南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

TMT(トレイルメイキングテスト)

2008年06月29日 | 高次脳機能障害の検査方法
高次脳機能障害の後遺障害診断書を見ていると、
"TMT"
という検査の結果が書かれていることがあります。

 例えば、
「TMT PartA 38秒、PartB82秒(いずれも20~39歳の25~50パーセンタイル)」
というような記載です。

 TMTとは、トレイルメイキングテストの略です。
 トレイルメイキングテストとは、注意障害の検査方法で、情報処理能力、注意の配分能力など、主に視覚的な注意機能を評価するものです(高次脳機能障害ポケットマニュアルp56)

 数字をつないでいくと絵が浮き上がって出てくるパズルがありますよね。ああいうように、数字をつないでいくテストです。

 もちろん、トレイルメイキングテストはパズルではないので、数字をつないでいっても、絵などはでません。

 このテストは、”PartA、PartB”とか”Aパターン、Bパターン”という2つのものがありますが、それぞれがどのようなものかについては、「高次脳機能障害ポケットマニュアル」の次の記載がわかりやすいと思います。

 課題はAパターン、Bパターンと分けられ、Aパターンでは、紙面上にランダムに配置された1~25までの数字を順に線で継いでいくといった課題であり、その手順の正確性や速度などを評価する。
 Bパターンは1~13までの数字の間に平仮名を50音順に入れていく課題(1→あ→2→い・・・といったように)である。
 Bパターンでは、Aパターンよりも注意の配分や連続的な注意変換を要求され、手順の複雑さや施行の切り替えなどから遂行機能評価として用いられることもある。
 (以上、「高次脳機能障害ポケットマニュアル」からの引用)

 なお、"trail"というのは、「(人・動物が通ってできた荒野・山中の)小道」というような意味ですから( プログレッシブ英和中辞典)、トレイルメイキングテストというのは、小道を作っていくテストという意味になるかと思います。



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FAB(前頭葉機能検査)

2008年06月16日 | 高次脳機能障害の検査方法
 高次脳機能障害の方の後遺障害診断書をみていましたら、
 ”FAB 11点”
という記載がありました。

 これが何を意味するのかわからなかったので、ネットで調べてみましたら、すぐに出ました。
http://www.kumon-lt.co.jp/basics/fab.php?kid=80&clr=def

 FABとは、
  ”Frontal Assessment Battery at bedside”
の略で、
 前頭葉機能検査
と称されているものです。
 簡便に前頭葉機能を測定できる6つの項目からなる面接形式の検査ということで、満点は18点。健常な人だとだいたい8歳以上で満点がとれるそうです。

 8歳以上で満点が取れるテストで11点ということは、前頭葉機能に問題があるんだろうなということがわかります。

 それにしても、ネットというのは便利です。
 検索がこれほど便利になる以前なら、図書館に行って、医学大辞典やら何やらをひっくり返して、素人にはわからない記述と格闘しなければならないですから。

 情報は簡単に取れるようになりましたので、弁護士に求められるのはさらにそこから先の力になってくるのではないかと思います。
 たとえば、そのような情報を用いて、依頼者の方に説明する能力とか、相手方や裁判所を説得する能力とか。

 


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N式精神機能検査 下

2006年04月01日 | 高次脳機能障害の検査方法
 N式精神機能検査の検査内容を把握するために、高次脳機能障害関係の本をまず参照したのですが載っておらず、戸惑いました。
 インターネットで検索をかけて見ましたら、「痴呆の疑いがある老人を対象とした質問式の評価表のことをいいます。痴呆の程度が5段階の広い範囲で評価できるように作成されています。したがって、臨床上の継時的経過観察・薬物療法やリハビリテーションなどの判定にも利用できます。」というような定義(医学用語解説のHPから)はすぐ見つかったのですが、これでは何のことやらさっぱりわからず、イメージがつかめなかったので、いろいろ探してみましたところ、平良内科介護保険施設のホームページがそのものを掲載していただいておりましたので、リンクを貼らせていただきました。
 やはりこのように具体的にどんなものなのかの資料がないと、イメージしにくいものですね。

 インターネットを検索している限りでは、高齢者のための痴呆検査という色彩が強いようです。
 ただ、長谷川式やミニメンタルステートは、交通事故の高次脳機能障害でも頻繁に使用されているのに、このN式精神機能検査があまり交通事故の高次脳機能障害の後遺障害診断書で見かけない理由はよくわかりません。

