南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

高次脳機能障害の時間的経過

2009年07月29日 | 高次脳機能障害
以前、自賠責保険における高次脳機能障害
ということで、
「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」という報告書
をとりあげましたが、今回その内容の中から、
 ”時間的経過”
という点をご紹介したいと思います。

 報告書には次のように書かれています。

 脳外傷による高次脳機能障害は、急性期には重篤な症状が発現していても、時間の経過とともに軽減傾向を示す場合がほとんどである。これは、外傷後の意識障害の回復過程とも似ている
 したがって、後遺症の判定は、急性期の神経学的検査に基づくべきではない。
 経時的に検査を行って回復の推移を確認すべきである。
 しかし、症例によっては、回復が少ないまま重度な障害が持続する場合もある。

この報告書の箇所はわかりやすいと思います。
つまり、高次脳機能障害は最初は重度であっても、だんだん回復する傾向が多いということです。
早い段階で知能検査などが行われていても、それだけに頼るのではなく、何回か検査を行って後遺症の有無を確定すべきだということです。
もっとも、すべてのケースがそうなるわけではなく、重度のままで障害が残るケースもあります。

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夏休み雑感

2009年07月22日 | 未分類
小学校や中学校は夏休みの期間になりましたね。

この期間は、裁判所は夏期休廷期間といって、法廷が休みになります。
(といっても、裁判所自体が休みになると言う意味ではありません、詳しくは過去記事→裁判官の夏期休廷をご参照ください)


通常の年ですと、このくらいの時期から法廷が入らなくなり、8月のお盆明けとか8月一杯まで、ある程度の余裕が生まれることが多いのですが、今年は7月一杯までは法廷がかなりタイトに入っております。

8月は下旬まで法廷はあまり入っていないのですが、その間に提出しなければならない書面(準備書面など)がたまっており、この準備に忙しくなりそうです。
(過去記事→弁護士の仕事~書面の作成


8月は暑いので、書面を作成するための効率が明らかに落ちます。

吉川英治などを読んでおりますと、夏は軽井沢で小説を書いていたみたいです。
あまりにも暑いと本当に涼しいところに行き、書面を作成する方がよいのではないかと思ったりもしますが、そのためには段ボール2,3箱程度の資料をもっていかなければなりませんし、そこまでして避暑地に行っても結局遊んでしまうような気もしますので、やはり事務所でこつこつと書面を作成するしかないのかなと思う今日この頃です。

当事務所の夏休みの時期については
過去記事→こちら
をご参照ください(休みの時期というものはありませんが、金子は不定期に休みをとらせていただきます)


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裁判官は事故現場に行くか

2009年07月14日 | 未分類
交通事故の民事裁判で裁判官は事故現場を見に行きません。
ドラマでは、事件が発生すると裁判官が現場を見に行くような設定になっていることが多いですが、これはドラマの都合でそうなっているだけであって、現実は全く違います。

それでは、裁判官はどのように事故の現場の状況を認識するのかというと、刑事事件の時に作成された記録、特に、
実況見分調書
を活用するのです。

 実況見分調書は、
・事故時点での現場の状況
・被害者や加害者からの見通し状況
・車両の損壊状況
等が記載されておりますので、それらを参考にするのです。

 裁判が始まってから、事故現場に行ったとしても、事故現場が事故時点と変わってしまっていることもありますし、自動車が走っているところで、距離を測定するのは非常に危険です。
 争点が決まらない時点で現場を見ても現場の雰囲気がわかるだけで、どのように現場を証拠化するかということのポイントが定まりません。

 このようなことから、裁判官が事故現場に行くことはなく、弁護士もそのような裁判官の思考に沿って行動するため、現場に行くケースはそう多くはありません。

 刑事事件の実況見分調書がしっかり作成されていればいるほど、それを活用すればよいので、弁護士としても事故現場に行く必要性は低くなります。

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高次脳機能障害の発症の原因

2009年07月08日 | 高次脳機能障害
以前、自賠責保険における高次脳機能障害
ということで、
「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」という報告書
をとりあげましたが、今回その内容の中から、
 発症の原因及び症状の併発
という点をご紹介したいと思います。

 報告書には次のように書かれています。

 認知障害、行動障害、人格変化は、主として
  脳外傷によるびまん性脳損傷
を原因として発症するが、
  局在性脳損傷(脳挫傷、頭蓋内血腫など)
との関わりも否定できない。
 実際のケースでは、両者が並存することがしばしば見られる。

 また、びまん性脳損傷の場合、上記例の症状だけでなく、
  小脳失調症、痙性片麻痺あるいは四肢麻痺
の併発も多い。
 これらの神経症状によって、起立や歩行の障害がある事案においては、脳外傷による高次脳機能障害の存在を疑うべきである。

 以上のように、報告書では、高次脳機能障害の発症の原因として
  脳外傷によるびまん性脳損傷
  局在性脳損傷(脳挫傷、頭蓋内血腫など)
  又はその両方
をあげています。

 局在性脳損傷というのには、”脳挫傷、頭蓋内血腫など”という例があげられていることからイメージがわきやすいと思いますが、脳の一部(局在)が脳挫傷や頭蓋内血腫で損傷をうけるということです。
 
 びまん性脳損傷というのは、言葉だけからするとイメージがわきにくいのですが、
 ”びまん”いうのは、感じでは、瀰漫と書きまして、
 「一面に広がり満ちること」(大辞林)
という意味です。

 つまり、”局在性”が脳の一部の損傷にとどまるのに対し、びまん性の方は脳の全体に損傷が広がっているというイメージでとらえていただければよいのではないかと思います。

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被害者の飲酒を過失相殺でどこまで考慮するか

2009年07月02日 | 未分類
 被害者が酒を飲んで、帰り道に事故に遭うということは、時に見られることですが、この場合、被害者の飲酒を過失相殺にどこまで考慮するかという事が問題になります。

 どこまで考慮するかはケースバイケースなのですが、参考になる裁判例がありましたので、紹介しておきます。

 大阪地裁平成20年7月31日判決(自保ジャーナル178710ページ)は、
 被害者が自転車に乗っていたケースで、
「被害者が飲酒の上で、自転車を運転していた事実はうかがえるけれども、その度合いを客観的に裏付ける証拠もなく初診時に暴言を吐いていたのも飲酒酩酊の影響か、本件事故の影響かは明らかではないから、過失相殺の修正要素とすべきではない」
としています。
 
 被害者が飲酒していた場合、修正要素として考慮されることが多いとは思うのですが、このように修正要素とすべきではないとした裁判例もあることは参考になります。

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