脊髄不全損傷をどのように認定するかについて参考になる裁判例をみかけましたので、紹介します(大阪地裁平成20年7月31日判決自動車保険ジャーナル1787号10ページ)。
このケースは、被害者側が脊髄不全損傷(3級)を主張し、加害者側が「そもそも被害者には脊髄不全損傷などない」と主張し、真っ向から主張が対立していた事案です。
裁判所は、このケースで脊髄不全損傷を認めました。
1 事故の大きさ、事故が被害者に与えた衝撃が強いこと
←加害車両が時速70キロから80キロで、被害者(自転車で走行中)に衝突し、ボンネットに跳ね上げたまま衝突地点から約40メートルの地点まで進行して被害者を地面に落としたという事故でした
2 被害者の骨折箇所
←「被害者は、脊椎の多発骨折(第6、第7頚椎棘突起骨折、第1胸椎破裂骨折)等の骨折を折っており、第1胸椎の椎体が完全にひしゃげてしまっており、その椎体の後ろ側にある脊髄の一部が損傷を受けた可能性がある」と裁判所は判断しています。
脊髄損傷は直接確認できないが、骨折などの明らかに診断できているところから、脊髄損傷の可能性があると判断したものです。
3 被害者の症状
←被害者に、両下肢痙性不全麻痺、両下肢知覚障害があることを忍t根医師、これは脊髄の索路症状と認められるとしました。
また、排便・排尿障害があることも脊髄不全損傷を推認させるとしています。
4 画像所見がないことは決定的な証拠とはならない
←このケースでは、事故直後の画像所見で圧迫所見や髄内輝度所見がなかったようですね。
しかし、裁判所は、
「脊髄不全損傷は、知覚や運動が完全に麻痺する完全損傷とは異なり、損傷の部位・程度・損傷形態等により、代表的とされる各種症状の有無・程度には広範囲の差異があるとされ、画像で明確に捉えられない脊髄不全損傷があっても矛盾しないといえるから、画像所見のないことが決定的なものとはならない」
としています。
5 事故に近接した時期に麻痺や知覚障害がなくても脊髄不全損傷を否定することにはならない
←このケースでは、事故直後に上下肢に反射亢進があったようですが、裁判所は、
「仮に、本件事故に近接した時期に麻痺や知覚障害がなくても、脊椎固定隣接障害や脊髄不全損傷により遅発的に麻痺が進行したり、損傷脊髄由来の疼痛が悪化することは臨床医がしばしば経験するところであるから、脊髄不全損傷を否定することにはならない」としています。
このケースは、被害者側が脊髄不全損傷(3級)を主張し、加害者側が「そもそも被害者には脊髄不全損傷などない」と主張し、真っ向から主張が対立していた事案です。
裁判所は、このケースで脊髄不全損傷を認めました。
1 事故の大きさ、事故が被害者に与えた衝撃が強いこと
←加害車両が時速70キロから80キロで、被害者(自転車で走行中)に衝突し、ボンネットに跳ね上げたまま衝突地点から約40メートルの地点まで進行して被害者を地面に落としたという事故でした
2 被害者の骨折箇所
←「被害者は、脊椎の多発骨折(第6、第7頚椎棘突起骨折、第1胸椎破裂骨折)等の骨折を折っており、第1胸椎の椎体が完全にひしゃげてしまっており、その椎体の後ろ側にある脊髄の一部が損傷を受けた可能性がある」と裁判所は判断しています。
脊髄損傷は直接確認できないが、骨折などの明らかに診断できているところから、脊髄損傷の可能性があると判断したものです。
3 被害者の症状
←被害者に、両下肢痙性不全麻痺、両下肢知覚障害があることを忍t根医師、これは脊髄の索路症状と認められるとしました。
また、排便・排尿障害があることも脊髄不全損傷を推認させるとしています。
4 画像所見がないことは決定的な証拠とはならない
←このケースでは、事故直後の画像所見で圧迫所見や髄内輝度所見がなかったようですね。
しかし、裁判所は、
「脊髄不全損傷は、知覚や運動が完全に麻痺する完全損傷とは異なり、損傷の部位・程度・損傷形態等により、代表的とされる各種症状の有無・程度には広範囲の差異があるとされ、画像で明確に捉えられない脊髄不全損傷があっても矛盾しないといえるから、画像所見のないことが決定的なものとはならない」
としています。
5 事故に近接した時期に麻痺や知覚障害がなくても脊髄不全損傷を否定することにはならない
←このケースでは、事故直後に上下肢に反射亢進があったようですが、裁判所は、
「仮に、本件事故に近接した時期に麻痺や知覚障害がなくても、脊椎固定隣接障害や脊髄不全損傷により遅発的に麻痺が進行したり、損傷脊髄由来の疼痛が悪化することは臨床医がしばしば経験するところであるから、脊髄不全損傷を否定することにはならない」としています。