 ところで、N式精神機能検査の点数評価ですが、
29以下 重度痴呆
30~59 中等度痴呆
60~79 軽度痴呆
80~94 境界
95以上 正常
とされているようです。



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N式精神機能検査 上

2006年03月31日 | 高次脳機能障害の検査方法
 N式精神機能検査とは、長谷川式検査やミニメンタルステートと同じく、痴呆かどうかをはかるためのスクリーニング検査です。
 「痴呆」というと、徘徊する人を、頭に思い浮かべてしまいがちですが、医学的には、
  痴呆=記憶と判断能力の障害
をいいますので、徘徊する人だけが痴呆なのではありません。
 また「痴呆」というと、もう治らないというイメージがありますが、医学的にはそういうものではなく、治療可能な痴呆もあるとされています。
 
 スクリーニング検査というのは、大雑把に、患者さんが痴呆か痴呆でないか、鑑別(スクリーニング)することです。長谷川式やミニメンタルステートよりはやや詳しい検査方法です。
 その詳細は、こちら(平良内科介護保険施設のホームページ)。

 N式精神機能検査とは、英語では”Nishimura Dementia Scale”といい、
  Dementia=痴呆
ですから、意味としては、「西村さん作成の痴呆尺度(スケール)」ということになりましょうか。





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グラスゴー コーマ スケール(GCS) 下

2006年03月29日 | 高次脳機能障害の検査方法
 グラスゴー コーマ スケール(GCS)は、開眼・発語・運動反応に分けて、それぞれ評価します。

 開眼(E)は4点満点で
     4点  自発的に開眼
     3点  言葉によって開眼
     2点  痛み刺激によって開眼
     1点  開眼しない

  発語(V)は5点満点で
     5点  指南力良好
     4点  会話混乱
     2点  言語混乱
     3点  理解不明の声
     1点  発語せず

  運動反応(M)は6点満点で
     6点  命令に従う
     5点  払いのける
     4点  逃避的屈曲
     3点  異常な屈曲
     2点  伸展する
     1点  全く動かない

 グラスゴーコーマスケール(GCS)のカルテ等での記載は
   E4 V1 M5
のようになっています。
 これで「開眼は自発的にするが、発語はなし、運動反応は払いのけるレベルにある」という意味になります。

 グラスゴーコーマスケール(GCS)は開眼、発語、運動反応の点数を合計して、重症度をみることもします。
 先ほどの E4V1M5 の例ですと
   E+V+M=4+1+5=10点
ということになります。

 満点が15点ですから
   13~15点  軽度
   9~12 点  中等度
   8 点以下  重度
と分類されています。
 この分類は、頭部外傷では、予後(後遺症がどのくらい残るかどうか)とも関連性が高いとされています。


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グラスゴー コーマ スケール (GCS) 上

2006年03月27日 | 高次脳機能障害の検査方法
 グラスゴーコーマスケールとは、ジャパンコーマスケール(JCS)と同様、意識レベルの測定基準です。

 意識レベルが交通事故による高次脳機能障害と、どのような関わりがあるかについては、ジャパンコーマスケールのときに書きましたので、そちらを参照して下さい。(→こちら

 グラスゴーコーマスケール(GCS)は、頭部外傷の意識障害の評価方法として、世界で最もよく使用されているものです。ジャパンコーマスケール(JCS)は国内専用、グラスゴーコーマスケール(GCS)は万国共通といったところでしょうか。

 カルテや看護記録でも、JCSと並んで書かれたりします。
GCSは、JCSとはまた別の観点から、意識障害を評価します。
   開眼   (略称“E”)
   発語   (略称“V”)
   運動反応 (略称“M”)
について、それぞれ点数で評価します。
いずれも点数が低くなると、意識レベルが低くなるようになっています。JCSは数字が低いほど意識レベルが高くなるので、GCSと比べてこの点は逆になっています。



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ジャパン コーマ スケール(JCS) 下

2006年03月25日 | 高次脳機能障害の検査方法
初めてカルテを読むような方は、とりあえずジャパンコーマスケール(JCS)が一桁なのか、二桁なのか、三桁なのかを頭において、読んだらよいと思います。

 既に述べましたように
  一桁  覚醒
  二桁  刺激があれば覚醒
  三桁  刺激があっても覚醒しない
ですから、三桁台にあれば、これは相当重症なんだなと、読んでいけばよいと思います。

 また受傷時だけでなく、その後も意識レベルというのは変化していきますから、その変化にも気をつけた方がよいでしょう。
 受傷当初は二桁台だったのに、時間経過と共に三桁台になれば、これは悪化しているんだなということになりますし、当時三桁→次第に二桁なら改善しているということになります。

