Lespedeza Museum of Photography レスペデーザ写真美術館

カメラマンな管理人のおたく趣味の雑記と二次創作&コスプレ写真のブログです。Lespedeza(萩)の花言葉は柔軟な精神。

ハイスクール・フリート-The Journey Home-

2016年07月02日 23時23分00秒 | 二次創作小説

こちらは「ハイスクール・フリート(はいふり)」の二次創作小説になります。二次創作が苦手な方はブラウザバックでお願い致します。


「沈む!艦(ふね)が沈むぞ!」

誰かが叫ぶ声が響く。日が傾きかけた横須賀港で今、一隻の艦の命が尽きようとしていた。

横須賀女子海洋学校所属の陽炎型航洋艦「晴風」。

航海実習の為に新入生を乗せて出港した矢先、集合先の西之島新島で遺伝子操作実験中に偶然生まれたウィルス「RATt(全体主義の疾患)」の漏洩事件が発生。

紆余曲折の末、晴風とその乗組員、そしてドイツの航洋艦アドミラル・シュペーなどを含めた連合艦隊の尽力でウィルスの影響で暴走状態にあった航洋艦「武蔵」の阻止に成功。

しかし事件がようやく終息し横須賀に一ヶ月ぶりに帰港した矢先、武蔵との戦闘での損傷が元で沈没し始めた晴風。

直前に下船し晴風の最期を岸壁で見守る晴風の乗組員達。ある者は呆然と、そしてまたある者は涙をこらえつつ自分たちとともに戦ってくれた艦の最期の姿を眺めていた。入試の際の成績不十分でこの年の横須賀女子海洋学校の新入生としては落ちこぼれとされた彼女たちも波乱含みの航海の間に逞しく成長していた。

その中の一人、晴風艦長の岬明乃は涙を目に浮かべながら事件解決に尽力した晴風への感謝の笑みと敬礼で自分が乗っていた艦を見送る。そしてついに晴風はその身をすべて横須賀の海に沈めていった。

「艦長...」

副長の宗谷ましろが晴風の沈んだ海をずっと見続けてる艦長を気遣いそっと声を掛ける。苦難の旅を共にした艦が沈んだことは彼女にとっても大変なショックで、泣きそうになる気持ちを必死にこらえるましろ。

「シロちゃん、私、今まで負け続けだった」

そんなましろを逆に気遣い、優しく言葉を投げかける明乃。

「でも、今度は私の勝ち」

「え?」

思いがけない明乃の言葉に驚くましろ。

「だってほら見て」

振り向いた明乃が見つめる先にはましろ達晴風の乗組員や他の航洋艦の乗組員達。

「晴風のみんな、モカちゃん達と一緒に横須賀に戻ってこれた。それが私の、ううん私達の勝利だから」

「みんなと一緒ならどんな困難でも乗り越えられる。今はそう思えるの」

涙で目を潤ませながら満面の笑みで応える明乃。

「ええ」

明乃の言葉に感慨深げに応えるましろ。

「♪~」

晴風の乗組員達を見つめながら艦長は鼻歌を歌い出す。ましろを含めブルーマーメイドに憧れる者なら誰もが知るあの歌。武蔵との決戦の最中にデジタルミュージックをかけていたのも彼女だった。

「♪♪♪」

そんな明乃につられてましろも歌を口ずさむ。そんな二人を見て他の晴風乗組員達も歌を歌い始めた。

「懐かしいわ、あの歌」

「あなたもこの歌好きだったわね」

ましろの姉にして海の安全を守る治安組織「ブルーマーメイド」の統括官である宗谷真霜の言葉に二人の母で横須賀女子海洋学校の校長でもある宗谷真雪が応える。

妹(娘)が仲間と無事に横須賀に戻ってきててくれた事に二人共内心ましろをグッと抱きしめて喜びたい気持ちを立場のある身としてぐっと堪えていたのだが、晴風の乗組員達の歌声に感慨深いものを感じていたのだった

「そうだ、こうしてはいられないわ」

「どうしたの、真霜?」

「サルベージ船の手配です、お母さ、いえ宗谷校長。晴風の今回の事件に関する一連の記録は回収しないといけませんし、ここに沈んだままでは港湾施設の運用に支障が出ますから。それに…」

「それに?」

「彼女たちと一緒に戦ってくれたあの艦(ふね)を魚礁にするのはあまりにも不憫すぎます」

「そうね」

真霜の言葉に答えながら晴風の乗組員達を見つめる宗谷校長。

<上に晴風修復の予算、直談判しないと>

事件解決に尽力してくれた晴風乗組員達に自分の立場で出来るだけの事をしてあげようと密かに誓う真雪。実際のところ真霜も晴風のサルベージに関してはブルーマーメイドの統括官ではなくましろの姉として末の妹に出来ることをしてあげたいという思いが強かったのである。

そして晴風乗組員たちの歌に惹かれて他の航洋艦の乗組員たちも集まってきた。

「ミケちゃん、私も一緒に唄っていいかな?」

そう聞いてきたのはウィルスの蔓延した武蔵艦内で非感染者の生徒たちと共に耐えぬいた艦長にして岬明乃の幼馴染、知名ともか。

「私に資格があるかどうか分からないけどよかったらご一緒させて貰える?」

事件発生直後にウィルスに感染し、その影響で晴風に反乱の汚名を着せてしまった少し気まずさから遠慮がちに尋ねる横須賀女子海洋学校の教官、古庄薫。

「私もその歌が好きだ!一緒に歌わせてくれ!」

はりきってやってきたのはウィルス事件のさなか一時的に晴風に身を寄せていたシュペー副長のヴィルヘルミーナ。

「みんな大歓迎だよ!」

元気いっぱいに応える岬艦長。やがて武蔵や晴風救援に駆けつけた他の航洋艦の乗組員たち、ドイツ艦の乗組員も加わり大合唱に。

夕焼けの横須賀港に喜びの歌が響き渡っていた。

-END-


 一時はどんな展開になるかと気になって仕方なかった「ハイスクール・フリート」。先日無事に最終回を迎えたのですが最後の最後に主人公たちの乗っていた航洋艦「晴風」が横須賀港で沈没する(全員が下船した直後に沈んでしまいました)という事態に。

ところが沈没する間際の艦尾が大きく浮き上がった晴風の姿をみてあるシーンを思い出したのです。2004年に発売されたPS2ソフト

エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー

その中で登場し、主人公たちが身を寄せることとなった空母「ケストレル」。ゲームの最終盤で敵潜水艦のミサイル攻撃を受けて撃沈されてしまう(この際、主人公たちを何が何でも出撃させようというケストレル艦長ら乗組員の熱いドラマが展開します)のですが、その時のケストレルの最期の姿と晴風の姿がダブって見えたのです。

今回の小説は実際のところエースコンバット5のケストレル沈没の場面のオマージュなのです。エスコンもはいふりも共に泣けたシーンだったので、両作が好きだという想いを込めて書きました。(判る人にしか判らないネタなのは百も承知)

ところで主人公たちの乗っていた艦が沈んだとはいえ場所が横須賀港だったのでほぼ間違いなく引き揚げは可能と思われます。となると今回沈んだのは2期などさらなる展開に向けての布石じゃないかという強い予感があったりします。

7月からローソンでハイスクール・フリートキャンペーンが本格的に実施などまだまだ目が離せないはいふりです。

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ガールズ&パンツァー 新任教官、着任です!その2

2015年11月17日 20時50分10秒 | 二次創作小説

当作品はアニメ「ガールズ&パンツァー」の二次創作ノベルになります。続きものなので最初に『ガールズ&パンツァー  新任教官、着任です!その1』をお読み下さる事をお勧めします。


 廃校の危機にあった大洗女子学園が第63回戦車道全国高校生大会で奇跡の優勝を果たし危機を脱した後、大洗は戦車道有力校として全国に名を馳せることになる。

大洗を救った立役者、転校生の西住みほの戦車道は彼女の実家である西住流と大きく異なり、例え弱小戦車でも仲間との連携で苦難を乗り越えた、また奇想天外な戦法を即興で編み出すという孫子の兵法でいうところの

兵は詭道なり

をそのまま実践したようなものだった。

彼女の戦車道、「裏西住家」あるいは「大洗流」と呼ばれた独自の戦車道は全国の戦車道を教える学校で歓迎されたが一方の大洗女子学園の栄光は長くは続かなかった。

戦車道で有名になり生徒数が増加に転向し戦車道関連の補助金で学校の財政が潤うと金に任せて強力な戦車を揃え、力で相手をねじ伏せるという戦法を主眼に置くようになったのだ。

学園艦運営の制度改革に伴い、生徒会長以外の人間が学園艦の最高責任者になる事が可能になり、大洗女子学園に日本戦車道連盟の関係者が就任した頃から傾向はさらに悪化し、全国大会で好成績を残す事も減り、澤が戦車道の教官として招聘される前年には質で劣る知波単学園との戦車道全国高校生大会一回戦でフラッグ車が強襲を受けて惨敗するという事態に。

そしていつの頃からか大洗女子学園を含む戦車道関連の補助金の不正流用の噂がまことしやかに囁かれるようになっていた。

大洗女子学園の栄光はこのまま永遠に失われるかと思われ初めた頃、転機は突然訪れることに。卒業後、大学生戦車道で活躍し戦車道ジャーナリストとなった秋山優花里が母校である大洗女子学園と優花里と親交のあったケイの出身校であるサンダース大学付属高校の補助金の不正流用の証拠を掴んだのである。

しかし彼女はそれを公表する事ができなかった。問題が表面化すれば大洗女子学園もサンダースも無事では済まず、また一連の不正流用に戦車道連盟の幹部もかんでいた事から最悪の場合、戦車道そのものが槍玉に上がる可能性があったのだ。

ケイに相談する事も出来ず思い悩む優花里の元に角谷杏から連絡があったのはちょうどその頃だった。

大洗女子学園の戦車道の凋落を嘆いた多数の生徒、保護者が大洗中興の祖とされていた杏を学園の責任者に据えようと彼女に相談を持ち掛けたのがそもそもの始まりだった。

大洗女子学園の責任者となりそれまでの大洗流の戦車道とは相反する力による戦車道を是としていた戦車道連盟関係者を追い出せないか画策したのだった。

しかし、大きな権力を持つ人物を生徒達の要望とはいえ追放するのは難しく、杏は一計を案じる事に。

噂になっている戦車道関連の補助金不正流用の証拠を掴んで禅譲させよう

というのである。これには最初、杏と同様に相談を持ちかけられた元生徒会広報の河嶋桃が反対したが、元生徒会副会長の小山柚子が賛成した為に計画が実行に移されることに。

禅譲といえば聞こえはいいが実際には脅迫以外のなにものでもなかったこの計画。杏自身、大洗の戦車道の凋落を黙って見ている事が出来ず状況を変える為には手段を選ばないという決意からジャーナリストの秋山優花里に証拠を掴んで欲しいと依頼をしたのである。杏の真意を聞いた優花里は

