南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

遠方の病院での治療費は認められるか?

2013年06月28日 | 未分類
 自分の住んでいない地域周辺では良い病院がない。色々調べてみたら,遠方ではあるが良い病院が見つかった。
 こういうケースで,遠方の病院での治療費が認められるかが問題になった裁判例があります。

 横浜地裁平成25年3月26日判決(自保ジャーナル1895号)

 被害者は関東在住。交通事故で右腕神経叢損傷となりました。
 できる限り元の状態に戻したいと,肩,肘だけではなく,手指の機能再建治療まで行っている病院を探したところ,関東では適当な病院がなく,山口県の病院がそのような治療をしていることがわかったので,山口の病院で治療。
 訴訟となり,山口での治療費が問題になりました。

 裁判所の判断
 「治療の結果,肘が胸のところまで上がるようになり,指を少し動かせるようになった等,一定の効果があったから,治療の必要性があった。治療費は認められる」

 この裁判例のポイントは,

 ・山口県にしか治療方法を実施している病院がなかった
 ・治療に一定の効果があった
というところにあると思います。

 いずれかが欠けても,治療費が認められなかったかもしれません。
 治療に一定の効果があるかどうかは,事前にはわからないですから,治療費が支払われないリスクを考えて治療する必要があることになります。

 病院を変えようと思っているが,任意保険会社が同意してくれない,支払ってくれないというトラブルは時々起こりますので,このようなときはどの程度リスクがあるのかを知る上でも,弁護士に相談されることをお勧めします。


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人身傷害補償保険

2013年06月03日 | 未分類
 人身傷害補償保険(人傷保険)というものが自動車の保険にはある。

 これは特約,つまりオプションになるので,保険に入る場合には自分でオプションとして契約しておかなければならないもの。

 この人傷保険,入っておいた方がよい。
 というのは,過失相殺分を補う機能があるからだ。

 この保険は,自動車事故で被保険者が,被保険自動車の運行に起因する事故によって傷害を負った場合に発生する損害を支払ってもらえるもので,過失相殺があるかどうかは問わないからだ。

 もっとも,被保険者の故意又は極めて重大な過失によって生じた傷害に対しては,保険金は支払われない(免責事由)から注意が必要。

 「極めて重大な過失」についての裁判例としては,札幌高裁平成23年9月30日判決(自保ジャーナル1894号)がある。
 運転中,信号無視を発見されて,パトカーに発見されて逃走。
 高速度(75キロ)でカーブを曲がりきれず,民家の塀に衝突して死亡したケースでは,「極めて重大な過失」ありとされ,人傷保険の請求が否定されている。


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