 ジャパンコーマスケール(JCS)は別名
  3方式 とか 3‐3‐9度方式
とも言われています。これは、大きく3つに分けた分類をさらに3つに分けていくところが3‐3‐9度(神前の結婚式の)と似ていることから、つけられた名前でしょう。




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ジャパン コーマ スケール (JCS) 上

2006年03月23日 | 高次脳機能障害の検査方法
ジャパンコーマスケールとは、意識レベルの測定基準です。

交通事故で高次脳機能障害が後遺障害として残る方は、事故時に意識障害があります。
この意識障害を評価する方法の一つが、ジャパンコーマスケール(JCS)で日本で最も広く使われている頭部外傷の意識障害の重症度の基準です。

交通事故に遭うと救急車で病院に入院しますが、その病院のカルテや看護記録を読むときに、この“JCS”が出てきます。
例えば、「意識レベル 30/JCS」とか「level30/JCS」とか書いてあります。

JCSは、全部で9段階で、数字が大きくなるに従って、より重症であることを示します。
まず、一桁で表す時、これは「覚醒している状態」を表します。
  「1」 が 「清明とはいえない」
  「2」 が 「見当識障害がある」
  「3」 が 「自分の名前、生年月日が言えない」
です。
二桁で表すときは、
  「刺激すると覚醒する状態」を表します。
  「10」 が 「呼びかけで容易に開眼する」
  「20」 が 「大きな声で開眼する」
  「30」 が 「痛み刺激でかろうじて開眼する」
です。
三桁になりますと、
  「刺激しても覚醒しない」状態を表します。
  「100」 が 「痛み刺激に対して、はらいのける動作をする」
  「200」 が 「痛み刺激に対して、手足を動かしたり、顔をしかめたりする」
  「300」 が 「痛み刺激に反応しない」
です。


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BADS 下

2006年03月21日 | 高次脳機能障害の検査方法
 遂行機能障害を理解するために、極端な例かもしれませんが、遂行機能のみが障害された人というのを考えてみます。
 言葉は普通に話せるし、聞けるし、書ける、麻痺も全くなく、行動はできる。認知や記憶の障害も全くない。しかし、何かにこだわってしまい、本来会社に行くために朝起きて、出かけなければならないという行動をとらなければならないのに、例えば昼までは家にいなければならないのだと思い込んでしまう。例えば、朝6時30分のバスに乗り込まないといけないのだと思い込み、そのバスが時刻通りにこないとそれでパニックになってしまったりする。このような障害が遂行機能障害ではないかと思います。
 BADSは、この遂行機能の検査方法で大きくわけて6つの検査方法からなります。
それは、
1. 規則変換カード検査
2. 行為計画検査
3. 鍵探し検査
4. 時間判断検査
5. 動物園地図検査
6. 修正6要素検査
です。
各検査は4点満点なので、6種類ありますから24点満点です。
この点数の分析から、さまざまな状況での問題解決能力を統合的に評価できるとされています。

 この検査方法はある程度の分量があるので、インターネットに載っている情報としては、市販品の販売案内がありました(→こちら=サクセスベル株式会社のHP)。これでも素人にはよくわかりませんが、少しはイメージを膨らませることができるかと思い、引用しました。
 



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BADS 上

2006年03月18日 | 高次脳機能障害の検査方法
 BADSとは、遂行機能が障害されているかどうかをみる検査方法です。

 BADS(Behavioural assessment of the dysexecutive syndrome)の日本語訳は、
「遂行機能障害症候群の行動評価」
とやたらに長く、こなれたものではありません。これは、この検査が比較的新しく(1996年)考えられたこととも関係するかもしれません。

 遂行機能とは
「目的をもった一連の活動を有効に行うのに必要な機能であり、有目的な行為が実際にどのように行われるかで主に評価される。」
などと医学の教科書には書いてあるのですが、医学には素人の私からするとわかったような、わからないような説明です。

別の本には、
「遂行機能とは、言語、行為、対象の認知、記憶などある程度独立性を持った高次脳機能を制御し、統合する『より高次の』機能である」(石合純夫:高次脳機能障害学)としています。

これらの解説を私なりに考えてみますと、人は言葉を使って話したり、聞いたり、読んだり、書いたりといった言語の機能を持っています。
手や足などを使って行動を行います。ある物事を認知したり記憶したりします。これら一つ一つは高次脳機能といわれるものですが、これらを全てまとめて目的に向かって行っていく能力、これが遂行機能といわれるものです。


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