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辻邦生・北杜夫『完全版 若き日と文学と』―『星の王子さま』をめぐって

2019-12-24 | 本・読書
今年の忘れ物です。
書いたのに、アップするのを忘れていたもの。

辻邦生・北杜夫、そしてトーマス・マンサン=テグジュペリのファンの人は必読の一書です。

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9月27日、消費税増税前、久しぶりに本屋をのぞいてみました。
本も増税の対象になっているからです。
もし何か気になる本があれば、上がる前に買っておきたいですからね。

最近は本屋さんもめっきりと減って、毎日のように立寄るという機会も少なくなりました。

あれこれ棚を見ていると、棚差しの一冊の本が目に飛び込んできた。

それがこれ

辻 邦生・北 杜夫『完全版 若き日と文学と』中公文庫 2019/7/23


やじきた(弥次喜多)ならぬ、つじきた(辻北)の対談集です。

このお二人は、旧制松本高校の同級生で、長年の親友であり、文学仲間でもありました。
その友情の証ともいうべきものとしては、↓のような本も出ています。

『若き日の友情―辻邦生・北杜夫往復書簡』辻 邦生・北 杜夫 新潮文庫 2012/10/29

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私が日本で一番好きな作家が北杜夫さんです。
(一番好きだといいながら、全著作を読んだわけでもなく、もちろん持っているわけでもありません。
 それでも一番好きな作家であることに変わりはありません。
 それじゃあダメだ、といわれるかもしれませんけれど……。)

だから、すぐに手に取りました。

帯に「没後20年」とありますので、これは辻邦生さんの「没後20年」を記念した新刊ということになります。
でも、私にとっては、久方ぶりの「北さんの新刊」です!

北さんも没後、いくつかの本があれやこれやと復刊・再刊され、単行本未収録の作品が単行本となったり、再編集ものが出たりしました。
(今も出ています。たとえば―『どくとるマンボウ青春の山』ヤマケイ文庫 2019/9/14)


私もポツポツと何冊か新規に、あるいは買い直しをしたものでした。
(置き場所が限られていて、何冊かを残して、押し出し整理法により、処分したものがありましたので。)

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1970年に出版された『若き日と文学と』の増補・完全版だそうです。
文庫版は1974年に出ているそうです。

私がちょうど北さんを愛読していた頃でもあり、記憶にはあります。

買っていたかも、と思いつつも目次をのぞいてみました。

最初に目に飛び込んできたのが、「『星の王子さま』とぼくたち」という文章です。
早速そのページを見ると、『星の王子さま』とサン=テグジュペリについて語り合っています。

北さんが『星の王子さま』が好きなことは知っていました。
辻さんも女子学生に人気があるので大学の授業に使ったといい、二人のこの本を巡る文学論になってゆきます。

 ・・・

私も『トム・ソーヤーの冒険』と並んで『星の王子さま』が好きで、サン=テグジュペリが好きだったので、この対談を収めた本書は「絶対の買い」でした。

(『トム・ソーヤー』でも、著者は「まえがき」で子供だけでなく大人にも読んでもらいたい、昔自分がどんな子供でどんなふうに考えどう感じたか、どんな遊びを楽しんだかを思い出してもらいたい、という意味のことを書いています。
 一方、『王子さま』の方は、誰もはじめは子供だったが、それを忘れずにいる人は少ない、と書き、「子どもだったころのレオン・ウェルトに」と献辞を書き換えています。
 どちらの本も、子供向けに書かれていますが、本当は子供の心を持った大人に向けて書かれたものなのかもしれません。)

家に帰って、調べてみましたところ、若い頃には買っていませんでした。
多分辻さんのお話は難しいと感じていたのでしょう。

今回も、「この章があったから買った」と言っても過言ではありません。

私の大好きな作家が、私の大好きな作品と大好きな作家について思い入れたっぷりに語っているのですから、これは最高です!



*参照:メルマガ『レフティやすおの楽しい読書』

2008(平成20)年2月号(No.2)-080229-
大人も楽しい『トム・ソーヤーの冒険』

2008(平成20)年4月号(No.4)-080430-
星になった少年『星の王子さま』

 ・・・

それぞれの『星の王子さま』との出会いから始まり、その印象と内容について語り合います。

たとえば、「飼いならす」という言葉について、原語で読んでいる辻さんがフランス語ではこうで、こういう意味を含んでいるから、どうだこうだ、といったように……。

なかなか深い対話です。
感性で読む北さんに対して、理屈で跡づける理性派文学者の辻さんという印象を受けました。

最後に、北さんは、『星の王子さま』で、ラスト・シーンに《イカれちゃったんですよ》と語っておられます。
辻さんも《うん、いいね。実にいい》と同感されています。

確かに美しい、でも淋しいシーンです。



ここだけに限りません。

そして、(あれやこれや背景となる事柄について深読みしなくても、ストーリーそのものを)素直に読んでも、とてもいいお話だと思っています。

 ・・・

久しぶりにうれしい本との出会いでした。

ネットでは教えてくれませんでした。
普段から色んな本を「オススメ」をしてくれるのに、肝心なところでは役に立たないものです。

やっぱり本屋さんが近くにないと、困りますね。

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
辻邦生・北杜夫『完全版 若き日と文学と』―『星の王子さま』をめぐって
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