渡りに船

とばかりに不正流用の証拠を杏に差し出す事に。

詳細を知った杏らはこれは自分たちだけの問題ではないとサンダースOBのケイと戦車道連盟にコネもある元黒森峰女学園戦車道チームリーダーの西住まほ(大洗女子学園を救った西住みほの実姉)に詳細を伝え合議。

社会人戦車道で活躍し、在校生から人気のあるケイをサンダースの責任者に、戦車道連盟のお目付け役として戦車道西住流の家元でもあるまほを、そして大洗女子学園の責任者に杏を就任させる事を目標として当事者たちと話し合いを持つことに。

危険な賭けではあったが結果、不正流用を行っていた連中が全面降伏し大洗女子学園と同様に戦車道連盟から関係者が派遣されていたサンダース校の責任者は体調不良に伴う療養を名目にその座を追われ、不正流用に関わっていた戦車道連盟の幹部も辞任する事に。(余談だが、証拠をつきつけられてもなお、禅譲を拒んだ戦車道連盟の幹部にまほが「イエスかノーか」と今まで見たこともない剣幕で迫ったのは最高だったと杏は澤に後日語っている)

後釜に杏、ケイ、まほ3人が就いたというのが戦車道を巡る大洗女子学園、サンダース、戦車道連盟の無血クーデターの実態だった。杏らが大洗女子学園を訪れたのは後処理について話し合いを持つためだった。

「…というわけ」

杏から事のあらましを聞いた怒りと悔しさで身の震える思いだった。知らないうちに母校がめちゃくちゃにされていた事が許せなかったのだ。

そしてその不正を正す為に戦ってくれた先輩達への言いようのない感謝の気持ちも澤の心に溢れていた。

「今はオッドボール(ケイは第63回戦車道全国高校生大会の時にサンダースに潜入調査した際にとっさに「オッドボール三等軍曹」と名乗った優花里の事を今もそう呼んでいる)とユズが書類関係の後始末の真っ最中。うちの学校もお金が余計にあった分、メチャクチャされてもう大変だったんだから」

ケイが続けた。

「危ういところだったが、結果として戦車道連盟の獅子身中の虫を退治出来たのは幸運だった。それに…」

まほが続ける。

「みほが哀しい顔をするのを見ないで済んだ」

その言葉に澤がほっこりする。

(西住隊長のお姉さん、本当優しい人なんだなぁ)

みほは現在戦車道日本代表として世界大会に参加しており日本に居ない。

姉のまほにしてみれば母校と戦車道がスキャンダルに晒される事で妹のみほを哀しませたくなかったし、悲しむ姿を見たくなかったのである。

「でも、澤ちゃん、本当にこんな話を聞かせて良かったの?」

杏が改めて尋ねた。

「全然大丈夫です、確かに驚きましたけど胸のつかえがとれましたし、大洗弱体化の原因の1つが取り除かれた以上私もやれる事が増えますから」

澤はにこやかに答えた。

この後、澤も同席する中、今回の騒動の後処理について会議がなされ、戦車道連盟の助成金関連についてはより一層透明化の推進を大洗女子学園とサンダース校が共同提案し、まほがそれを後押しする事で合意となった。

「なぁ、澤。今更聞くことでもないかも知れないがお前から見て今の大洗の戦車道はどう思う?」

会議のあと、桃が話を切り出した。

「正直、火力偏重で柔軟性に欠けてますね」

澤はきっぱり答えた。

今の大洗女子学園の戦車はM26パーシングやpfw.KW-2 754(r)(旧ソ連のKV-2のドイツ軍鹵獲仕様)など大火力の重戦車が主力でIV号やヘッツァーなどかつて西住みほや澤達が乗っていた戦車は予備車両あるいは記念品として静態保存の状態だったのだ。

「西住隊長の戦車道は戦車運用の柔軟さと何より仲間との連携あってのものです。今の大洗には柔軟さが無さ過ぎます」

大洗女子学園の戦車道の弱点をズバリと言い当てる澤。

「流石はミホの愛弟子、大洗流戦車道の第一人者ね、マホもそう思うでしょ?」

「ま、まぁな」

妹の戦車道とその戦車道の第一人者と目される澤をケイに褒められ顔を赤らめるまほ。

澤が大洗に招聘された一番の理由は西住みほの戦車道の後継者と目されていたからだった。 戦車道の教官というのであれば他の自衛隊員でも良かったのだが、大洗流の戦車道を実践出来る人物は澤が最適と杏が判断した事が大きかった。

万が一無血クーデターの件が澤の知るところとなっても彼女なら秘密を守ってくれるという思いも杏にはあったが、まさか自分から知りたがるとは杏にも想定外だったが。

「澤二尉、大洗の立て直し、どうするつもりだ?」

まほが尋ねた。

「とりあえずは戦車の再編ですね。柔軟性のある運用が出来る編成にしないと。必要なら不正流用の穴埋めに売ってもいいですし」

その言葉に桃が反応する。

「おい、いくらなんでも売却は」

「先輩や西住隊長達と戦った時はあれだけ貧弱な編成で黒森峰に勝ったんですよ?戦車の強さだけが戦車道じゃないんです」

そう澤に言われ、あまりの正論に黙る桃。

「だが、問題は生徒のやる気だな。みほにそれとなく聞いた事があるが去年の大会で知波単に惨敗して相当士気が下がったそうだが」

「それなら大丈夫」

まほの疑問に杏が答えた。

「というと?」

「『大洗女子学園を廃校から救った英雄が新しい教官として着任する』って戦車道を専攻する生徒にはそれとなく伝えてあるから。なんかみんなそれ聞いて盛り上がってるみたいだよぉ」

それを聞いた澤がさらに顔を赤らめた。

「ちょ、角谷先輩、恥ずかしいじゃないですか」

「いいじゃない、事実なんだし」

杏の言葉にさらに顔を真っ赤にする澤。

「澤二尉、妹の愛した大洗女子学園をどうか頼んだぞ」

まほの言葉に澤は静かに頷いた。

「こうなったら私達も負けてられないわね」

そんなやり取りを眺めていたケイが口を開いた。

「サンダースもなんだかんだで弱小校扱いになっちゃうレベルになってるし監督となった以上頑張らないと」

「お互い、頑張りましょう!」

澤がそれに答えた。その答えを聞いてケイが右手を差し出す。

「?」

「お互いの健闘を祈ってのHandshake!」

「はい!」

澤とケイ、2人がガッチリ握手をし、杏と桃とまほがその様子を暖かく見守った。 その時桃の携帯が鳴り出した。

「はい、河嶋です。そうか、分かった」

「かーしまー誰から電話?」

「柚子からです。問題の書類や資金の細工は終わったとの事です。柚子はこれから戻るとの事です」

「秋山ちゃんは?」

「別の取材が入ったとの事で学園には寄れないと。澤にはよろしくと伝えておいて欲しいとの事です」

「うーん、秋山ちゃんいないの残念だけど、澤ちゃんの着任祝いにパッと繰り出そうか?」

「そんな、角谷先輩、別にそこまでして貰わなくても大丈夫ですよ」

「いーからいーから。大洗にヴィンテージクラブむらいってオシャレなお店あるんだ。かーしまー、柚子に着任祝いをむらいさんでやるって伝えて」

「分かりました。柚子、学校には向かわず大洗町の方に行ってくれないか、店は…え?聞こえてた?あと桃ちゃんと呼ぶなとあれほど」

電話越しに桃ちゃんと柚子に呼ばれ、またしても顔を赤らめる桃。

「他の2人はこのまま帰る?」

「アズサの着任祝い、付き合わないわけないでしょ」

とケイが答える。

「今日は夕方から予定がなくてな」

と、まほの答えも同様だった。

「それじゃ大洗町にlet's go!」

「「「「おー!!!!!」」」」

この晩、新任教官の澤と杏ら大洗女子学園の新責任者とケイとまほは大洗で大いに盛り上がったのだった。

この年、澤の指導の元で大洗女子学園が戦車道全国高校生大会で数年振りの準優勝を果たしたのはまた別のお話。


まもなく劇場版が公開予定の「ガールズ&パンツァー」。

前にふと

大洗女子学園でも将来有望と思える生徒筆頭の澤梓を主人公にお話を読みたい

と思ったもののその手のモノが見つけられず

読みたいものがなければ自分で書こう

という結論に至り書いた二次創作だったりします。

目指したのは

1.澤が自衛官になって大洗女子学園に着任する
2.澤の着任までに大洗で一波乱あるシリアス仕立て

で自分でも久方ぶりにシリアスものを書いた感じです。

拙い二次創作ですが、皆さんに少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

『ガールズ&パンツァー』オーケストラ・コンサート~Herbst Musikfest 2015~CD
東京フィルハーモニー管弦楽団,栗田博文
ランティス
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ガールズ&パンツァー 新任教官、着任です!その1

2015年11月16日 21時33分20秒 | 二次創作小説

こちらはアニメ「ガールズ&パンツァー」の二次創作ノベルになります。苦手な方はブラウザバック推奨です。


 

とある日の大荒女子学園の学園艦。いつもと変わらない学園に来客が。戦車を使った武道で子女の嗜みである「戦車道」が盛んな大洗においても珍しいモノが来たのだ。

18式MCV改

かつて「機動戦闘車」として開発されていた陸上自衛隊の装甲戦闘車両の改良型で

・主砲を120mm滑腔砲に換装
・RWS(リモートウェポンシステム)を新たに搭載

と配備から数年を経て本州防衛の要として活躍している車両だ。

そして学校の駐車場に停車した18式から降り立った陸上自衛隊の制服を着た一人の女性。かつて大洗女子学園一年生としてまったくの素人ながら戦車道を始め、学園の初優勝をもたらし廃校の危機を救ったウサギさんチームのリーダー、澤梓である。

