南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

自賠責の被害者請求 2

2006年09月30日 | 未分類
被害者請求は、被害者が代理人(弁護士)をつけて行う事もできますが、被害者本人が行う事ももちろんできます。

被害者本人が行う場合は
① 直接、自賠責保険会社に請求するケース
② 加害者側の任意保険会社を通じて行うケース
がみられます。

どちらの方法をとっても良いのですが、加害者側の任意保険会社の担当者とは、被害者請求をするまでに、何回か連絡をとっていることが多いでしょうから、心理的に頼みやすいという事はあるでしょう。
しかし、②の方法だと
 任意保険会社 → 自賠責保険会社
という書類の流れ方になりますし、問合せ等も
 任意保険会社 → 被害者
となる為、手数が多くなり、その分手続のスピードは遅くなります。
任意保険会社の担当者が、被害者請求に不慣れな場合は、ますます手続が遅くなることがあり、この点については、被害者は絶えず目を光らせていなければなりません。

このようなことから、代理人(弁護士)が被害者請求を行う場合は、任意保険会社を通さず自賠責保険会社に対して、直接請求をすることが多くなると思います。

自賠責保険会社は、被害者請求を受けたときは
① 支払基準の概要
② 保険金等の支払の手続の概要
③ 指定紛争処理機関の概要
を記載した書面を、被害者に交付する事になっています(自賠法16条の3第1項、適正化省令2条)

このような書面を交付するのは、被害者に自賠法の支払基準や制度を知らせることにより、被害者側から、自賠責保険の支払いが適正かどうかチェックさせるものです。

自賠責保険会社に請求しても、その損害の算定は、自賠責保険会社が行うわけではありません。

損害額の算定等の調査は、損害保険料率算出機構が行いますので、被害者請求で提出された書類は、調査の為に損害保険料率算出機構に回されることになります。



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自賠責の被害者請求 1

2006年09月28日 | 未分類
自賠責の被害者請求というのは、交通事故で被害者が加害者側の車両にかけられていた自賠責保険に、直接請求していくことを言います。

自動車は、自賠責保険がついていなければ、運行してはいけないことになっています。(自賠法5条)
自賠責保険なしで運行した場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑罰が科せられます(自賠法86条の3第1号)。
ですから、自賠責保険は、強制保険とも言われています。

自賠責保険は、自動車の保有者が保険会社と保険契約をしているものです。
保険には「保険者」と「被保険者」がありますが、自賠責保険では「保険者」は保険会社、「被保険者」は自動車の保有者及び運転者です。(自賠法11条)

通常、保険というものは、「被保険者」が「保険者」に保険金を請求するものです。
自賠責保険でも、被保険者が、被害者に対して損害賠償をした場合は、その分の保険金請求ができます(自賠法15条)が、さらに被害者も「保険者」=保険会社に直接請求することができます。
これが、「被害者請求」というもので、自賠法上の独特の制度です。(自賠法16条)



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交通事故事件被害者のための刑事事件Q&A 17

2006年09月26日 | 未分類
Q 裁判官が判決を言い渡した後に、加害者に対し、「この判決は有罪判決ですから、控訴ができます。控訴をするときは、14日以内に、東京高等裁判所に宛てた控訴状を当裁判所に提出してください」といっていましたが、控訴はどういうものですか。
A 判決の内容に刑事事件の当事者(検察官、加害者、弁護人)が不満があるときに、高等裁判所に再度審理してもらうことを要求することです。判決の次の日から14日以内に控訴状を提出する必要があり、この期間内に当事者から控訴状が提出されなかった場合は、判決の内容は確定します。

Q 被害者側としては、判決内容に不満があるのですが、被害者側から控訴ができますか。
A 残念ながら被害者側には控訴する権利がありません。これは、刑事事件では被害者は当事者として見られていないからです。
 被害者側の意向を汲むべきであるのは検察官ですから、判決に不満がある場合は、検察官に対して、面会を申し入れるなどして、検察官が控訴をするように働きかける必要があります。
 もっとも、検察官は控訴に対して硬直的な考え方を取っており、なかなか被害者の言い分を聞いて控訴するということはありません。
 これは、検察官が控訴する場合は、地方検察庁で検察官会議を開かなければならなかったり、高等検察庁との関係があるものと思われます。

