原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が公開した和解事例1691から和解事例1695までを紹介いたします。
1691=居住制限区域(富岡町)の生命身体損害、日常生活阻害慰謝料に関するもの
1692=旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)の営業損害に関するもの
1693=帰還困難区域(双葉町)の営業損害に関するもの
1694=南相馬市鹿島区の除染費用に関するもの
1695=居住制限区域(飯舘村)の生命身体損害、生活費増加費用等に関するもの
和解事例(1691)
居住制限区域(富岡町)に居住していた申立人ら(夫婦及び夫の母)について、原発事故による避難に伴い悪化した股関節症等の持病につき申立人母の平成27年12月から平成28年5月までの通院慰謝料及び付添費用や、避難後に認知症、肺がん、咽頭がん、脳出血となり要介護状態となった亡父の平成24年9月から平成28年5月までの通院慰謝料、付添費用及び平成28年4月から平成30年3月までの日常生活阻害慰謝料(増額分)が認められたほか、原発事故前はパート就労していた申立人妻が、原発事故後、亡父や申立人母の日常的な介護のために再就職をすることができなかったことによる平成29年8月から平成30年6月までの減収分について、平成29年9月以降は申立人母がデイサービスを利用し始めたことも
考慮して原発事故による影響割合を乗じた上で、生命身体的損害に係る就労不能損害として認められた事例。
和解事例(1692)
旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)において機械部品の加工等を業とする申立人の営業損害(逸失利益)について、直接請求手続では原発事故と相当因果関係が認められない売上減少が含まれているとして、基準年度の売上額を定めるに当たり、取引先1社に係る売上額を差し引いた上で、東京電力の平成27年6月17日付けプレスリリースに基づく賠償金額が算定されたが、上記差引分を控除せず、また、原発事故の影響割合を6割として算定し直したことにより、追加賠償がされた事例。
和解事例(1693)
帰還困難区域(双葉町)において施設経営をしていた申立人の平成29年3月分から平成31年2月分までの営業損害(逸失利益)について、その算定において差し引く減価償却費を、税法上の耐用年数ではなく実質的耐用年数を用いた上で、原発事故の影響割合を平成29年3月分から平成30年2月分までは3割、同年3月分から平成31年2月分までは1割とした金額(これは東京電力が平成27年6月17日付けプレスリリースに基づき算定した自認額を上回る金額である。)が賠償された事例。
和解事例(1694)
地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域(南相馬市鹿島区)に居住する申立人らの住居周辺の屋敷林について平成27年に除染目的で行った伐採及び整地作業について、業者に依頼した部分に係る支出費用、申立人らや近隣住民が実施した部分に係る労賃分等につき、立証の程度を考慮し、いずれについても5割の限度で賠償された事例。
和解事例(1695)
居住制限区域(飯舘村)に居住していた申立人ら(父母及びいずれも成人の子3名)について、避難生活中の生活費増加費用(事故前は自家消費用に栽培していたことにより負担のなかった米及び野菜に係る食費並びに井戸水を利用していたことにより負担のなかった水道費等)、申立人父が所有していた農機具等の財物損害が賠償されたほか、原発事故の被害者であることから職場でいじめを受けたことによりうつ病を患い就労が困難となった申立人子1名の、平成25年1月分から令和元年9月分までの通院慰謝料等の生命身体的損害、平成27年3月分から平成30年3月分までの就労不能損害(原発事故の影響割合を7割から3割へ順次漸減して考慮。)が賠償された事例。