Lespedeza Museum of Photography レスペデーザ写真美術館

カメラマンな管理人のおたく趣味の雑記と二次創作&コスプレ写真のブログです。Lespedeza(萩)の花言葉は柔軟な精神。

二次創作 マクロスF「Fly Me to the Moon part.2」

2009年07月17日 23時16分55秒 | 二次創作小説

シェリルがひょんな事から知った地球の古い歌。

“素敵な曲”と自身が評する歌をシェリルはアルトに披露した。

♪Fly me to the moon Let me sing among those stars

伴奏なしに軽やかに歌い出すシェリル。アルトはさすがはシェリルだと彼女が歌う姿を眺めながら改めて感心した。

「♪Let me see what spring is like On Jupiter and Mars

「♪In other words, hold my hand

そのフレーズと共にシェリルがそっとアルトの左腕を引き寄せる。

「♪In other words, darling kiss me

シェリルが何かを切望するような瞳でアルトを見つめながらそのフレーズを歌ったときアルトは顔を真っ赤にした。

「お、おいシェリルいきなり何を言い出すんだ!?」

アルトの言葉にシェリルが歌うのを止める。お互い既に深い仲の筈なのにこういう事だけは未だにアルトは苦手としていた。

「何って、ただの歌のフレーズじゃない、一体どうしたって言うのよ?」

しれっと答えを返すシェリル。それを聞いたアルトは顔を真っ赤にしたまま黙り込む。そんなアルトの様子を見てシェリルが何かを閃いた。

「ねぇ、アルトここで『キスして』って言ったらしてくれる?」

あまりにストレートなシェリルの問いかけ。あまりのことにアルトは絶句して何も答えることが出来なかった。

そんなアルトを様子を見たシェリル。答えが返ってこないことにショックを受けた様子で

「アルト、酷い!」

と顔を背けてしまった。シェリルの態度にアルトは別の意味で慌てふためいた。シェリルの左側に回り込んで必死に説明する。

「まった、シェリル!キスしたくないとかそうじゃなくて、その急にそういうこと言われても俺慣れてないし…」

恥も外聞もなく答えを返せなかった事を自分のウブさが原因だと説明するアルト。

「だからシェリル、機嫌をなおして…」

そこまで言ってアルトは自分の必死な姿をにっこり眺めているシェリルに気づき、自分がシェリルにあそばれていたことを悟った。

「そういうウブだけど真面目なところもアルトの素敵なところよ」

シェリルがそっと顔を近づけ、お互いの唇が触れる。その過去に何度か経験した感触にアルトはシェリルに対するほんの僅か起こった怒りの気持ちも吹き飛んでしまった。

安堵感からかソファーにへたり込むアルト。そんな彼を見ながらシェリルは歌の続きを紡ぎ始めた。

「♪Fill my heart with song Let me sing for ever more

<シェリルが気に入るのも判るな>

歌を聴いてそんなことを思うアルト。

「♪You are all I long for All I worship and adore

さらに軽やかに歌うシェリル。歌詞の意味を理解したアルトはまたしてもハッとなる。

「♪In other words, please be true

「♪In other words, …

シェリルはアルトの耳元でそっと囁くように最後のワンフレーズを歌った。

「……!!!!!」

もし同じ部屋に誰か居ても全く聞こえないであろうと思えるほどの小さな囁きだったがアルトにとって

I love you

という最後のフレーズは強烈きわまりないインパクトだった。嬉しさと恥ずかしさで完全にノックアウト。ここにアルトの被撃墜記録がもう一つ加わったのであった。

その後二人はしばらくソファーで寄り添って座っていた。何を語るでも何かするでもなくただお互いが近くにいるという事だけで十分満足に思えたからだった。

「ねえ、アルト。私久々に曲を出すわ」

話を切りだしたのはシェリルだった。芸能活動を徐々に復活させていたとはいってもシェリルはまだ新しく曲を出していなかった。

「曲を出すって?」

「アルトに歌ってあげた“Fly Me to the Moon”。あの曲もっと色んな人に聞いて貰いたいの」

「良い事じゃないか」

「ありがとう、アルト」

そう答えたアルトはそっとシェリルの左手を握りしめる。そしてシェリルも同じようにアルトの右手を握り返した。

「ねえ、アルトいつか“私を月に連れて行って”」

「ああ」

そう答えてアルトは今度は自分からシェリルにそっと口づけをしたのだった。

後日、アポロ計画90周年特番にてシェリルはアポロ計画にまつわる数々の雑学問題を難なく突破。番組制作スタッフの思惑を完全にうち砕くことに成功。

そしてカバーシングルとして発売した

「Fly Me to the Moon」

は銀河ネットワークヒットチャート1位に輝くというシェリル復活を全銀河系に知らしめる結果となったのでした。

‐おわり‐

 


