「自分の運命というものを積極的に受けとめ、知らず識らずのうちに前向きに生かしてきた。
家が貧しかったから丁稚奉公に出されたけれど、そのことを決して不幸とは思わなかった。そのおかげで、商人としての躾を素直に受けることができたし、人情の機微も知ることができた。生来身体が弱かったけれど、身体を大事にしたし、人に頼んで仕事をしてもらうことも覚えた。学問がなかったので、常に誰にでも謙虚に教えを乞うてきた、、、。こうした結果、今日のぼくがあるとも考えられるのです。
"人事を尽くして天命を待つ"ということばがありますが、お互いの生き方次第で、自分に与えられた運命をより生かし活用する余地が残されている。
その余地というのは、ぼくなりに考えてみると、10%から20%くらいかと思うのですが、その中での人事の尽くし方いかんで、あとの80%なり90%の運命がどれだけ光彩を放つことになるか決まってくるのではないかと思います。
そう考えれば、大切なことは、やはりどのような境遇にいようとも、精いっぱい人事を尽くすことではないでしょうか。」
引用元 人生談義 (PHP文庫) 松下 幸之助 著 松下幸之助