ビストロ レアール

石川県小松市にある「ビストロ レアール」のシェフがつづるあんなことこんなこと

はじめてのノエル

2005年11月18日 | フランスこぼれ話
今頃のシャンゼリゼ通りは

何万個という電球で飾られた街路樹で

華やかなことでしょう。

この時期のパリは何処を歩いても

ノエル一色

思い思いのデコレーションで飾られた

ウインドウはノエルの気分を一層盛り上げています


私がフランスで初めて迎えたノエルは

ノルマンディーの片田舎にある

ミシュランガイドで一つ星のレストラン

「マノアー ダスティン」でした

フランス人にとって とても大切な行事の一つ

この日はいろいろな地方に散っていた
家族親族がいっせいに故郷に集まり
聖夜を楽しむのです
飲んで 歌って プレゼントの交換をしたり
日本のお正月気分なのです

ノエル当日は
昼のサーヴィスの前に食べる賄が
お客様に提供するのと同じメニューで
なんとシャンパンつき!
フォアグラのテリーヌから始まって
デザートまでみんなニコニコで食べました

夜のサーヴィスが終わりに近ずくと
キュイジニエ達はそわそわしはじめ
自分のセクションの料理を出し終えると
パ パ パッーと片付けて
残っているキュイジニエ達に
握手をしながら

「ジュワイヨー ノエル!」(良いクリスマスを)
「メルシー トワ オーシー」(君にも)
と声を掛け合いながら
レストランをあとに
家路を急ぎ帰って行きました

その時私は パティシェのティリーのもとで
仕事をしていたので

最後まで残っているセクションだったため
二人で厨房に残っておりました
終わりに近くになって
ティリーが

ティリー:マサ キョウハ アガッテ イイゾ アトハ オレガ ダスカラ!

私:メルシー ジュワイヨー ノエル ティリー

ティリー:メルシー トワ オシー

と言っていつもの様に
自分の部屋に戻り
いつものように ラジオをつけ
着替えて何度も読んだ単行本を開いていると

いつもはレストランの営業が終わっても
敷地内にはひとけを感じるのですが
この日は妙に静まり返って
フランスと言う地の片田舎で
日本人が一人とりのこされたような
センチメンタルな気分になっていました


その時
部屋をノックして最後のお客様にデザートを出し終え
着替えを終え家に帰る姿のティリーが

ティリー:マサ コンヤ ダレカニ ショウタイサレテイルノカ?

私:ノン ノン イツモノヨウニ ヒトリダヨ

ティリー:ソレジャァ オレンチ コナイカ?

私:ウイ ウイ イク イク(なーいたカラスがもう笑ったー)

そしてティリーの車に飛び乗り
ティリーのアパートへ

アパートにはティリーの親兄弟親戚子供と
奥さんの方の兄弟姉妹とごったがえし
以前に人物紹介でティリーの事を書きましたが
奥さんは南の方の黒人の人なので兄弟姉妹も黒人
そこえアジアからきた日本人の私で
なんかすごいことになっておりました

テーブルにはカクテル シャンパーニュ ワイン パスティス キャルヴァドス
フルーツ発泡酒など所狭しと乗り

年に一度ぐらいのハレの料理
日本のおせち料理のようなここぞとばかりに
フォアグラやティリーが狩猟で獲った
鴨やハト、ウサギ料理が花を添え

飲めや

食えや 

歌えや

踊れや

話せや

笑えや

酔えや

潰れや

さて何回「や」が付いたでしょうか?        ”そんなのどうでもいい”

すみません

めちゃくちゃ楽しく過ごし
朝方になってみんな雑魚寝
足の踏み場もなく

ティリーがマサ俺達の寝る所が無いから
俺とお前はここで寝るぞ と 行ったところは
アパートの入り口から部屋にはいるまでの
ほんの少しのスペース
2時間ほど寝てティリーが

ティリー:マサ仕事に行くぞ

私:・・ウーィー

そしてレストランについてみると
みんな千鳥足で赤ら顔で
なんとか昼のサーヴィスを終え

私も自分の部屋に帰り
バタンキュー

夜のサーヴィスが始まって8時過ぎ


ティリー:マサ マサー

気が付くと夜のサーヴィスが始まっても来ない私を起こしに
ティリーが部屋の入り口に立っているじゃぁありませんか
あわてて

私:”ごめん  い  い  いま 行くから”!

と起き上がろうとする私に

ティリー:マサ 今日は 休んでいいぞ 俺からのクリスマスプレゼントだ

と ティリーはウインクをしながらレストランに戻って行きました

こんないいノエルを過ごせたのは

いつも頑張っている私に

サンタさんがくれたごほうびだったのでしょう