彼女は当時教官だった自衛隊員の蝶野亜美に触発された事や戦車道を続ける為に防衛大学校に入る事を決意。

自衛隊に入隊後、オリンピック戦車道部門で日本初の銀メダルを獲得するなど輝かしい実績を残していた。

「懐かしいなぁここ(大洗)も」

学園の風景を眺めて感慨に浸る澤。彼女が大洗にやってきたのはかつて学び戦車道の楽しさを知ったこの学園で新たに戦車道の教官を務める為だった。

出迎えの生徒に案内され、一室に案内された澤。

「失礼します。澤梓二等陸尉、大洗女子学園戦車道教官の任を拝命し本日着任しました」

「ようこそ、澤陸尉」

そう返す女性の声は澤の聞き覚えのある声だったが逆光で顔がよく見えない。

「もしよければ」

そう言いながら歩み寄る女性

「昔のように『澤』と呼んでもいいか?」

「か、河嶋先輩!」

澤を出迎えたのはかつて大洗女子学園で広報を担当し、大洗中興の祖と讃えられた角谷杏の右腕と言われた河嶋桃その人だった。

女性用スーツを着込み、長い後ろ髪を束ね片眼鏡を外している事を除けば昔とさほど変わらない姿の桃。

突然の再会に喜び思わず先輩を抱きしめる澤。

「お、おい恥ずかしいだろ」

「だってまさか河嶋先輩もいるなんて思わなくて」

じゃれ合う2人。だが澤の顔が急に真面目になる

「河嶋先輩、例の噂、本当なんですか?」

そっと桃の耳元で囁く澤。それを聞いて澤の両肩を持って引き離し、後輩の顔を真剣な眼差しで見つめる桃。

「一体何の話だ?」

「今回、角谷先輩が新たにこの大洗女子学園の責任者になった経緯です」

「聞くな」

そういう桃の目は真剣そのものだった。

「いえ、聞かせて下さい。この学園で何があったか本当の事を知りたいんです」

語気を強める澤。彼女を大洗に招聘したのはかつての大洗女子学園の生徒会長、角谷杏。大洗女子学園の前の責任者が体調不良を理由に辞職し、その後釜に杏が就いたのだが、前任者の辞任には以前から言われていた助成金の不正流用が関わっているのでは?と密かに囁かれていたのだった。

「何を吹きこまれたか知らんが、今の澤は部外者だ、何かあったとしても知る必要はないだろ」

「私、そんなに信用ありませんか?私はこの大洗女子学園の卒業生です、それにこれからこの大洗で戦車道の教官をするとなった以上部外者じゃありません!」

澤の強い言葉にたじろぐ桃。そんな時学園の上空にターボシャフト機の爆音が響いた。

澤と桃が外を見ると尾翼にサンダース大学付属高校の校章が描かれたV-22オスプレイの姿が。学校の敷地外れの特設飛行場に着陸しようとヘリモードに転換しつつゆっくり降下していく。

「あれは?」

「多分、会長が戻られたんだろう」

「会長が?」

「予定より少し早かったな。澤、今から会長達を出迎えに行くがお前も来るか?話の続きもしたい」

「はい」

桃がハンドルを握り一路飛行場へと向かうsd.kfz251の車内。話を切り出したのは桃だった。

「澤、何があったか知りたいという気持ちは偽りないのか?」

「はい」

「オリンピック銀メダリストの肩書に傷がつくかも知れないとしても?」

「構いません」

「…判った。覚悟があるというならこの大洗で何があったかは会長から直に聞くといい」

「はい!」

飛行場には既にオスプレイが着陸していた。澤も陸自配備のこのティルトローター機に何度も乗った事があったが相変わらずのデカさとなにより民間でこの金食い虫を運用できるサンダースの財力にため息が出た。

そのオスプレイから降り立つ人影が、1人は髪をサイドテールにした角谷杏。

もう1人はサングラスに羽織ったシャツを胸元で縛り、ショートジーンズにブーツという派手な衣装のサンダースの元戦車道リーダーのケイ、彼女は先日サンダース高校の監督になった事がニュースになったばかりだった。それにもう1人

『あれは確か西住隊長の・・・』

澤が尊敬する西住みほの姉、西住まほである。若くして日本戦車道連盟の幹部兼指導教官になったとニュースになったのを澤も覚えていた。

大洗女子学園に戦車道に関わる著名人が同時に3人(澤も入れれば4人)集まったのである。

「会長、お迎えに上がりました」

桃がかしこまる。

「やだなぁ桃ちゃん、そんなにかしこまらなくてもいいのに。あ!澤ちゃんもう来たんだ」

桃の後ろに控えた澤に気付き杏が手を振る。

「お久しぶりです、角谷先輩」

それに敬礼を返す澤。

「アズサ、お久しぶり!」

ケイがにこやかに挨拶をする

「お久しぶりですケイさん」

まほはあえて言葉を発さず敬礼で挨拶をし、澤もそれに敬礼で答えた。

「会長、澤が例の件を具体的に知りたいと切望してまして、お話されますか?」

その桃の言葉に杏の目がいつになく真剣になる

「澤ちゃん、本当にいいの?」

「私は一向に構いません!」

澤の強い眼差しと言葉に彼女の覚悟を悟る杏。

「ここで長話もなんだからさ、校舎に戻ろうか」

軽い口調で杏が言った。


ガールズ&パンツァー  新任教官、着任です!その2に続きます。

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宇宙戦艦ヤマト2199星巡る方舟 -Debriefing-

2014年12月11日 20時00分00秒 | 二次創作小説

宇宙戦艦ヤマト2199の二次創作小説です。

このお話には「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」のネタバレとノーマルカップリング要素を含んでます。

閲覧はくれぐれもご注意下さい。




「お客さん、こんなところで降ろしていいんですか?」

タクシーの運転手が怪訝そうに尋ねる。

「いいのよ、ここに用があるんだから」

そう言って若い女性はタクシーを降りた。ガミラス軍の軍服をまとい、胸には授与されたばかりの勲章が輝いていた。

彼女の名はネレディア・リッケ。ガミラス軍第8警務艦隊の元指揮官である。

なぜ「元」なのかといえば第8警務艦隊は数週間前小マゼラン銀河近傍の銀河間空間においてかねてより度々ガミラス領を脅かしていたガトランティス軍と交戦、艦隊の半数以上の艦を失い旗艦としてネレディアが乗艦していたゲルバデス級航宙戦闘母艦もミランガルも大破。

艦隊が事実上解散した状態になっていたのだ。

ネレディアは大損害を出したもののガトランティス軍の主力艦隊を撃滅したことと漂流していた味方残存艦(ガイペロン級多層式航宙母艦ランベア)救出の功績を認められ、ヒス副総統から勲章を授与されたその帰りだった。

元々彼女は受勲には否定的だった。ガトランティスとの戦闘において彼女自身は戦闘指揮にあたっておらず、別の人物がミランガルに座乗し指揮を執っていた為に彼こそが受勲に相応しいと考えていたものの当の本人が頑なに拒否。

代わりに自分が受け取ることになったこの勲章を見せびらかしてやろうと彼が入院(ガトランティスとの戦闘で負傷し一ヶ月程の入院を言い渡されていた)している病院を訪ねたのだが、彼の姿が病室にない。

そこで、彼が立ち寄りそうなこの場所にやってきたのだ。

<いつ来ても殺風景ね>

ネレディアがそう思いながら見渡す視線の先には無数の墓標。人の気配はほとんどなく、空は今にも雨が降り出しそうな雲行きだった。ここはガミラスの首都バレラス近郊の軍人墓地。

ガミラス軍の軍人やその家族が眠るその場所は同じ軍人の道を歩み戦死したネレディアの妹メリア・リッケの眠る地でもあった。

<恐らく彼もそこにいる>

そう確信したネレディアは妹の墓へ向かった。そして彼女の読み通り、一人の男がメリアの墓の前に立っていた。

「やっぱりここにいたのね、フォムト」

そうネレディアに声を掛けられ振り返ったのはガミラス軍元第6空間機甲師団幕僚のフォムト・バーガーだった。

「よう、ネレディ。お前も来たのか」

「よう、じゃないわよ。まだ動き回るなってドクターに言われたの忘れたの?」

「なに、こんな傷・・・っ!」

『大したことないさ』と身体を動かそうとしたバーガーだったが傷の痛みで言葉に詰まった。ガトランティス軍との戦いで受けた傷がまだ治り切っておらず包帯だらけのバーガー。

「バカね、無理するからよ」

そういいながら妹の墓に目をやったネレディアは真新しい弔いの花束をそこに見つけた。

「これ、フォムトが持ってきたの?」

「あ、ああ」

「ありがとうフォムト」

最近は任務に追われ妹の墓参りも出来ていなかった事を思い、ネレディアはフォムトに感謝の言葉を掛けた。

「なに、最近会いに来れてなかったからさ」

そういうバーガーの声は悲しげでもあった。バーガーとメリアはかつて恋人同志の関係だった。しかし同じ赴任先でガトランティスの強襲を受け彼の目の前でメリアが戦死。

メリアを助けられなかった負い目から彼女の墓を訪れる機会がなくなり、バーガーにとってはしばらくぶりの墓参だった。

「メリアと何を話したの?」

ネレディアが尋ねる。

「また生き延びてそっちに行けなくなった詫びをな。それともう1人のメリアに会えた事をな」

もう1人のメリア。ガトランティス軍との戦闘の真っ只中に「メリアに会えた」とバーガーが語った時、ネレディアは意味が分からず混乱した。

そして戦闘後にガミラス軍と共闘したテロン(地球)の宇宙戦艦ヤマトを訪れた時、ネレディアはバーガーが言った言葉の意味をようやく理解出来た。

ヤマトの乗組員に妹と瓜二つの女性、桐生美影がいたのだ。

ネレディアは後になって知ったのだが、バーガー達が謎の惑星「シャンブロウ」に調査に向かった際に記憶を操作され、すでに滅びたと思われていたジレル人の1人ラーレライがネレディアに化けて同行していたのが偽ネレディアが妹そっくりの桐生の姿を見ても何の反応も示さなかった事が偽者の存在を気づかせる手掛かりになっていたのだ。

妹と瓜二つのテロン人の存在はネレディアを心底驚かせた。そしてネレディアにはもう一つ驚いた事があった。バーガーの様子がすっかり変わったのだ。

元々バーガーは気性が荒い方ではあったがメリアを失ってからはさらにとげとげしい性格になり、漂流中だったランベアで再会した時にばドメル将軍や同僚の命を奪ったヤマトへの復讐心でさらに荒んだように見受けられたのだ。

それがシャンブロウから帰還後にはヤマトと共闘するという考えもしなかった行動に出た上に今までのとげとげしさがすっかりなくなっていたのだ。

ネレディアはバーガーにあの惑星で何があったか詳しくは聞こうとしなかった。同行していたヴァンス・バーレンからジレル人の手によってヤマトの乗組員達をザルツ人だと思い込まされ7日間(実際には半日程度しか時間が経過していなかった)の共同生活を送ったとは聞いていたが、バーガーとヤマトの乗組員達、そして桐生美影とどのようなやり取りをしたかはあえて聞こうと思わなかった。

