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楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号

2023-09-03 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」



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第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」
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 7月以来の「楽器における左利きの世界」です。
 前回は「『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
 と題して、左利きの人の音楽的才能について、調べてみました。

 今回は、再び<左用ピアノ>への第一歩として、
 鍵盤ハーモニカについて勉強してみようと思います。

 <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクトとして
 やっていけたら、と思います。

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 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(1)
-コロナ禍で吹奏楽器は…… -
  『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)から
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 ●『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)

私のまちの図書館で、ふさわしい本を見つけました。

『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)春秋社 2023/4/19


長くなりますが、奥付にある著者紹介文を転載します。


南川朱生(ピアノニマス)Minamikawa Akeo (Pianonymous)

1987年生、東京都在住、元IT企業の銀座OL。
日本を代表する鍵盤ハーモニカ奏者・研究家。
世界にも類を見ない、鍵盤ハーモニカの独奏というスタイルで、
多彩なパフォーマンスを行う。
所属カルテット「Tokyo Melodica Orchestra」は
米国を中心にYouTube動画が37万再生を記録し、
英国の世界的ラジオ番組classic fmに取り上げられる。
研究事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」のCEOとして、
大学をはじめとする各所でアカデミックな講習やセミナーを多数実施し、
コロナ禍で開発したリモート学習教材類は
経済産業省サイトに採択・掲載される。
東京都認定パフォーマー「ヘブンアーティスト」資格保有。
これまでにCDを11作品リリースし、
参加アルバムはiTunesインスト部門第2位を記録。
楽器の発展と改善に向け多方面で精力的に活動している。
趣味は日本酒とテコンドー。


経歴だけでもすごいですが、この本の内容がまたスゴい!
まだ目次を見たぐらいですが、
鍵盤ハーモニカのことがすべてわかる本といってよいかと思います。

出版社の紹介文も一部転載しましょう。


《鍵盤ハーモニカに人生を捧げたプロ奏者による、長年の研究の集大成。
 鍵盤ハーモニカの製造の歴史や教育現場での受容、内部構造の秘密、
 そして〈誕生〉の瞬間など、様々なシーンを豊富な資料とともに巡る。
 楽器愛に満ちた、読んで、見て、楽しい究極の一冊。〔口絵2〕

 誰もが知ってる楽器の、誰も知らなかった世界!
 たったひとりの楽器に取り憑かれた人によって、
 その魅力は膨れ上がる!
 ――トクマルシューゴ(ミュージシャン)》

この本を読みながら、
まずは鍵盤ハーモニカについての知識を補充していこうと思います。

そして、<左(利き)用鍵盤ハーモニカ>の可能性を考えてみる予定です。


 ●序章から――鍵盤ハーモニカって何楽器?

今回はまず「序章」を簡単にみてみましょう。

<鍵盤ハーモニカは何楽器?>とあります。

鍵盤ハーモニカといってもご存じない方もいらっしゃるでしょう。
私のような世代は、使ったことのない人が大半でしょう。
お子さんがいらっしゃる方は、子供が使っていたよ、
ということはあるでしょうけれど。


本書の第一章の冒頭に、
《大人の方に「小学校で鍵盤ハーモニカを吹いたことがありますか?」
 と問うと》
三十代の人は、《大方「あるある? 懐かしいねぇ」》と答え、
六十代の人は、《ないなぁ、娘と息子はやってたけどねぇ》、
四十代から五十代の人は、「ある派」と「ない派」に分かれるそうです。
「ない派」の人に、小学校では何を演奏していたのですか、と問うと、
「ハーモニカ」と「たて笛」だそうです。

商品名でいいますと、
「ピアニカ」や「メロディオン」という名で出ています。


(画像:国産の鍵盤ハーモニカの代表の一つ、YAMAHA(ヤマハ) ピアニカ P-32E)

それなら聞いたことがある、という年配の方もいらっしゃるでしょう。

では、この楽器は「何楽器」に分類されるでしょうか、
というのが最初の話題です。

 《問題:次の楽器は何楽器に属するか答えましょう。》
   ヴァイオリン (  )楽器
   小太鼓    (  )楽器
   トランペット (  )楽器
   フルート   (  )楽器
   鍵盤ハーモニカ(  )楽器

分類条件は、様々ですので、「学校の教科書」で正解とされる回答は、

それぞれ、弦楽器(擦弦楽器)、打楽器、金管楽器、
フルートが引っかけで、金属だけど木管楽器。

で、この鍵盤ハーモニカは? といいますと、

 《ここでは「鍵盤ハーモニカは○○楽器である」
  と片付けてしまうことはせず、
  この楽器の特徴をいくつか洗い出しながら、
  鍵盤ハーモニカの「複数にまたがる定義」、
  通称「ジェネリックな鍵盤ハーモニカの定義(generic melodica)」
を一緒におっていきたいと思います。》

となっています。

「鍵盤ハーモニカ」というぐらいですから、
鍵盤がついているので「鍵盤楽器」という答えも考えられます。

しかし、この楽器の誕生当初は、
鍵盤の代わりにボタンやレバーがついたものもあったそうです。

それでも一応、「ジェネリックな」鍵盤ハーモニカの定義として、
読者がパッと見てピンとくるデザインを優先し、
いったん「鍵盤楽器」としておきましょう、といいます。

次に、この鍵盤を押し下げ、どうすると音が出るかといいますと、
口で息を「吹く」ことで音が出ます。
ハーモニカのように、吸って音を出す場合もあるらしいので、
必ずしも「吹く」とは限らないようですが、
基本的には「吹く」ことで音を出す楽器ということで、
「吹奏楽器」としたい、と著者はいいます。