 

あとがき:久々のマクロスフロンティア、アルト×シェリル(殆どシェリル×アルトな内容でしたが)の二次創作小説です。

もう少しゆっくりの執筆でも良かったのですが

「7月20日(アメリカ時間でアポロ11号、アームストロング船長が月面着陸を果たした日)までに掲載完了したい」

という思いで書き上げました。

part.1でSDF-1マクロスの進宙式やアポロ計画40周年事を書きましたがヱヴァンゲリヲン絡みで「Fly Me to the Moon」の歌詞を改めて読んで

“何ともシェリルらしい歌”

と感じたのがこの話を書くきっかけでもありました。

久々の小説ですが少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

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二次創作 マクロスF「Fly Me to the Moon part.1」

2009年07月17日 00時24分40秒 | 二次創作小説

「シェリル、いるか?」

マクロスフロンティア船団、アイランド1の一画にあるアパートメント。

銀河の妖精、シェリル・ノームが住まいとしているその部屋を早乙女アルトが訪ねたのは7月のある日曜だった。

宇宙生命体バジュラを巡る数々の事件が決着をみて、フロンティア船団がバジュラ本星を移住先として決定してからアルトは学業とS.M.Sの任務、シェリルは少しずつ芸能活動を再開していきながら美星学園で学業に励むという忙しくも楽しい日々を送っていました。

しばらく学校以外で落ち合える機会が設けられずアルトにとっては久しぶりのシェリル宅の訪問だった。

「居るわよ。ごめん、ちょっと手が離せないの。ロックを外したから入って」

インターフォン越しにシェリルの声が聞こえる。普段ならアルトがくれば玄関まで迎えに来るはずのシェリルがそうできないことを不思議に思いつつアルトは部屋に上がった。

「おい、シェリル何かあったのか…?って、えっ!?」

リビングまで来たアルトはテーブルの上を見てビックリした。難しそうな学術書らしきものや電子ブックのチップなどが山と積まれていたのである。

「ごめん、アルト部屋散らかってて」

床にも置かれた本の数々を整理しつつちょっと恥ずかしげにシェリルが謝る。

「シェリル、これは一体…?」

そう言いつつアルトは目に付いた本の一冊を手に取った。

「『人類、月に立つ』?」

およそ聞き慣れない本のタイトルにアルトは首を傾げた。

「今からちょうど90年前に行われた“アポロ計画”の記録よ」

シェリルが不思議がるアルトに答える。

「アポロ計画?」

アルトも「アポロ計画」の名前だけは学校の授業で聞いて覚えていた。

地球の唯一の衛星である“月”への有人飛行を目指した計画で、人類がセントラーディとの接触を果たす40年前、1969年に初めて人が月に降り立ったという概要しか覚えてはいなかったが。

よく見ると机に積まれた本もデータチップも“月”に関したものばかりだという事にアルトは気づいた。

「でもなんでシェリルがそんな古い話の本ばっかりを?」

「これよ」

そう言ってシェリルは

『アポロ計画90周年 特別番組“Moon 1969” 制作・著作FHK(フロンティア放送協会)』

とタイトルが書かれた企画書をアルトに見せた。

「この番組に私がゲストで出るのよ」

「それでこんなに本とか集めて予習を?」

「本当ならこんな事必要無いんだけどね」

「?」

「ほら、良くあるでしょ?いかにも何もしらなそうなアイドルとかが教養番組で“ボケ役”を演じているの。なんだか面白そうだからこの番組への出演依頼を受けたんだけど企画書読んでいたら私がその“ボケ役”を知らず知らずのうちにやらされそうになっているのに気づいたのよ」