ただただバーガーがテロン人への闇雲な怒りを捨てかつての彼がが戻って来てくれた事がネレディアには嬉しかったのだ。

「本当に妹にそっくりだったわね、あの桐生美影という娘さん」

「ああ、世の中不思議なものがあるもんだな」

そこまで言ってバーガーはネレディアの胸の勲章に気づいた。

「そういや今日が授与式だったんだな、その胸の勲章」

「これ、本当なら貴方が貰うべきものなのよ」

「よせよ、俺はそういうガラじゃないんだ」

「私だって、ヒス副総統だけじゃなくユリーシャ様までいる中で勲章を戴くなんて緊張しちゃって」

そうネレディアがグチる。遥か16万8千光年彼方のテロンから宇宙戦艦ヤマトの来訪はガミラスに途方もない変化をもたらした。

それまで大ガミラス帝星を治めていた総統アベルト・デスラーがヤマト来訪を口実に首都バレラスと大ガミラス帝星を滅ぼさんとし自滅。

総統の暴挙にガミラス国民が動揺する中、それまで崇拝の対象であったイスカンダルから第三皇女ユリーシャ・イスカンダルを国民の象徴としてガミラスに迎え、ルドフ・ヘス副総統の元で新たなガミラスが動き始めていた。

そんな中での叙勲という事で流石のネレディアもユリーシャを前に緊張が避けられなかったのだった。

「ネレディが緊張するとはね」

バーガーが苦笑いする。

「怒るわよフォムト」

そんなバーガーに少なからず不機嫌になるネレディア。

「わりぃ」

と頭を下げるバーガー。

「まったく、今回ばかりは妹の前だから大目に見てあげるわ」

そこまで言ってネレディアは話を切り替えた。

「そうだわフォムト。授与式の時に話が出たんだけど、私近く現場に復帰するわよ」

「そいつはいいじゃないか」

「今のガミラスは猫の手も借りたい状況なのよ。休暇もそろそろ終わりね」

ヤマトとの戦いでそれまでガミラスの支配を支えていた超空間ネットワーク(ゲシュタムの門)が大打撃を受け、大ガミラス主義の撤廃、ガトランティス軍への対応などガミラス軍の動向はこれまで以上に活発になっていた。

有能な将兵を遊ばせておく理由は今のガミラスにはなかった。

「そういうわけだからフォムト、貴方にも頑張って貰うわよ」

「へいへい」

ネレディアの言葉を軽く受け流すバーガーの頬を冷たいものが打つ。とうとう雨が降ってきたのだ。

「ほらフォムト、そんな格好じゃ風邪引くわよ。病院まで送るわ」

「ありがとうな」

迎えの車で病院に戻ったあと担当医にこっぴどく怒られるバーガーだった。

ー三ヶ月後ー

すっかり傷の癒えたバーガーの元に辞令が届いた。

中佐への昇進と新たに編成される小マゼラン方面警務艦隊旗艦への赴任。

ガトランティス相手にまた戦える

そんな思いを胸にガミラス軍のドッグに到着したバーガーを待っていたのは思いがけない艦だった。

「なんだいこりゃ」

思わず声をあげるバーガー。一見するとガミラス軍でおなじみのガイペロン級多層式航宙母艦なのだが、最下層と第三層の飛行甲板が潰され、三連装陽電子カノン砲の砲台や密閉式格納庫が設置されもはや別物になっていたのだ。

そして何よりも驚かされたのがその色だった。かつて乗艦し大破したネレディアの乗艦ミランガルと同じ赤・白・黒の3色迷彩塗装だったのだ。

「どう?私のミランガルII世は?」

聞き覚えのある声にハッとなりバーガーが振り向くとそこにネレディアの姿があった。

「私の、ってこれがネレディの新しい乗艦なのか?」

「そうよ、それに貴方もこの艦の事は良く知ってるはずよ?」

「?」

「ランベアよ」

「なんだって?俺が乗っていたランベアがこのミランガルII世だっていうのか?」

「まだ使える艦を遊ばせておくほどガミラスに余裕がないのよ。それに二度も激闘を生き残った艦を上が気に入ったみたいね」

「これがあのランベアとはねぇ」

ヤマトとの戦いで半ば捨て駒的に充てがわれた旧式空母だったが戦いを共に生き延びたランベアをバーガーは気に入っていたが、旧式艦であるが故にすでに一線から退いたとばかり思っていた為、思いがけない再会となった。

「それにミランガルII世はあなたの艦でもあるのよ」

「な、なんだって!?」

「あら?聞いてなかったの?貴方はミランガルII世旗艦の新第8警務艦隊への配属、このミランガルII世の艦長なのよ」

「ネレディ、ちょっと待て。新編成の警務艦隊への配属は聞いていたがお前の指揮する艦隊だなんて初耳だぞ」

「嫌なの?」

「ち、違う!」

「それにメリアの墓で聞いたわよね?『貴方にも頑張って貰うわよ』って。あの時あなた『へいへい』って答えたわよね?妹の前でウソをついたの?」

「!!」

流石のバーガーもかつての恋人の名をその実の姉から出されては黙るしかなかった。実のところ妹を死なせた負い目から姉のネレディアを避けていたバーガーだったが、桐生美影らヤマト乗組員との出会いでその負い目も今は和らいでいた。

「そうとなれば今日からびっしり頑張って貰うわよ、バーガー艦長どの」

ネレディアがお決まりのガミラス式敬礼でバーガーに敬意を示す。

「ざ、ザーベルク」

どこかばつが悪そうに敬礼を返すバーガー。

<なぁメリア、俺とお前のお姉さんを天国から見守ってくれるか?>

心の中でつぶやくバーガー。その言葉にメリアが嬉しそうに微笑んむ、そんな姿がバーガーの脳裏に浮かんだ。

End




先日、宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟を観てバーガーと新キャラのネレディアのカップリングが気に入ってしまい久方ぶりに二次創作小説を書いてみました。

ランベアのくだりとか妄想全開ですが二度に渡る激戦を生き残った幸運艦に頑張って欲しいという思いもありました。

ラブラブはメリアの存在もあって難しいかなぁと思い、このようなお話になりましたが、少しでも気に入って貰えれば幸いです。

1/1000 ガイペロン級多層式航宙母艦「ランベア」 (宇宙戦艦ヤマト2199)
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二次創作:ガールズ&パンツァー「ポンコツなんて言わせない」Part.2

2012年11月26日 23時10分00秒 | 二次創作小説

二次創作:ガールズ&パンツァー「ポンコツなんて言わせない」Part.1

の続きです。

 


 

「今日は皆さんに特別訓練を行って貰います」

数日後の戦車道の授業の冒頭で教官の蝶野亜美が高らかに宣言する。それにざわめく大洗女子学園戦車道チームの面々

「特別訓練ですか?」

と西住みほ。

「その通り、今回は弾が撃てない状態で敵の攻撃から逃げる為の訓練を行います」

そう言って亜美が生徒会チームの面々を前に来るように促す。

「カバさんチームから一定時間逃げ切る事。これが訓練の内容です」

その言葉に皆からどよめきが起きる。

「あの教官、それでは訓練にならないのでは?」

アヒルさんチームのリーダー磯辺典子が口を開いた。

「磯辺さんなにかご不満?」

「あ、いえその・・・」

亜美に問いかけられ口ごもる。本人達を目の前に

「カメさんチームの射撃の腕が悪いので訓練にならない」

とは到底いえなかった。

「おほん」

そんな二人のやりとりを見計らって桃が咳払いをする。

「私たちカメさんチームは20発の演習弾を搭載してあなた達を追いかけます。私たちが全弾撃ち尽くすか60分逃げ延びれば勝ちです」

「そして買ったチームのメンバー全員に3週間分の学食の食券を支給します!」

この宣言に戦車道チームの面々から新たにどよめきが起きた。60分逃げ切れば(カメさんチームが弾を撃ち尽くせば)食券が貰えると聞いて俄然やる気を起こす面々。

そんなメンバーの様子を見てにやりとする亜美と彼女に向かって小さく親指を立てる桃。

ただ2人、西住みほと秋山優花里だけはこの状況に不安を隠せなかった。


「教官も変わった事を考えるんだなぁ」

III号突撃砲の車内でエルヴィンがぼやく。1時間逃げ切るかカメさんチームの弾薬が尽きた時点で勝ち、しかも食券3週間分を貰えるとなればこれほど旨い話もない。

「おりょう、気軽に行こう。逃げ回っていれば恐らく弾を撃ち尽くしてこちらの勝ちだ」

「了解」

カバさんチームのドライバーおりょうはエルヴィンに返事を返すと少し速力を上げた。

「だが、気になるな」

砲手の左衛門佐が不満を口にする。

「考え過ぎよ佐衛門佐。恐らく2回戦を前に景気づけなんでしょ」

と装填手のカエサルがつっこむ。

「そうそう、考えすぎ。考えす・・・」

エルヴィンのセリフを遮るように遠くから砲撃音が響いた。

38(t)戦車の主砲の発射音、誰もが見当違いのところに着弾すると思った次の瞬間、轟音と衝撃にIII号突撃砲が激しく揺さぶられた。

「きゃー!!」

思わぬ事態にカバさんチームの全員が悲鳴をあげる。

「カバさんチームに命中!リタイアよ!」

「なに!?」

無線の亜美の声に驚き状況を確認しようとハッチから顔を出すエルヴィンとカエサル。カバさんチームの車体には訓練弾の弾痕がしっかりとついていた。

「そ、そんなカメさんチームの砲撃が当たった・・・」

呆然となりへたり込むエルヴィン。訓練開始5分でカメさんチームのIII号突撃砲、リタイア。


『こちらカバさんチーム、カメさんチームの砲撃の直撃を受けリタイア!』

他の大洗女子学園の戦車道チームにIII号突撃砲からの悲痛な無線連絡が入る。楽勝で勝てると思っていたウサギさんチームとアヒルさんチームは戦々恐々とした状態に追い込まれた。