(控訴審・上告審)
Q 高等裁判所ではどのようなことが行われるのですか。
A 高等裁判所には一審で行った記録が全て行きます。
 控訴した側は、控訴の理由を記載した書面(控訴趣意書)を提出し、高等裁判所はその控訴理由がないかを審理します。
 高等裁判所では新たな証拠が提出が一審よりも制限されており、一審での審理より短期間で終わることが多いです。
Q 高等裁判所でも傍聴は可能ですか。
A 審理は公開で行われますので、傍聴が可能です。
Q 高等裁判所での判決に加害者側が不満があるようであり、上告がされたそうですが、最高裁判所ではどのようなことが行われるのですか。
A 最高裁には一審及び高等裁判所で審理を行った記録が全て行きます。
 上告した側は、上告の理由を記載した書面(上告趣意書)を提出し、最高裁はその理由がないかを審理しますが、上告理由は基本的には憲法違反や判例違反とされており、制限されています。
Q 最高裁でも傍聴は可能ですか。
A 最高裁は基本的には書面審理ですから、書面審理だけで裁判がなされる場合は傍聴することができません。 
 高等裁判所の判決を見直す場合は、弁論を開くことになっており、この場合は公開の法廷で行われますので、傍聴が可能です。


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交通事故事件被害者のための刑事事件Q&A 16

2006年09月24日 | 未分類
(判決内容について)
Q 裁判官が、判決で「被告人を禁錮2年に処する。この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。」といっていましたが、どのような意味ですか。
A 判決には大きく分けて、「実刑判決」と「執行猶予付きの判決」があります。
 「実刑判決」というのは、加害者が実際に刑務所にいくというもの、「執行猶予付きの判決」については後で詳しく説明いたしますが、刑務所にはいかなくてもよいというものです。

Q 執行猶予付き判決について詳しく教えてください。
A  先ほどの判決、「禁錮2年執行猶予3年」という判決を例にして説明します。
 1 加害者が身体を拘束されているときは、判決を言い渡された日に釈放されます。
 2 執行猶予期間(例では3年)に犯罪を犯さなければ、刑務所に行くことはありません。
 3 執行猶予期間に犯罪を行った場合は、執行猶予が取り消されることがあり、「禁錮2年」が現実となり、刑務所に行かなければなりません。また、後で犯した犯罪についても実刑となる可能性が高いです。

Q 執行猶予付き判決の意味は分かりましたが、加害者は保護司さんのところに通ったりするのでしょうか。
A 執行猶予付き判決の中に、保護観察付きのものとそうでないものがあり、先ほどの判決内容だと保護観察がついていませんし、実際、執行猶予付き判決の大半は保護観察がつきません。
 保護観察がつかない場合は、保護司のところに加害者が通うということはなく、公的な機関が執行猶予期間中に監督するということはありません。

Q 「禁錮」という言葉が聞き慣れないのですが、どのような意味ですか。
A 「懲役」も「禁錮」も刑務所に拘束される刑であることは同じです。しかし、「懲役」は強制的な労働を伴うもの、「禁錮」はそのような労働は伴わないものとされており、「禁錮」の方が「懲役」よりも軽い刑とされています。
 業務上過失傷害や業務上過失致死では、法律上、「懲役」と「禁錮」のいずれかを裁判官が選択することになっていますが、飲酒運転やひきにげが伴うと「懲役刑」、そのようなものがないと「禁錮刑」というのが一般的な裁判官の考え方です。



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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 15

2006年09月22日 | 未分類
Q 加害者側の弁護人から示談をしてほしいと言われていますが、どうしたらよいでしょう。
A 刑事事件と民事の損害賠償は別の手続きですので、刑事事件が続いていても被害者は民事の損害賠償について示談することはできます。
 しかし、示談をするというのは、加害者の刑事事件の処分で考慮されます。すでに加害者は起訴されていますから、示談をしたからといって、起訴が取り消しになるわけではありませんが、裁判官の判決、つまり執行猶予か実刑か、実刑になるとしてもその刑がどの程度になるのか等にある程度の影響を与えてきます。
 刑事の裁判官から見ると、示談をするということは、民事としては、被害者が加害者からの被害弁償を受け入れ、解決したとみますので、示談をしていない場合に比べて、刑事処分で考慮すると考えるのです。
 ですので、この点を慎重に考慮して、示談をするのかどうか、示談するとしていつの時点(刑事事件が終わってからか否か)とするかを決める必要があります。