「実際、私自身90年も前の出来事なんて殆ど知らなかったけど、なんだか悔しくて、それで色々調べてたの」

述懐まじりにシェリルが話す。一方のアルトといえばシェリルの負けん気がこんなところでも発揮されていることがちょっと微笑ましく思えていた。

「けどアルトが来るって判ってたらちゃんと片付けておくんだった」

「構わないさ」

悔しがるシェリルをそっとなだめるアルト。

「アルトはソファーで座って待ってて、すぐに片づけちゃうから」

「手伝わなくていいのか?」

「いいのよ」

そうアルトに言うとシェリルは散らかった本を片づけ始めた。

お言葉に甘えてソファーに腰掛けたアルトは置いてある本の一冊を手に取りパラパラと読み始めた。

シェリルの話を聞いても「人類の月への旅」にあまり関心が持てなかったアルトだったが、手に取った本を読む内、徐々に考えを改めていった。

地球と月との距離は約38万キロ。今や銀河系全域にまで活動域を広めた人類にとっては取るに足らない距離でも90年前の人々にとっては無事に生きて帰れないかも判らないという文字通り

『命懸けの旅路』

だったこと。月に降り立つまでの数々の出来事。その中には取り返しのつかない悲劇もあったがそれを乗り越えて月に最初の足跡を残した人々のドラマは直に地球や月を見たことがない(フロンティア船団が地球を発った後に生まれた)アルトにとっても熱いモノを感じずにはいられなかったのだった。

「…アルト?」

ある程度本を片づけたシェリルが戻ってくると真剣に本を読みふけるアルトの姿がそこにあった。アルトの真剣な眼差しにうっとりするシェリル。

ふとシェリルの気配に気づいたアルトが顔を上げた。

「どうしたんだ、人の顔をまじまじと見つめて」

「アルトの眼がすっごく真剣だったのが素敵だったから眺めてたのよ」

そう言われて気恥ずかしくなるアルト。

「どう、月へ至るまでの偽りなき物語の感想は?」

アルトの左隣にちょこんと座りながらシェリルが尋ねる。

「いや、これほど凄い出来事だったなんて、正直驚いてるよ」

「私もよ、最初どんなことだろうかと思ってたけど色々読む内に凄い出来事だったって判ったもの」

「今の私達からしたら地球の衛星に行く事なんて“小さな一歩”でしかない、その気になればバルキリー一機でここから月に行けるんだし。けど、当時の人たちにしてみれば月への一歩は間違いなく“偉大な飛躍”だったのだから」

普段になく感慨深げに語るシェリル。

「シェリル、その台詞って確か月に第一歩を記した…」

「あれ、やっぱりばれちゃった?」

「台詞回しはともかく俺もシェリルと同意見だけどな」

自身の台詞がニール・アームストロング船長が月への第一歩を残した時のそれの引用だとアルトにばれたけど、その真意に同意してくれたことが嬉恥ずかしのシェリル。

残りの本を片づけようとしながら照れ隠しの為かシェリルから思いがけずハミングが飛び出した。

明らかにシェリルが得意とする楽曲とは違う静かな曲調のハミングにハッとなるアルト。

「シェリル、そのハミングは?」

「あ、今の曲?アポロ計画のことを調べている内に当時流行った歌謡曲に出くわしたの。なんでも90年代にも日本で有名になった曲とか」

アルトの問いに丁寧に答えるシェリル。

「そうなんだ…。でも珍しいなシェリルがあんな曲調の歌を覚えるなんて」

「凄く素敵な歌だったのよ」

アルトに言葉を返した後、シェリルは少し考えた。そして

「せっかくだからアルトの為に歌ってあげる」

と切り出した。

「それは嬉しいな」

「こんなサービスめったにしないんだからね」

お決まりの台詞の後、シェリルは静かに歌い出した。

‐つづく‐


 

あとがき:久々の二次創作です。今年が

SDF-1マクロスの進宙式の年

であると同時に

アポロ11号月面着陸(人類初の月到達)40周年

という記念すべき年ということで思いついたネタです。実のところこの二つにプラスして

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

絡みであれこれ調べている内にネタを閃いてしまったという事実もあったりします。

一応これでもアルシェリ小説です。鍵はシェリルがアルトに歌ってあげると言った歌なんですが、この作品のタイトルでモロばれです(苦笑)。

長くなったので区切りましたが、次のお話でアルシェリ色を全面に出す予定です。

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