折角の食券3週間分を逃す事は是が非でも避けたかった上にカメさんチームの砲撃に当たるという不名誉を避けたかったのだ。

「ストップ!」

樹林帯に差し掛かったM3リー中戦車の車長澤梓が叫ぶ。カバさんチームが撃破されたと推測される地点にほど近い彼女らが次に狙われる可能性が高かった。

砲撃出来ない以上逃げ回るしかない。しかし開始5分でカバさんチームを仕留めたカメさんチームへの恐怖がウサギさんチームを支配していた。

「とりあえず周囲にはいないみたいね」

キューポラから顔を出し周囲を確認する梓。

「佳利奈さん、ゆっくり出発して、ここから少しでも遠くに離れましょ」

「はい」

梓の言葉に従いドライバーの阪口佳利奈がゆっくりとM3を出す。スピードがついてきてようやく樹林帯を離れられるかと思ったその時、別の無限軌道がきしむ音が周囲に響いた。

そして小さな樹木をかき分け姿を現した38(t)戦車。

「!!」

一年生チーム全員が声にならない悲鳴をあげる。エンジンを全開にしてその場を離脱しようとしたが慌てるあまりジグザグ走行で射線をずらす事をすっかり忘れてしまっていた。

逃げるM3リーの背後から容赦なく砲撃を浴びせる38(t)戦車。数発の至近弾の後、M3リーのエンジン部を演習弾が直撃した。

「こちらウサギさんチーム、やられましたぁ!」

残る2チームに無線報告をする梓。訓練開始18分でウサギさんチーム、リタイア。


「まったくどうなってるのよ」

八九式中戦車の中でアヒルさんチームのリーダー、磯辺典子が毒づく。楽勝だと思っていた訓練がすでに2チームもやられ、残るはアヒルさんチームとあんこうチームだけという状況では毒づきたくなるのも無理無かった。

冷静に考えればなんの手立てもなく砲撃の成績が一番悪いカメさんチームを敵役しての訓練もありえず、教官も生徒会チームも判った上でこの訓練を実施したと考えると見事に嵌められたという事実。

生徒会チームを見くびっていた自分達の奢りに典子は唇を噛んだ。

「先輩、どうしましょう?」

ドライバーの川西忍が狼狽えた声で尋ねる。

「いつかの如く逆リベロを徹底するしかないわ。身動きの取りやすい街道沿いに出ましょう」

とにかく逃げ回るしかない以上身動きしやすい場所に出る。そう判断して典子は八九式を街道に向かわせた。

街道沿いに出て前進を続ける八九式。砲塔を旋回して周囲を警戒していた典子の視界に38(t)が入った。

「来たわよ!」

典子の声と同時に38(t)が発砲。至近弾で車体が揺れた。続けざまの38(t)戦車の砲撃で左方向に進めず右手の森の中に入りその場を離脱する八九式。

「なんとか逃げ切れましたね」

砲手の佐々木あけびが安堵の声を出す。

「だといいんだけど」

逃げ切れた筈なのに不安が隠せない典子。

「先輩!」

通信士の近藤妙子が悲痛な声を挙げる。

「しまった!」

目の前の渓谷にあ然とする典子。地形を把握が十分でないまま逃げ続けた為に逃げた筈が逆に袋小路に追い込まれていたのだ。

「せんぱーい!」

追いつめられている事実に悲痛な声を出す忍。

転進しようと指示を出そうとした矢先、背後から38(t)戦車のエンジン音が響き渡った。

「万事休す、か」

がっくりとうなだれる典子。訓練開始38分、アヒルさんチーム八九式中戦車、リタイア。


「みぽりん、アヒルさんチームもやられたって」

無線からの他チームの報告を聞いた通信士武部沙織が声をあげる。訓練開始40分ちょっとであんこうチーム以外の車輌が撃破されたという事実はあんこうチームにとっても衝撃的だった。

心の片隅にカメさんチームへの奢りがあったことを反省する面々。その中で一人別の方向で心配になっている人物がいた。

カメさんチーム、厳密には河嶋桃に砲撃の助言を与えた秋山優花里。彼女は訓練前の桃との会話を思い出していた

 

 

「手を抜く?」

「秋山さんのお陰で射撃性能が大幅に向上したからな、その恩返しをしてやらないと」

「けど困ります!他のチームの皆さんのこともありますし」

「なに、心配しなくても上手くやるから安心しろ」

「でも・・・」

「じゃあな」

 

 

「・・・かりん、ゆかりん!」

「は、はい!」

沙織に声を掛けられ我に返る優花里。

「そうですわよ優花里さんさっきから心ここにあらずという感じですよ?」

と砲手の五十鈴華

「あ、いえ生徒会の皆さん凄く上達したなぁと驚いてしまいまして、はい」

と必死に誤魔化す優花里。

「そういえば」

と口を開いたのは滅多に喋らないドライバーの冷泉麻子だった。

「先日の休みに演習場で生徒会の河嶋さんと一緒にいませんでした?」

「え?れ、冷泉殿?な、なんのことですか?」

「学校に忘れ物して取りに来たらカメさんの38(t)が格納庫になくて演習場覗いたら二人でなにか楽しそうにしてたからそのまま声を掛けずに帰っちゃったけど」

「・・・」

麻子に自分が桃と一緒にいたところを見られていたと知りなにも言えなくなる優花里。

その様子に何かを察した西住みほ。

「秋山さん」

「は、はい!なんでしょう西住殿!!」

みほに呼ばれた優花里だったが自分が隠し事をしていることの後ろめたさからまともに彼女の目を見ることが出来なかった。

「今日の訓練、何かあると思ってたけど何か知っているんですか?」

「それは、その・・・」

「秋山さん、同じチームである以上隠し事はなしでお願いします!」

「はい、分かりました・・・」

そう言われてもはや隠し通すことは出来ないと優花里は生徒会の河嶋桃に砲撃に関するアドバイスを与えた事、今回の訓練で手抜きをする予定であることを洗いざらい喋った。

「というわけなんです」

「凄いよ、ゆかりん!的確なアドバイスでカメさんチームを強くするなんて!」

事の次第を聞いて感歎の声をあげる沙織。

「凄いですわ優花里さん」

と華。

「なんか、つまんない」

手抜きをされそうだったことを知りふてくされる麻子。

「秋山さんのやったこと、凄くいいことです。けど」

「けど?」

「手抜きなんて絶対にダメです」

そう優花里にいうみほの顔は真剣そのものだった。

「武部さん、河嶋さんにメールをお願いします」

「はい!」

演習場の一角で残るあんこうチームの居場所の見当をつけていたカメさんチーム。その桃の携帯にメールが入った。

「これは・・・」

メールで指定された周波数に無線を合わせる。

「こちらあんこうチーム西住です、河嶋さん聞こえますか?」

「こちらカメさんチーム、河嶋だ」

「この周波数なら他のチームの皆さんに聞かれる事がないので安心してお話出来ると思います。射撃精度の件とかこの訓練のお話とか秋山さんから全部聞きました」

「そうか」

「手抜きをなさろうとしたそうで」

「・・・」

「手抜きなんて絶対ダメです。戦車道はいつでも真剣勝負でお願いしたいんです。ウサギさんやカバさん、アヒルさんチームに申し訳が立ちません」

「そういうことか、なら本気でいかせて貰うぞ」

「よろしくお願いします!」

無線を切った後、桃の顔に笑みがこぼれた。

「桃ちゃん?」

ドライバーの生徒会副会長小山柚子がそんな桃を気に掛ける。

「戦車道ってこんなに面白いものだったのかな」

「え?」

「時間がない、柚子、出るぞ!」

「はい!」

気持ちのいい返事と共に38(t)戦車のエンジンがうなりをあげる。

「よし、レッツゴー」

そして相変わらずマイペースな生徒会長角谷杏だった。


「来ました!38(t)戦車、まっすぐこっちに向かってきます!」

優花里が叫ぶ。残り時間もわずか、あんこうチームとしては何処かに身を隠して時間までやり過ごすという方法もあったがお互い真剣にやり合うと決めた以上視認出来る距離で逃げ回るという方法をとることにした。

