31回日本水彩名古屋支部秋季展に出展しています。