 ●いかにして教育現場に浸透したか

本書は、「第I部 国内歴史篇」が、鍵盤ハーモニカが教育現場で、
一人一台必携の楽器となるまでの歴史を探っています。

戦後、当初はハーモニカが小学生の楽器として普及したわけですが、
音を出すとき、息を吹いたり吸ったりする発音方法があるなど、
むずかしいということで、徐々に現場から消えてゆくことになりました。

輸入品を参考に、国内メーカーが次々と参入します。

音楽の器楽教育を進めるという一種の「国策」もあり、
閣内メーカーの努力(開発および営業)もあり、
ピアノが弾ける音楽大学卒の先生にも扱えること、
鍵盤を押すことで決まった音が出せる
(実際には、様々な発音の技法があるらしいのですが)ので、
子供にも簡単ということで、
鍵盤ハーモニカが採用されることになった、ということです。


 ●フリーリードを震わせる吹奏楽器

「第II部 内部構造篇」では、
内部の構造、音の出る仕組みを解明します。

<第五章 鍵盤ハーモニカの叫び>によりますと――

結論だけ書きますと、楽器の内部には、それぞれの音に対応する、
フリーリードという金属製の細長い板が鍵盤の数だけ並んでいます。

それぞれの金属板はみな個別の部屋にあり、
息を吹きこみますと楽器内全体に空気がたまります。

鍵盤を押しますと、
押された鍵盤に対応する金属板の部屋のバルブだけが開き、
空気が外へ排出されます。
この空気の流れが、個別の金属板を震わせ、その音が鳴ります。

(私の理解が正しければ)こういう仕組みになっています。


(画像:144-145p 発音メカニズムについて――別冊編集後記を参照)


 ●「ホーナー社製ボタン式メロディカ」はかわいい

「第III部 海外歴史篇」は、ヨーロッパでの開発の歴史です。

一部で、鍵盤ハーモニカは日本が発祥という説があるそうです。
笙のような楽器がその源とされています。

実際は、世界同時発生的に、
色々なものがあちこちで作られてきたようです。
そのヨーロッパでの歴史を解説しています。
いかにも今ある鍵盤ハーモニカらしいものが誕生したのは、
19世紀頃のようです。

詳細は、本書をお読みいただくのが一番ですね。

 ・・・

本書で見てきた鍵盤ハーモニカで、私が気に入ったのは、
p.38やp.44、p.57の「ホーナー社製ボタン式」ですね。
形状も両手を使うところも、かわいいです。



(画像:p.44「ホーナー社製ボタン式メロディカ」、
 p.57上・中 鈴木楽器製ボタン式「メロディオン(ソプラノ)」
 下「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

このボタン式メロディカに「非常によく似た」ルックスの楽器が
日本のみならず世界中で作られた、といいます。

それだけ魅力的なデザインだった、ということのようで、
のちにホーナー社の広告に
「類似品にご注意」という文言が出るようになったそうです。

詳細はこちらのページ(pp.184-188)

「鍵ハモの楽堂――ボタン式メロディカ、クローズアップ!」

両手で演奏するタイプのようで、白鍵に当たるボタンが右手、
黒鍵に当たるボタンが左手で演奏するようになっています。
キーの配列も演奏自体も基本右手が主体ですが、
少しは左手も使うので、
左利きの人もちょっとぐらいは演奏した気になれるかもしれません。

あくまでも私の追求する理想とする形は、左右反転形の左手用です。


 ●<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ

最後に、本書を一読して気になったのが、
「第三章」の<エピローグ>にあった、

コロナ禍で、学校の教育現場では口を直接楽器に触れることや、
飛沫の飛散という、衛生面から使用が制約されている、という点です。

今年の5月以降、規制が解除されてきたものの、現場ではどうなのか、
ちょっと気になります。

さらに、近年は少子化でメーカーの販売数が減っているとか、
今後もかわらず、教育現場で一人一台の楽器として利用されていくのか、
非常に気になります。

コロナ禍でタブレット端末が一人一台携帯されるようになりますと、
画面でキーボードを出して演奏する、
なんて形にならないとも限りません。

そうなると、私の考えていた
<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ、
というプロジェクトが空中分解しかねません。

さて、どうなるのでしょうか。

 ・・・

もちろん、電子キーボードの方が断然開発しやすいとは思うのです。
しかし、現状において、物としての鍵盤ハーモニカの左用を実現して、
ピアノの左用へとつなげてこそ、意義があるという気がします。

なんとかメーカーさんにお願いして実現させたいものです。

要はお金の問題だという意見もあるのです。
でもそれをいいますと左用のお道具の類いの問題は
みなそれに集約してしまいます。

そうではなくて、あくまでも多様性の実現という観点から、
左利き用の楽器を他の左利き用のグッズの類いと同じように、
普及させていきたいと思い、この問題を考えていきたいのです。

 ・・・

次回は、過去のメルマガで、この鍵盤ハーモニカをどう扱ってきたのか、
その辺を振り返ってみたいと思います。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(15)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」と題して、今回も全紹介です。

今や小学校の教育現場で一般化している楽器、鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。

私自身は、このピアノへつながる第一歩の楽器とされる鍵盤ハーモニカで、左用を採用させて、次にピアノへと進めてゆこうというのが、一つの左用楽器普及への道だと考えているのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号
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