猛スピードで近づく38(t)戦車が発砲する。

「麻子さん、38(t)の射程は短いです。ギリギリでかわしつつ時間を稼いでください」

「了解」

そういいつつ進路を変更。IV号戦車の間近に着弾する。

「く、ちょこまかと。やはりそう簡単にはやらせてくれないか」

照準を合わせつつ桃が毒づく。

「柚子、IV号はすばしっこい。きっちりついていくのよ!」

「はい!」

逃げ回るIV号戦車とそれに食らいついて砲撃を加える38(t)戦車の追い駆けっこ。その様子を平地を見下ろす丘の上で他の大洗女子学園の面々と蝶野教官が観戦していた。

「凄いな、あんこうもカメさんも」

エルヴィンが溜息を漏らす。

「生徒会の人達がこんなに凄いなんて」

と磯辺典子。

「先輩達、凄いなぁ」

とは澤梓の言。

「あの子達、よくやるわ」

眼下で繰り広げられる追い駆けっこを亜美は誇らしげに眺めていた。

「残り時間あと1分!」

沙織が叫ぶ。

激しい挙動の連続で優花里と華は既にへとへとになっていた。

「麻子さん!後少しです!」

みほの励ましにうなずく麻子。

「くそう、すばしっこい!」

乱戦状態で上手く照準がつけれず焦る桃。次の弾を装填しようと手を伸ばして手が弾に届かない事に気付き振り向いた桃は絶句した。

20発あった訓練弾が残り1発になっていたのだ。残り時間もわずか。いずれにしても次の砲撃が最後のチャンスだった。

「!!」

声にならない雄叫びをあげて37mm砲弾を装填する桃。

照準を合わせる視線の先でIV号戦車が進路変更のためにスピードを落とすのが見えた。

「お前なんか!一発あれば十分だぁ!!」

その桃の叫びと共に38(t)戦車の主砲が火を噴いた。

甲高い金属音が演習場にこだまする。38(t)戦車の放った演習弾がIV号戦車を見事に捉えた瞬間だった。

「訓練終了!カメさんチームの勝利!」

高らかに亜美が訓練の終了を宣言した。


「みんな、相手の事前情報を過信して勝負に挑むかどれだけ危険か、今日の訓練で分かったでしょ?」

訓練の終わりに亜美が大洗女子学園の面々に教えを説く。

彼女の言うとおり大洗女子学園の戦車道チームの面々はそれまで一番射撃精度の悪かったカメさんチームを弱いと思いこみ、結果速攻で撃破されるという事態に陥っていた。

過信が如何に危険か、サンダース大学付属高校に勝った事で少なからず浮き足立っていた大洗の面々にこの日の訓練は良き教訓となった。

「常に相手の動向を把握し最善の選択をする、それが勝利への一歩なの。解った?」

「「「「「はい!」」」」」

「それでは、今日はここまで、解散!」

訓練が終わり格納庫に戻って後始末をする桃の元へみほがやってきた。

「あのう、河嶋さん」

「どうしたの、西住さん?」

「わたし、一度は戦車道から逃げ出したのに『戦車道はいつでも真剣勝負でお願いしたいんです』なんて生意気なことを言ってすいませんでした!」

そう言って深々と頭を下げるみほ。

「貴方は何も間違った事を言っていないのに頭を下げるなんて変よ」

とそんなみほをたしなめる桃。

「けど、わたし・・・」

「西住さん、私ね今日はじめて『戦車道は楽しい』って感じれたの」

「え?」

「今まで義務みたいに戦車道をこなしてたけど砲撃は上手く当てれない、皆の役に立てないと酷い自己嫌悪だったのよ」

「けど秋山さんの助けや貴方の言葉、それにあなた達と戦って『真剣勝負に取り組む楽しさ』みたいなのを初めて実感出来たの」

「河嶋さん・・・」

「今日はたまたま勝てたけど仮に負けてても惜しくなかったわ。真剣に戦えたんだもの。こんな気持ちを感じさせてくれた西住さんには私から感謝しないといけないぐらいだ」

「あ、ありがとうございます!」

「ほら、まだ後片付けが残ってるなら戻って済ませてきなさい!」

「はい!」

桃に一礼してみほはその場を後にした。

「桃ちゃん、なんか変わったね」

そんな二人のやりとりをみていた柚子がつぶやく。

「そんなことはないと思うがな。柚子、早く片づけるぞ!」

「了解です!」

こうしてこの日の大洗女子学園の戦車道チームの訓練は幕を閉じた。

 


 

あとがき:ガールズ&パンツァーの登場人物で一番の射撃の命中精度の悪さを誇る生徒会チームの河嶋桃。

「いくらなんでもおかしくないか?」

という疑問を突き詰めて考えたりTwitterでガルパンファンの方とリプライをやりとりする中で

河嶋桃の片メガネが射撃に悪影響を与えているのでは?

という推理から今回の小説のアイデアを考えた次第です。桃に活躍の場をという思いで書き上げました。

ガールズ&パンツァー本編は戦車道全国大会の第1回戦が終わり、第2回戦を前に新戦車の発見イベントがあるようなのでどんな戦車が出てくるか今から楽しみだったりします。

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二次創作:ガールズ&パンツァー「ポンコツなんて言わせない」Part.1

2012年11月25日 22時10分00秒 | 二次創作小説

ガールズ&パンツァー二次創作第2弾。今回の主役は生徒会チームの河嶋桃さんです。

 


 

夕暮れの大洗女子学園。

戦車道の自主練の終わった格納庫にあんこうチームの装填手秋山優花里の姿があった。

「参ったなぁIV号の中に携帯忘れるなんて」

一人ぼやく優花里だったがふと自分以外の人の気配に気付く。

「あれは…?」

優花里の視線の先に愛おしそうに38(t)戦車をなでる生徒会広報担当の河嶋桃の姿があった。

「河嶋殿」

「ひっ!?」

突然声を掛けられ驚く桃。そんな彼女に優花里も慌てた。

「す、すいません!」

「あ、あなた確かあんこうチームの秋山さん?」

「はい。携帯を戦車の中に忘れてしまってとりに戻ったんです」

「そうか、もう遅いから早く帰宅するように」

「了解であります!けど、こんな遅くに河嶋殿は何故ここに?」

「あ、ああ」

優花里の問いにぎこちなく答えると桃は再び38(t)戦車をなではじめた。

「こいつの事が気になってな」

「河嶋殿も自分の乗る戦車に愛着あるんですね」

「なんだかんだでな。だが…」

「?」

「私はこいつに乗る資格があるんだろうか?」

いつになく寂しそうな声で語る桃に優花里も驚きを隠せなかった。

「秋山さん、私の射撃の成績を憶えてる?」

「えーと確か…」

そこまで言いかけて優花里はハッとなって口をつぐんだ。

桃はカメさんチームの38(t)の実質的な車長兼装填手兼砲手なのだが射撃の腕はからっきしダメで過去の練習試合や戦車道全国大会の公式1回戦でもまともに当てた事がなかった。

「今更黙る事でもないだろ?射撃の腕の悪さは自分でも判ってる」

「は、はぁ」

自嘲気味に話す桃に申し訳なく相づちを返す優花里。

「だがな、大洗女子学園の為に戦車道をはじめたのにこの体たらくでは他の面々に流石に頭があがらん。こいつも私みたいなダメな砲手がついている為に活躍出来ないのでは本望ではなかろう」

38(t)戦車をなでながらそこまで言って桃が言葉を詰まらせる。

「…私は、生徒会の一人としてもっと皆の役に立ちたい。こいつを立派に働かせたいんだ」

そう言う桃の頬につたう涙を優花里は見逃さなかった。

「大丈夫ですか河嶋殿」

「!す、すまない全国大会2回戦を前に感傷的になってしまったな」

優花里に声を掛けられ我に返る桃。そんな桃の姿をみて優花里はある決意をした。

「あの、河嶋殿」

「なんだ?」

「よろしければわたしがお力になります」

「!」

思いがけない優花里からの提案。しかし3年生である自分が後輩に助けて貰っていいのか?そんな迷いが桃にはあった。

「わ、私は仮にも上級生だぞ。その私が後輩に助けを貰うなど…」

「助け合いの精神も立派な戦車道精神です。ここまで話を聞いてほっておく訳にはいかないじゃないですか」

「…あ、ありがとう!」

優花里の言葉に思わずうれし涙を流す桃だった。


「やはり、照準器に問題がありますね」

数日後の休日、大洗女子学園の演習場で奮闘する優花里と桃の姿があった。二人で桃の射撃の問題点を洗い出していたのだが、砲撃が左にずれるクセがあることが判ってきたのだ。

「ということは、整備班の整備不良?」

「いえ、そうではありません」

そう言って優花里が説明を始める。

「河嶋殿、照準をつける際にどちらの目で合わせてますか?」

「右だが?」

「私が照準を合わせた状態で河嶋殿が再度照準を合わせた際に動かしてるでしょ?恐らく片メガネと照準器の相性があっていないんです」

「なんということだ、そんな簡単なことに今まで気付いていなかったのか」

優花里の推測を聞かされがっくりと肩を落とす桃。

「推測が正しいかどうかは試してみれば判ります、やってみましょう」

38(t)戦車に乗り込む優花里と桃。優花里が装填手で桃が砲手役。

「河嶋殿左目で照準を合わせてみてください」

「判った」

優花里に促されちょっとしんどい姿勢だが左目で照準を合わせる桃。

「それじゃいきますよ、それ!」

38(t)の37mm弾を主砲に装填する優花里。

「装填完了!」

「発射!」

かけ声と共に37mm砲が火を噴く。そして放たれた砲弾は数百メートル先の標的に見事命中。

「や、やった。やったぞ!」

歓喜のあまり涙声になる桃。

「やりましたね、河嶋殿!」

優花里もアドバイスが功を奏した事に大喜び。

そんな時優花里の携帯が鳴った。

「はい、秋山ですが。あ、ピザパットンさん?はい学園裏の演習場にいるので来て貰えますか?はい、よろしくお願いします」

「ピザを頼んだのか?」

「はい、そろそろお昼時ですし、お腹も空く頃を見計らって頼んでおきました」

「そうか、そんな時間か。そろそろ一休みするか」

「はい!」


「どうです、河嶋殿。ピザパットンのピザなかなかいけるでしょ?」

「ああ、上手いな」

日曜の昼下がり、38(t)戦車の上で女子高生が宅配ピザをほおばっている。二人とも非常に晴々とした気持ちでお昼を楽しんでいた。

「だが、毎度不自然な姿勢で照準を合わせないといけないのはなんとかしないならんな」

「その点はご安心下さい」

「?」

「照準器の覗き口は左右の変更が出来るのでそうすれば普段通りに照準を合わせられます」

「そうか、それを聞いて安心した」

そう言って桃は持っていたピザの欠片を口に放り込む。そして次のピザを取ろうとしてふと手を止めた。

「河嶋殿?」

「んふふ」

突然の桃の含み笑いにびびる優花里。

「すまない、次のアンツィオ戦の事を思い出してな。2回戦の前にちょっとした面白い催しをやってみたくなった」

「え?」

「なに、他の面々を驚かせてやろうと思ってな」

そう言いながら楽しげにピザをほおばる桃だった。

 


 

二次創作:ガールズ&パンツァー「ポンコツなんて言わせない」Part.2

に続きます。

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二次創作:ガールズ&パンツァー「その名は“蛍”」

2012年11月19日 22時50分00秒 | 二次創作小説

何年ぶりかの二次創作小説、ガールズ&パンツァー6話以降の妄想ネタになります。

 


 

「困りましたね」

「そうですね」

「…」

「みぽりん、どうしよ?」

「うーん…」

西住みほ達大洗女子学園あんこうチームの面々が頭を抱えている。

戦車道全国大会一回戦にてサンダース大学付属高校に辛勝したものの、大きな問題が起きたのだ。

アヒルさんチームことバレー部チームの八九式中戦車がM4シャーマンとの戦闘で大破、バレー部全員軽傷で済んだものの八九式の修理が次の試合までに間に合いそうにないと判明。

