ここから先は機動戦士ガンダムSEED(DESTINY)のパラレル小説になります。
この小説に関しては
- キラ×フレイが苦手
- パラレル設定が苦手
- 色んなネタの天こ盛りが苦手
な方にはお勧めできませんのでご了承下さい。
『機動戦士ガンダムSEED SCHARLACHROT』
01.プラント絶対防衛戦略空域
コズミック・イラ76年
静寂の宇宙を進む一隻の艦。地球連合、厳密にはユーラシア連邦所属の宇宙戦艦
『ドミニオン』
である。かつて地球連合に在籍していたアークエンジェル級二番艦「ドミニオン」と同じ名を持つが、こちらは昨年「新ドミニオン級」の一番艦として建造された艦である。
そのメインブリッジで艦長を務めるナタル・バジルールは複雑な思いを胸に秘め艦の進む先を見つめていた。
<よもや、こんな時が来るとはな…>
5年前、地球連合とザフトとの戦いはプラントの最終防衛ライン、宇宙要塞ヤキン・ドゥーエでの決戦に至っていた。その戦いに地球連合の宇宙戦艦ドミニオンの艦長として赴いていたナタルだったが、ある偶然が彼女の運命を大きく変える事となる。
先にアラスカでの地球連合の味方を巻き込んでの大量破壊兵器「サイクロプス」の使用に不信を抱き軍籍を離脱したアークエンジェルとの戦闘を前にしていたドミニオンだったが一発の流れ弾ミサイルが艦の機関部に命中、即座の爆発は免れたものの機関緊急停止、戦闘不能という状態に陥ってしまったのである。
態勢を立て直そうにも、出撃した三機のガンダム部隊とは連絡が取れなくなっており、ナタルは”彼女”や他の乗組員のむざむざ危険に晒すわけにはいかないと総員退艦の決定を下す。
だがその決定に従わない者が一人いた。オブザーバーとして艦に乗っていた軍事企業社長にして反コーディネーター組織「ブルーコスモス」の盟主ムルタ・アズラエルが総員退艦の決定を
「敵前逃亡」
と激昂、なんと他のドミニオン乗員が居る中でナタルを銃撃してしまう。
ナタルはアズラエルのやり方にかねてから不信を抱いていて、彼をドミニオンに閉じこめた上で艦と一緒に果てるつもりだったのだが、アズラエルの銃撃によって負傷したことで他の乗組員に助けられる形でドミニオンを後にすることになる。(アズラエルは身柄を拘束された上で脱出艇の貨物室に放り込まれて命だけは助かった)。
艦を脱出後、ドミニオンの乗員は全員がアークエンジェルに救出される。アークエンジェルの治療室で意識が戻ったナタルは連合とザフトの最終決戦がほぼ痛み分けの状態で集結したこと、そして”彼女”が長らく再会を待ち望んでいた”彼”と再会できた事を知らされる。
だがその”彼”は三隻同盟の盟主だったラクス・クラインに請われプラントに行ってしまう事となる。そして”彼女”が驚くべき事に自分をバジルール家の籍に入れて欲しいとナタルに頼み込んできたのだ。
最初は驚いたナタルだったが”彼女”の提案を受け入れる事となる。
年明け早々に締結された
「ヘリオポリス休戦条約」
により、連合とプラントとの戦いは一応の集結をみたものの、世界情勢は決して安定はしなかった。連合は休戦条約がプラント側有利であることへの(主に大西洋連邦の主張による)不満による政治的対立や、場合によっては軍事的な衝突。
プラントもプラント側で対連合強行派と穏健派による対立が顕著になっていたのだ。
そんな中、ある大きな動きがC.E73年に起きる。当時まだ一プラント最高評議会議員に過ぎなかったラクス・クラインが『血のバレンタイン事件』の追悼集会において
「地球に住む者も宇宙(そら)に住む者も同じ”人”である」
という大演説を行い、地球連合内でも大きな反響を呼ぶことになる。そしてユーラシア連邦・大洋州連合を中心に
「新・公民権運動」(コーディネーター差別の禁止を法令化する運動)
が巻き起こる。ナタルや”彼女”もその運動に共感を示したのだが、この事が元で大西洋連邦軍から放逐される事になってしまう。
新・公民権運動が起こった73年当時、先のアラスカ事件で人的・物理的に大打撃を被ったユーラシア連邦が大西洋連邦側に表向き地球連合内での人事異動という形での人的補償を求めていたのだが、大西洋連邦は異動対象者をとくにコーディネーターに友好的と考えられる人物を選んで連邦から放逐していたのだ。
だがナタルも”彼女”も大西洋連邦からの放逐を逆に感謝していた。元々アラスカでのサイクロプス使用の件で大西洋連邦に不満を抱いていた上に、特に”彼女”は”彼”との関係から反コーディネーター色の強い大西洋連邦軍に飽き飽きしていたのである。
異例とも言えるユーラシア連邦軍への移籍を果たした二人だったが、ナタルは指揮に秀でた艦長として、”彼女”は優秀なモビルスーツパイロットとして活躍する事となる。
そしてC.E76年、二人はユーラシア連邦軍第7特殊戦略部隊
「ランドグリーズ隊」
の一員として前代未聞の任務に就くことになる。
「ザフトと地球連合の共同作戦」
に。
共同作戦に参加するザフトの艦と会合する為にドミニオンは地球とプラントのほぼ中間にあるデブリ帯
「プラント絶対防衛戦略宙域」
まで艦を進めたところだった。
「艦長、ナタル艦長…!」
「…!?」
部下に呼びかけられ我に返るナタル。
「…大丈夫ですか!?」
「すまない、今度の作戦の事で少し考え事をしすぎていた」
「まぁ私もまさかザフトと共同作戦を行うなんて思っていませんでしたし、皆も色々思うところがあると思います。報告が遅れました、まもなくザフト艦との会合予定時刻です」
「判った」
そう答えるとナタルは少し深めに息を吸い込んだ。ザフトとの共同作戦そのものも異例ならば共同作戦を行うザフト艦も異例、そして何より”彼”がその艦のモビルスーツ隊の隊長という事実がナタルに複雑な思いをさせていた。
いや自分がというより”彼女”が今度の件をどう思っているかがナタルは気がかりで仕方なかった。
「艦長、前方にザフト艦。特務演習艦『グレイプニル』です」
オペレーターのマスミ・ユイザキが冷静な声で報告する。ナタルはグレイプニルの艦影をみて懐かしさを感じていた。
ザフト特務演習艦グレイプニル。かつてアークエンジェル級二番艦ドミニオンと呼ばれた艦の現在の姿なのである。
「私はモビルスーツ隊を引き連れてグレイプニルに向かう。副長、後は任せたぞ」
「了解です、艦長」
グレイプニルの副艦長、アーノルド・ノイマンは敬礼をしてナタルを見送った。
※後書き
SEEDパラレル小説の記念すべき第一話なのですが、主役たる二人がまだ出てきません。SEED本編エンディング直前から色々いじり回しているため、その説明も必要なので主役の二人(”彼”と”彼女”)が登場するのはもう少し後になりそうです。
予告じゃありませんが、SEED(DESTINY)本編からするとキャラの立ち位置がかなり変わってます。”彼女”とナタルは言うに及ばず、ラクスと”彼”なんかもそうですし、”彼”の妹(個人的には兄妹説をとってます)もある意味偉いことになってます。
出来れば週一回で更新できれば良いのですが、ともかく頑張りたい次第です。