Q 加害者側の弁護人から、「加害者側から見舞金をお支払いいたします。これは民事の損害賠償の賠償から差し引きませんから、是非受け取ってください」と言ってきたのですが、どのようにしたらよいでしょうか。
A 見舞金を受け取ることは自由ですが、示談の場合と同じ理由から、加害者の刑事処分には影響を与えます。もちろん示談が与える影響の方が大きいのですが、刑事の裁判官としては、加害者が誠意を示し、被害者がそれを受け入れたという理由から刑事の処分を軽くする方向に働きます。
 見舞金を受領したことは、刑事事件の記録の中に残ります。
 また、見舞金の額にもよりますが、多額の場合は、民事の損害賠償で慰謝料の減額となる可能性も否定できません。



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交通事故事件被害者のためのQ&A 14

2006年09月20日 | 未分類
(刑事裁判と民事の損害賠償)
Q 加害者が法廷で「この事故は私が全面的に悪いと思っています。保険会社を通じて全額お支払いします」と供述していましたが、これで100%の保障をしてもらえるものでしょうか。
A そうなるとは限りません。
 加害者が法廷でそのように供述しても、保険会社と交渉するときは、保険会社は過失相殺(かしつそうさい)できるような事案であれば、被害者側の過失を主張してきますし、これは民事裁判になったとしても同じです。
 つまり、損害賠償に関しての刑事事件における加害者側の供述は、リップサービスとしてしか考えられないということです。
 これは実際に支払うのが加害者ではなく、保険会社であるので、保険会社としては自らのビジネスとして厳しく査定する方針だからです。加害者側としては、刑事事件では少しでも刑を軽くしてほしいため、上記のような供述がときどき見られますが、被害者側としてはそれを鵜呑みにはしない方がよいと思います。

Q 刑事事件の中で民事の損害賠償も一緒に判決してもらえないものでしょうか。
A 刑事事件と民事事件は、別の手続きであり、刑事事件の中で民事の損害賠償を一緒に判決してもらうということはできません。
 諸外国では、刑事事件の中で民事の損害賠償を一緒に判決してもらうという制度(これを「付帯私訴」(ふたいしそ)といいます)を持っているところもあり、日本でもこの制度の導入を検討するようですが、制度自体できるかどうか現時点では確定していませんし、制度が導入されても殺人事件等の一部の事件にとどまる見通しであり、交通事故事件について導入されないのではないかと思います。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 13

2006年09月18日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
Q まだ、刑事事件が途中でも、刑事事件の記録を閲覧したりコピー(謄写)したりすることはできるでしょうか。
A できます。「犯罪被害者等の保護をはかるための刑事手続に付随する措置に関する法律」という法律で、被害者側の損害賠償請求権の行使のために必要があるときは閲覧やコピー(謄写)の許可を裁判所ができると定められています(同法2条)。この手続をするためには、裁判所の刑事事件を担当している書記官に連絡して、手続を行う必要があります。

Q 「情状証人」という言葉を聞いたことがあるのですが、どのような意味でしょうか?
A  有罪となることを前提として、加害者のこれまでの生い立ちや、どのような人が加害者を監督し、今後、更生に導くことができるのか等(これを「情状」と言います)を証言してもらうことのできる人をいいます。
 同居している家族がいる場合は、その家族が頼まれることが最も典型的です。一人で暮らしている被告人であれば、今後、同居予定の方や職場の上司、社長が法廷に出て証言するこもとあります。



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交通事故被害者のためのQ&A 12

2006年09月16日 | 未分類
Q  起訴されてから一審の判決まではどのくらいの期間がかかるのでしょうか?
A  第1回公判は、起訴されてから1ヶ月半~2ヶ月位です。事実を認めている事件では、1回の公判で検察官側の証拠調べは終了することが多いです。
 第1回で加害者側の証拠調べも終了すれば、被害者側の意見陳述等は第2回公判でということになります。
 被害者側の意見陳述等が終われば、検察・弁護人側の意見(論告と弁論)を行い、審理が終結します。
 早ければ、その1~2週間後に判決となることが多いです。
しかし、加害者側が起訴された事実を認めなかったり、争う点があったりしますと、証人を呼ばなければならず、この場合ある程度時間がかかります。