『次の試合をどう戦うか?』

トレーラーに載せられ修理工場に運ばれる直前の八九式を前に思案に暮れていたのだ。

とそこへ

「西住、みほさんね?」

と尋ねる声が。

あんこうチームの面々が声の方に目をやると神妙な面持ちのサンダース大学付属高校チームの隊長ケイとNo.3アリサの姿がそこにあった。

「ケイさん、それにアリサさん、御用ですか?」

「通信傍受の件、ごめんなさい!」

みほに声を掛けられ、深々と頭を下げるアリサ。

「私からも謝るわ、本当にごめんなさい」

そう言ってケイも深々と頭を下げる。

突然の事に驚く大洗女子学園の面々。

「そ、そんな!私たちだって携帯で連絡とったり秋山さんの潜入活動もあったし、私たちそこまで謝られる義理はないですよ。だから顔を上げて下さい」

とみほが答える。

「そうですよ、戦車道のルールブックには傍受機を打ち上げてはいけないと書いてないんですから」

と五十鈴華がフォローする。

「違うんです」

顔を上げたアリサがそっと口を開く。

「え?」

「私たちサンダース大学付属高校は通信傍受機を使う戦術は取らないと決めていたんです。けど、勝利が欲しい一心で私の独断で傍受機を使っていたんです」

「それじゃケイ殿は傍受機の存在を知らなかったんですか?」

「ええ、その通り。私はアリサの指示を勘が鋭いとばかり思っていて傍受機の存在は思いもよらなかったのよ」

秋山優花里の問いにケイが答える。

「はっきり言って私の監督不足。いくらルール違反でないとはいえ、こんな状況で勝ってたら目覚めが悪かったわ」

「あのう」

武部沙織が申し訳なさそうに声をあげる。

「なにかしら?」

「アリサさんの処分とかもう決まっちゃってますか?」

「え?」

沙織の言葉に驚き、顔を見合わせケイとアリサ。そして気まずくなるケイと自分の処分がどうなるかに思いが及び唇を噛むアリサ。

そんな2人を見て慌てたのは沙織の方だった。

「あ、違うんです!ケイさんにはアリサさんの処分をして欲しくないんですよ!」

「いいんですか?」

沙織の言葉に驚くアリサに黙ってうなずく冷泉麻子。

「西住さん、いいの?」

「もちろんですよ、最後はお互い死力を尽くして戦ったんです。恨みっこなしです。いいよね、みんな!」

ケイに答えるみほの言葉にあんこうチームの面々が同意する。

「あ、ありがとう!」

大洗女子学園の寛大さに思わず、涙ぐむアリサだった。

そして

「次に戦う時は最初からズルなしでいきましょう!」

「もちろんよ!」

互いにかたい握手を交わすみほとケイだった。

「それにしても…」

そう言ってケイが八九式が載せられたトレーラーに目をやる。

「こんな旧式戦車でアリサのM4と相打ちに持ち込むとはねぇ」

感嘆の声をあげるケイ。彼女のいう通り八九式が大破したのはアリサのM4シャーマンと相打ちになった為で無線傍受が出来なくなったサンダースは作戦の柔軟的な変更が出来なくなり最終的に大洗に敗れたのだった。

「でも、こんなに壊れたんじゃ次の試合までに修理間に合うの?」

「ギクッ」

ケイの言葉に固まるあんこうチームの面々。ケイの推察通り八九式の修理は次の試合に間に合わないのは確定状態だったのだ。

かといって他校に内情をおいそれとしゃべる訳にもいかず、答えに苦慮する事に。

そんな様子を見てケイが声をあげる。

「オッドボール三等軍曹!」

「は、はい!」

ケイが優花里がサンダース大学付属高校にて潜入活動を行っていた時の名前を高らかに呼び、思わず反応してしまう優花里。

「この際だからお互い隠し事はなしにしましょう、さあ正直に答えなさい!」

「い、Yes Ma'am!!」

ケイに言い寄られて、現状を洗いざらい白状するしかない優花里だった。

「…なるほど。そういうことだったのね」

大洗女子学園の置かれた状況を聞き、少し考えこむケイ。そしておもむろにアリサに声を掛けた。

「アリサ、部隊編成の都合で予備に回しているファイアフライが1輌あったわよね?」

「はい」

「予備のファイアフライの籍を外して大洗に譲渡する準備を進めて頂戴」

「え!?ファイアフライを彼女らにあげるんですか?」

「もともと予備に回していて使い道もないし不満はないでしょ?」

「それはそうですが…」

「なら早くお願いね」

「はい!」

そんなケイとアリサのやり取りに驚いたのはあんこうチームの面々だった。

「そ、そんな勿体無いですよ!」

驚くみほ。

「確かにファイアフライが大洗に加われば戦力の増強にはなりますが、申し訳ないですよ」

と優花里。

「お気持ちはありがたいですが」

と戸惑う華。

麻子は新しい戦車がくるというのでまんざらでもない感じ。

「私が知らなかったとはいえ無線傍受されるという圧倒的に不利な条件を覆して私たちに勝ったその健闘を讃える為と、アリサを許してくれた礼がどうしてもしたいのよ。ダメかしら?」

「正直すごく嬉しいです、けどいいんですか?」

「女に二言はないわよ?」

そんなみほとケイのやり取りに沙織が割って入る。

「あのう、ケイさんの申し出は嬉しいですしみぽりんは是非受けるべきだと思うんですが、バレー部の皆さんがどう思うか…」

「私たちがどうかしましたか?」

声を掛けたのはアヒルさんチームの運転手、川西忍だった。

あんこうチームとサンダースの会話の場にすっと現れたバレー部の面々に驚く華。

「バレー部の皆さん休んでなくて大丈夫ですか?」

「ちょっと痛いですけどね。八九式が送り出される前に一目見ておこうと思って」

華の言葉に答えるバレー部チームリーダーの磯辺典子の包帯が痛々しい。

他の面々も絆創膏やら包帯やらで結構な姿になっていた。

「それで私たちがどうかしたんですか?」

アヒルさんチームの砲手、佐々木あけびが再び尋ねた。

「それがですね…」

みほはバレー部に事の次第を丁寧に説明した。

「なるほど、大破したこいつ(八九式)の代わりにサンダースの戦車を譲渡してくれると」

事情を理解した典子が少し考え込む。

「機種転換だって楽じゃないですしダメなら断りますよ?」

心配そうに問いかけるみほ。

「いえ、やらせて下さい。この子(八九式)も好きでしたけど、新しい戦車にも興味ありますし、チャレンジしたいんです」

典子はそうはっきり答えた。

「このまんまじゃ皆さん頑張ってるのに自分達だけ遊びほうける事になりますし、そんなの我慢出来ません」

「ずぶの素人だったのに戦車の乗り方を憶えられたんです、新しい戦車にだってすぐに乗りこなせてみせます!」

あけびと忍が立て続けに答える。

「あれ?妙子さんは?」

ただ一人返答をしない近藤妙子を気に掛けるみほ。だが当の本人はといえば

「んふふ~乗れる(はあと)憧れのシャーマンに乗れる(はあと)」

と完全に舞い上がっていた。

(ああ、近藤殿はシャーマン大好きだったんだっけ)

妙子のシャーマン好きを思い出し、半ば呆れる優花里だった。

「そうとなれば話は決まりね」

ケイが話を切りだした。

「一両日中には大洗にファイアフライト付属品と弾薬類を送るわ。楽しみにしててね」

「はい!」

ケイの言葉に元気良く応えるみほだった。

「バレー部一堂、ファイアフライが届いたら早速機種転換訓練だ!」

「「「おお!!」」」

ケガの痛みをモノともせず、バレー部の元気な声があがる。

「西住殿、良かったですね」

「はい!」

優花里の言葉に元気に応えるみほだった。

 


 

あとがき:ガールズ&パンツァーにはまり色々と話をしたり聞いたりしている中で

「明らかに能力的に見劣りするアヒルさんチーム(八九式中戦車)をどうするか?」

というネタを考えてる中でこの話を思いつきました。

実際の展開がどうなるかまだ判りませんが、大洗に新しい戦車が来て欲しいなぁという思いだったりします。

関東では11月20日の未明、地元だと22日未明(BS11では24日)に放送予定のガルパン第6話「1回戦、白熱してます!」、今から非常に楽しみです。

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二次創作 マクロスF「Fly Me to the Moon part.2」

2009年07月17日 23時16分55秒 | 二次創作小説

シェリルがひょんな事から知った地球の古い歌。

“素敵な曲”と自身が評する歌をシェリルはアルトに披露した。

♪Fly me to the moon Let me sing among those stars

伴奏なしに軽やかに歌い出すシェリル。アルトはさすがはシェリルだと彼女が歌う姿を眺めながら改めて感心した。

「♪Let me see what spring is like On Jupiter and Mars

「♪In other words, hold my hand

そのフレーズと共にシェリルがそっとアルトの左腕を引き寄せる。

「♪In other words, darling kiss me

シェリルが何かを切望するような瞳でアルトを見つめながらそのフレーズを歌ったときアルトは顔を真っ赤にした。

「お、おいシェリルいきなり何を言い出すんだ!?」

アルトの言葉にシェリルが歌うのを止める。お互い既に深い仲の筈なのにこういう事だけは未だにアルトは苦手としていた。

「何って、ただの歌のフレーズじゃない、一体どうしたって言うのよ?」

しれっと答えを返すシェリル。それを聞いたアルトは顔を真っ赤にしたまま黙り込む。そんなアルトの様子を見てシェリルが何かを閃いた。

「ねぇ、アルトここで『キスして』って言ったらしてくれる?」

あまりにストレートなシェリルの問いかけ。あまりのことにアルトは絶句して何も答えることが出来なかった。

そんなアルトを様子を見たシェリル。答えが返ってこないことにショックを受けた様子で

「アルト、酷い!」

と顔を背けてしまった。シェリルの態度にアルトは別の意味で慌てふためいた。シェリルの左側に回り込んで必死に説明する。

「まった、シェリル!キスしたくないとかそうじゃなくて、その急にそういうこと言われても俺慣れてないし…」

恥も外聞もなく答えを返せなかった事を自分のウブさが原因だと説明するアルト。

「だからシェリル、機嫌をなおして…」

そこまで言ってアルトは自分の必死な姿をにっこり眺めているシェリルに気づき、自分がシェリルにあそばれていたことを悟った。

「そういうウブだけど真面目なところもアルトの素敵なところよ」

シェリルがそっと顔を近づけ、お互いの唇が触れる。その過去に何度か経験した感触にアルトはシェリルに対するほんの僅か起こった怒りの気持ちも吹き飛んでしまった。

安堵感からかソファーにへたり込むアルト。そんな彼を見ながらシェリルは歌の続きを紡ぎ始めた。

「♪Fill my heart with song Let me sing for ever more

<シェリルが気に入るのも判るな>

歌を聴いてそんなことを思うアルト。

「♪You are all I long for All I worship and adore

さらに軽やかに歌うシェリル。歌詞の意味を理解したアルトはまたしてもハッとなる。

「♪In other words, please be true

「♪In other words, …

シェリルはアルトの耳元でそっと囁くように最後のワンフレーズを歌った。

「……!!!!!」

もし同じ部屋に誰か居ても全く聞こえないであろうと思えるほどの小さな囁きだったがアルトにとって

I love you

という最後のフレーズは強烈きわまりないインパクトだった。嬉しさと恥ずかしさで完全にノックアウト。ここにアルトの被撃墜記録がもう一つ加わったのであった。

その後二人はしばらくソファーで寄り添って座っていた。何を語るでも何かするでもなくただお互いが近くにいるという事だけで十分満足に思えたからだった。

「ねえ、アルト。私久々に曲を出すわ」

話を切りだしたのはシェリルだった。芸能活動を徐々に復活させていたとはいってもシェリルはまだ新しく曲を出していなかった。

「曲を出すって?」

「アルトに歌ってあげた“Fly Me to the Moon”。あの曲もっと色んな人に聞いて貰いたいの」

「良い事じゃないか」

「ありがとう、アルト」

そう答えたアルトはそっとシェリルの左手を握りしめる。そしてシェリルも同じようにアルトの右手を握り返した。

「ねえ、アルトいつか“私を月に連れて行って”」

「ああ」

そう答えてアルトは今度は自分からシェリルにそっと口づけをしたのだった。

後日、アポロ計画90周年特番にてシェリルはアポロ計画にまつわる数々の雑学問題を難なく突破。番組制作スタッフの思惑を完全にうち砕くことに成功。

そしてカバーシングルとして発売した

「Fly Me to the Moon」

は銀河ネットワークヒットチャート1位に輝くというシェリル復活を全銀河系に知らしめる結果となったのでした。

‐おわり‐

 


