南斗屋のブログ

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日馬富士の傷害事件。検察は略式起訴

2017年12月29日 | 未分類
混乱が続いていた日馬富士の傷害事件ですが検察は略式起訴としました。


今回はこの略式罰金ということについて考えてみます。


1 検察官にはどのような選択肢があるのか


傷害罪は 懲役刑と罰金刑があるので、検察官は被疑者をどちらかを選択することになります。


A 略式裁判で罰金にしてもよい⇒略式起訴(罰金)
B 正式裁判にするのか(公判請求)⇒懲役刑を求刑


 日馬富士のケースではAの方を検察官が選択したということになります。略式罰金にするケースは、公判請求をするケースよりも、情状として軽いと検察官が見ているケースです。


2 日馬富士は略式起訴に同意しないという選択肢もあった


 略式起訴するときに被疑者の同意が必要です。


 罰金にするのは有罪が前提なので、有罪か無罪かを争っている被疑者は略式裁判の手続に乗せるのは適当でないからです。


 事実を争う場合は、略式起訴するよという検察官の誘いを蹴って、略式起訴には同意しないという選択をすることになります。


 日馬富士は事実については争う気はなかったようで、略式起訴に同意しました。


日馬富士の弁護人のコメントで「検察官から略式起訴手続の説明を受けた際にも、納得の上、異議なく直ちに応諾した次第です。」というのは、この同意のことを指しています。


3 日馬富士のこの後の手続き


 被疑者が略式裁判に同意すれば、検察官は、被疑者を簡易裁判所に起訴します。12月28日にはこの手続きまで行われました。


 今後は簡易裁判所に手続きが移ります。


 簡易裁判所は検察官から提出された証拠を検討して、

1 罰金が相当であると判断した場合→罰金の命令を出す
2 罰金が相当でないと判断した場合→正式裁判が相当であるとの命令をだす
こととなります。


 ほとんどは1のケースとなり、2となるのはかなり例外です。

 ですので、略式起訴されたとなれば、だいたい「罰金となって終わりですね」と考えるのが普通です。


最終的な処分は裁判所が決めるタテマエにはなっていますが、実務の運用からすると結論が見えているということは多々あるのですが、この運用もその一つです。




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文書送付嘱託とは

2017年12月07日 | 交通事故民事
今回は、裁判でときどき見かけられる文書送付嘱託について考えてみます。

1 文書送付嘱託(ぶんしょそうふ しょくたく)とは何ですか?
⇒裁判所を介して文書の取寄せを行うことです。

 例えば、交通事故で被害者が加害者を訴えたとします。被害者は後遺障害が残ったと主張していますが、加害者は被害者がそのような後遺障害が残ったかどうか疑問に思っているので、被害者の医療記録を見て検討したいと考えています。
 このようなときに加害者側から裁判所を通じて、病院の医療記録を取り寄せてほしいという申請を出し、裁判所がこれを認めれば、裁判所を通じて医療記録を取り寄せることができます。

2 なぜ裁判所を介して行わなければならないのですか。
⇒裁判所からでなければ文書の送付を要請できないからです。

 先ほどの例で見ますと、加害者側が被害者の医療記録を病院に直接要請しても、病院側は応じてはくれません。これは個人情報保護の観点からです。
 しかし、裁判所が正式に嘱託してきた場合は、例外として医療記録を裁判所に送付します(厳密にはコピーを送付します)。
 このように直接文書を入手できない場合に、裁判所を通じて文書を取り寄せるのが文書送付嘱託の機能です。

 なお、「文書」送付嘱託となっていますが、純粋な文書だけでなく、CTやMRI等の画像も対象になります。 

3 文書の取り寄せの費用はどちらが負担するのですか?
⇒申請をした方です。
 裁判所が嘱託をする形式にはなっていますが、裁判所からは支払われませんので、申請をした側が必要な費用は支払うことになっています。

4 相手側の取り寄せる記録というのは、こちらでも見る事はできるのでしょうか。
⇒閲覧・謄写可能です。

先ほどからの例でみると、加害者側が申請したもので医療記録が取り寄せられた場合、被害者側も医療記録を見て、コピーを取ることは可能です。

5 取り寄せた文書はどこに保管されるのですか。
⇒裁判所が嘱託をした文書なので、原則は裁判所が保管します。
しかし、東京、大阪、名古屋などの交通事故の専門部署がある裁判所では、医療記録を全て保管していては膨大なスペースを取るため、取り寄せ申請をした側(先ほどの例でいえば加害者側)に保管させるという扱いをしています(一定の要件を満たした場合のみ)。



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