Q 「公判前整理手続き」というような制度があると聞いたことがありますが、どのようなものですか。被害者側はこの制度には関与できないのでしょうか。
A 公判前整理手続きは、公判期日が始まる前に争点を整理して、公判が始まったら連続して期日を開き、判決まで進めていこうという制度です。
 裁判員制度が2009年から始まりますが、裁判員制度の適用となる事件は必ず公判前整理手続きをしなければなりません。
 現段階では裁判員制度が始まっていませんが、裁判所、検察官、弁護人も公判前整理手続きに慣れなければならないので、比較的重大な事件は公判前整理手続きが行われる傾向が続いています。
 交通事故事件の場合、業務上過失傷害や業務上過失致死事件で起訴された事実を加害者側が認める場合はこの制度が適用されるということはあまりないと思います。
 しかし、危険運転致死で複数の方が被害者となった場合や業務上過失致死事件等でも起訴された事実が争われる場合は、公判前整理手続きになる可能性はあると思います。
 公判前整理手続きは非公開であり、被害者の方は刑事事件では当事者扱いされないため、この手続きに参加することもできませんし、傍聴することもできません。
 この手続で何が行われたかについては、公判期日において裁判所が明らかにすることになっています。
 被害者側としては、加害者の刑事手続で公判前整理手続きがとられたときは、いつ公判前整理手続きの期日が開かれているのか、いつごろ争点が整理されそうなのか、公判期日はいつごろ指定されそうなのかについては、検察官を通じて情報を入手することとなるでしょう。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 11

2006年09月14日 | 未分類
(正式裁判の場合)
Q  刑事事件一審の公判はどのようなことをするのですか?
A  公判では
 1  起訴された事実を裁判所が認定できるのか
 2  認定できるとしたら、刑をどの程度にするのか
の2点について検察官と弁護側が証拠を請求し、証拠調べが終わったら双方から裁判官に対して意見を述べ合います。
 その後、裁判所が判決をします。

Q 被害者側はどのようなことができますか。
A 正式裁判になった場合は、不起訴のときや、略式罰金の時に比べ、被害者ができることが多くなります。
 1 証人として証言すること
 検察官が被害者(又はその遺族)を裁判所に証人として請求し、それが認められれば、証人として証言することが可能です。
 2 被害者として意見陳述をすること
 裁判所に対して意見を述べることができます。この場合、意見は証拠にはならないことが、証人の場合との違いです。なお、意見陳述をするためには、検察官にその意向を伝える必要がありますので、起訴がされたら速やかに検察官にその旨を伝えてください。
 3 刑事記録の閲覧謄写
 事件が確定しない時期でも、裁判長の許可があれば、刑事記録を閲覧謄写できます。
 4 公判の傍聴
 正式裁判は、公開の法廷で行われますので、傍聴をすることができます。マスコミの注目するような事件でなければ、傍聴券の発行という手続は通常行われませんので、自由に見ることができます。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 10

2006年09月12日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
(略式裁判・即決裁判手続きの場合)
Q 検察官が略式裁判・即決裁判手続きを選択した場合、被害者側がそれに対して異議を申し立てるなどの手段がありますか。
A ありません。略式裁判や即決裁判手続きは、検察官がイニシアティブをもち、加害者側の同意を得て行われますので、被害者側は手続きとしても何ら関わり合いをもてませんし、裁判所の判断に対しても被害者側が異議を申し立てるということはできません。
 被害者側が意見を法廷で述べたいとしても、略式裁判では法廷そのものが開かれませんし、即決裁判手続きでは簡易な証拠調べ手続きですので、被害者の意見陳述ができるかどうかわかりません(即決裁判手続きは2006年10月からの新しい制度ですので、この点がどうなるのかは今後の運用次第です)。
 よって、被害者側が正式裁判を希望するときは、検察官が刑事処分を決める前に、きちんと検察官に対して被害者側の意向を伝える必要があります。伝えても、必ずしも正式裁判となるとは限りませんが、努力はすべきです。

コメント (1)
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