 

あとがき:久々のマクロスフロンティア、アルト×シェリル(殆どシェリル×アルトな内容でしたが)の二次創作小説です。

もう少しゆっくりの執筆でも良かったのですが

「7月20日(アメリカ時間でアポロ11号、アームストロング船長が月面着陸を果たした日)までに掲載完了したい」

という思いで書き上げました。

part.1でSDF-1マクロスの進宙式やアポロ計画40周年事を書きましたがヱヴァンゲリヲン絡みで「Fly Me to the Moon」の歌詞を改めて読んで

“何ともシェリルらしい歌”

と感じたのがこの話を書くきっかけでもありました。

久々の小説ですが少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

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二次創作 マクロスF「Fly Me to the Moon part.1」

2009年07月17日 00時24分40秒 | 二次創作小説

「シェリル、いるか?」

マクロスフロンティア船団、アイランド1の一画にあるアパートメント。

銀河の妖精、シェリル・ノームが住まいとしているその部屋を早乙女アルトが訪ねたのは7月のある日曜だった。

宇宙生命体バジュラを巡る数々の事件が決着をみて、フロンティア船団がバジュラ本星を移住先として決定してからアルトは学業とS.M.Sの任務、シェリルは少しずつ芸能活動を再開していきながら美星学園で学業に励むという忙しくも楽しい日々を送っていました。

しばらく学校以外で落ち合える機会が設けられずアルトにとっては久しぶりのシェリル宅の訪問だった。

「居るわよ。ごめん、ちょっと手が離せないの。ロックを外したから入って」

インターフォン越しにシェリルの声が聞こえる。普段ならアルトがくれば玄関まで迎えに来るはずのシェリルがそうできないことを不思議に思いつつアルトは部屋に上がった。

「おい、シェリル何かあったのか…?って、えっ!?」

リビングまで来たアルトはテーブルの上を見てビックリした。難しそうな学術書らしきものや電子ブックのチップなどが山と積まれていたのである。

「ごめん、アルト部屋散らかってて」

床にも置かれた本の数々を整理しつつちょっと恥ずかしげにシェリルが謝る。

「シェリル、これは一体…?」

そう言いつつアルトは目に付いた本の一冊を手に取った。

「『人類、月に立つ』?」

およそ聞き慣れない本のタイトルにアルトは首を傾げた。

「今からちょうど90年前に行われた“アポロ計画”の記録よ」

シェリルが不思議がるアルトに答える。

「アポロ計画?」

アルトも「アポロ計画」の名前だけは学校の授業で聞いて覚えていた。

地球の唯一の衛星である“月”への有人飛行を目指した計画で、人類がセントラーディとの接触を果たす40年前、1969年に初めて人が月に降り立ったという概要しか覚えてはいなかったが。

よく見ると机に積まれた本もデータチップも“月”に関したものばかりだという事にアルトは気づいた。

「でもなんでシェリルがそんな古い話の本ばっかりを?」

「これよ」

そう言ってシェリルは

『アポロ計画90周年 特別番組“Moon 1969” 制作・著作FHK(フロンティア放送協会)』

とタイトルが書かれた企画書をアルトに見せた。

「この番組に私がゲストで出るのよ」

「それでこんなに本とか集めて予習を?」

「本当ならこんな事必要無いんだけどね」

「?」

「ほら、良くあるでしょ?いかにも何もしらなそうなアイドルとかが教養番組で“ボケ役”を演じているの。なんだか面白そうだからこの番組への出演依頼を受けたんだけど企画書読んでいたら私がその“ボケ役”を知らず知らずのうちにやらされそうになっているのに気づいたのよ」

「実際、私自身90年も前の出来事なんて殆ど知らなかったけど、なんだか悔しくて、それで色々調べてたの」

述懐まじりにシェリルが話す。一方のアルトといえばシェリルの負けん気がこんなところでも発揮されていることがちょっと微笑ましく思えていた。

「けどアルトが来るって判ってたらちゃんと片付けておくんだった」

「構わないさ」

悔しがるシェリルをそっとなだめるアルト。

「アルトはソファーで座って待ってて、すぐに片づけちゃうから」

「手伝わなくていいのか?」

「いいのよ」

そうアルトに言うとシェリルは散らかった本を片づけ始めた。

お言葉に甘えてソファーに腰掛けたアルトは置いてある本の一冊を手に取りパラパラと読み始めた。

シェリルの話を聞いても「人類の月への旅」にあまり関心が持てなかったアルトだったが、手に取った本を読む内、徐々に考えを改めていった。

地球と月との距離は約38万キロ。今や銀河系全域にまで活動域を広めた人類にとっては取るに足らない距離でも90年前の人々にとっては無事に生きて帰れないかも判らないという文字通り

『命懸けの旅路』

だったこと。月に降り立つまでの数々の出来事。その中には取り返しのつかない悲劇もあったがそれを乗り越えて月に最初の足跡を残した人々のドラマは直に地球や月を見たことがない(フロンティア船団が地球を発った後に生まれた)アルトにとっても熱いモノを感じずにはいられなかったのだった。

「…アルト?」

ある程度本を片づけたシェリルが戻ってくると真剣に本を読みふけるアルトの姿がそこにあった。アルトの真剣な眼差しにうっとりするシェリル。

ふとシェリルの気配に気づいたアルトが顔を上げた。

「どうしたんだ、人の顔をまじまじと見つめて」

「アルトの眼がすっごく真剣だったのが素敵だったから眺めてたのよ」

そう言われて気恥ずかしくなるアルト。

「どう、月へ至るまでの偽りなき物語の感想は?」

アルトの左隣にちょこんと座りながらシェリルが尋ねる。

「いや、これほど凄い出来事だったなんて、正直驚いてるよ」

「私もよ、最初どんなことだろうかと思ってたけど色々読む内に凄い出来事だったって判ったもの」

「今の私達からしたら地球の衛星に行く事なんて“小さな一歩”でしかない、その気になればバルキリー一機でここから月に行けるんだし。けど、当時の人たちにしてみれば月への一歩は間違いなく“偉大な飛躍”だったのだから」

普段になく感慨深げに語るシェリル。

「シェリル、その台詞って確か月に第一歩を記した…」

「あれ、やっぱりばれちゃった?」

「台詞回しはともかく俺もシェリルと同意見だけどな」

自身の台詞がニール・アームストロング船長が月への第一歩を残した時のそれの引用だとアルトにばれたけど、その真意に同意してくれたことが嬉恥ずかしのシェリル。

残りの本を片づけようとしながら照れ隠しの為かシェリルから思いがけずハミングが飛び出した。

明らかにシェリルが得意とする楽曲とは違う静かな曲調のハミングにハッとなるアルト。

「シェリル、そのハミングは?」

「あ、今の曲?アポロ計画のことを調べている内に当時流行った歌謡曲に出くわしたの。なんでも90年代にも日本で有名になった曲とか」

アルトの問いに丁寧に答えるシェリル。

「そうなんだ…。でも珍しいなシェリルがあんな曲調の歌を覚えるなんて」

「凄く素敵な歌だったのよ」

アルトに言葉を返した後、シェリルは少し考えた。そして

「せっかくだからアルトの為に歌ってあげる」

と切り出した。

「それは嬉しいな」

「こんなサービスめったにしないんだからね」

お決まりの台詞の後、シェリルは静かに歌い出した。

‐つづく‐


 

あとがき:久々の二次創作です。今年が

SDF-1マクロスの進宙式の年

であると同時に

アポロ11号月面着陸(人類初の月到達)40周年

という記念すべき年ということで思いついたネタです。実のところこの二つにプラスして

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

絡みであれこれ調べている内にネタを閃いてしまったという事実もあったりします。

一応これでもアルシェリ小説です。鍵はシェリルがアルトに歌ってあげると言った歌なんですが、この作品のタイトルでモロばれです(苦笑)。

長くなったので区切りましたが、次のお話でアルシェリ色を全面に出す予定です。

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当ブログはアルト×シェリル(アルシェリ)<@マクロスF>を応援しております。

2008年07月12日 22時45分41秒 | 二次創作小説

先日放送分のマクロスF、情報が出れば出るほど判らないことが出てきて先々気になるところであったりします。

その一方で主人公早乙女アルトとヒロイン二人、シェリル・ノームとランカ・リーの関係がどうなっていくのかも大変気になることです。

12話以降、事実上の

『ずっとランカのターン』

が続いていて、先の展開が読めない状態です。ランカも凄く素敵なキャラだと思うのですが、カップリング的には

『アルト×シェリル』

が好きだったりします。

元々シェリルに対する印象が最悪だった(第1話で素人を楽屋に入れるなとグラス中尉に怒っていたのを見て「この人プライド高すぎ」と思いました)のですが3話でのアルト達とのやり取りで徐々に印象が変わりました。

ここ数話でグレイスに裏切られていた(利用されていた?)わ、アルトへの気持ちが空回りしてしまっているわでシェリルの今後がますます気になるところです。

ところで先日マクロスF14話の感想を書いたときに書ききれなかったツッコミ、感想を書いておきたいと思います。

  • 新統合軍の活躍ぶりに内心拍手
  • やはり反応兵器は凄すぎる
  • マクロス・クォーターの艦長さんはさり気なく漢(おとこ)だと思う
  • 腹黒すぎるよレオン・三島
  • グレイスさん、ガリア4からどう戻ってきたと説明する気?
  • みんなしてピザ食べていたのはピザハットとの提携キャンペーン?(放送前にキャンペーン自体終了してますが)

マクロスF15話が待ち遠しいです。時節ネタでアルシェリ書ければ良いのですが、時間が確保できるかちょっと怪しいです(orz)。

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