南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

期日の変更

2008年07月29日 | 交通事故民事
以前、「判決期日の変更」という記事を書いたことがあります。

 これは、判決期日が定められているのにその期日が裁判所の一方的な都合によって変更させられてしまうというものでした。

 ところで、裁判所で開かれる期日というのは、判決期日ではなく、弁論期日や、弁論準備期日というものもあり、これらの期日も変更することがあります。

 例えば、裁判所から和解案が出て、原告も被告もこれを検討しなければならないというときに、定められた期日までに和解案を受けるかどうかの検討がまだ出来ていないということがあります。

 交通事故の裁判ですと、加害者側は、任意保険会社のオーケーがでなければ、裁判上の和解をすることが出来ません。

 任意保険会社は、会社ですから、しかるべきところの決済が必要になりますが、だいぶ上の上司の決済まで必要というときに、決済が間に合わないことがあるのです。
 このようなときに、期日を開いても、加害者側の代理人から、
「すみません。まだ、検討が不十分ですので、別の期日を指定してください。」
といわれてしまって、その期日が空転するだけですので、このような場合は、裁判所が期日の変更に応じることがほとんどです。

 法律では、
 「口頭弁論及び弁論準備手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。」
といかめしく書いてあるのですが(民事訴訟法93条3項)、実際は、このように期日の変更が緩やかに行われています。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法律事務所の加入・退所の挨拶状

2008年07月25日 | 未分類
 前回、弁護士事務所からの挨拶状として「暑中見舞い」について触れましたが、今回は、そ法律事務所の加入・退所の挨拶状について紹介してみます。

 弁護士の事務所では、弁護士が加入・退所すると、挨拶状というものを送付する習慣があります。

 例えば、新たに弁護士が加入したときなどは、弁護士を採用した法律事務所は、

「拝啓 時下益々ご清祥のことと存知申し上げます。
 さて、当事務所は、この度**弁護士を迎え入れました。
 **弁護士は、**大学を卒業し、本年9月に司法研修所を出て弁護士となりました。
 **弁護士の加入により、当事務所も法律サービスを一層拡充させることができると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。」
@@法律事務所
 弁護士 A、B、C
というような挨拶文を書きます。

 これに対して、新規加入の弁護士は、

「拝啓 時下益々ご清祥のことと存知申し上げます。
                                 さて,私こと,この度司法修習を終え,法律事務所**の一員となることができました。
 弁護士としては、はなはだ未熟者ではございますので,今後とも皆様のご指導, ご鞭撻を賜りますよう,よろしくお願いいたします。」
弁護士 D

などというように書きます。

 これを関係各所に郵送するのですが、よく考えると、一般の会社はこんなことはしませんね。

 法律事務所は入ったときだけでなく、出たとき、つまり退所したときも同じような挨拶状を書くのですが、私が会社に入ったときも出たときもそんな挨拶状を書いた覚えがありません。

 普通は、入社した個人個人が自分の知人や関係先に挨拶状を個人名で出すものです。

 それぞれの業界には、特殊な習慣というのがあるものですが、こういう挨拶状も法律事務所のひとつの習慣と考えればよいのかもしれません。

 ただ、今後弁護士が増加していき、事務所への出入りが激しくなれば、挨拶状を出す手間だけでかなりなものとなりますので、挨拶状を出すという習慣も廃れていくかもしれませんが。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

暑中お見舞い申し上げます

2008年07月22日 | 未分類
 暑中お見舞い申し上げます

 本日(2008年7月22日)は、大暑にあたります。

 大暑とは、
 「二十四節気の一。7月23日ごろ。1年のうちで、最も暑い時期」(大辞泉)

 ”二十四節気”というのは、1年の季節を24にわけてあらわすもので、1年は12ヶ月ですから、半月に一度のペースということになります。

 本日は大暑で、その次は立秋になります。
 今年の立秋は8月7日ですから、その間が一番暑いということに暦の上ではなります。

 暑中見舞いは、暑中(小暑と大暑の一ヶ月間)に送るものとされており、立秋を過ぎてしまうと、暦の上では「残暑」なので、残暑見舞いになります。

 暑中見舞いは送らない方も多いのではないかと思いますが、弁護士事務所では、夏休みの案内も兼ねて送るところが多いようです。

 私の事務所では、事務所で夏休みを一斉にとりませんので、事務所自体は通常の体制です(通常の業務時間は→こちら

参考;過去記事「弁護士の夏休みについて」

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自賠責保険の後遺症認定への裁判所の評価

2008年07月18日 | 交通事故民事
 判例集を見ていましたら、裁判所がどのように自賠責保険(実際は、損害保険料率算出機構が行っていますが)の後遺症認定をどう見ているのかについて判断しているものがありましたので、紹介しておきます。

 自賠責保険の後遺症認定については、以前も記事で書いたことがありますので、その意味内容についてご存じない方は過去記事をご参照ください
→・自賠責保険の後遺症認定

 今回紹介したい判決は、横浜地裁平成20年1月23日判決(自動車保険ジャーナル1740号)です。

「損害保険料率算出機構は、医師が作成した後遺障害診断書の記載のみをもって後遺障害の認定をするのでなく、診療録や画像等の様々な資料をもとに、これまで多くの症例を扱ってきた豊富な実務経験に基づいて認定作業をしているのであり、交通事故実務において、その認定には高度の信用性があるとされている。特に、被害者側のともすれば課題となる後遺障害の訴えに対し、客観的な画像上の裏づけその他の医証があるかないかを慎重に検討し、客観的に認定がされていることは公知の事実である。」

 つまり、
 自賠責(損害保険料率算出機構)の後遺障害認定は
1 様々な資料をもとにしている
2 豊富な実務経験がある
3 客観的な認定がされている
から、 
「高度の信用性がある」といえる
ということです。

 これは、裁判官の自賠責の後遺症認定の尊重宣言といえるでしょう。

 つまり、自賠責の認定を裁判の中で変えようというのは、被害者側からしても、加害者側からしてもハードルが高く、大変な労力が必要だということです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「赤い本」の誤記

2008年07月15日 | 交通事故民事
 「赤い本」は交通事故事件に非常に影響力のある本ですが、まれに誤りが見られます。

 「赤い本」にあげられている裁判例のオリジナルを見ようと思って、赤い本で書かれている本のページを探してもないのです。

 結局、それであきらめてしまうこともあるのですが、今回探したものは、赤い本の誤りがわかりました。

 赤い本には、裁判例は
 ”1級の家屋建替費等(家屋・私道改造費・仮住居家賃・引越し費用・登記費用)出費総額2229万円余の7割(1560万円余)を認めたほか、乗用車改造費として、1回分20万円、耐用年数6年、9回分、81万円余を認めた”
というような形で載っているものがそれです。

 この裁判例は、
赤い本では、
(横浜地判平4.8.20自保ジ1004号)
となっているのですが、「平成4年8月20日判決」は誤りで、「平成4年7月20日判決」が正しいのです。

 ややこしいのは、8月20日判決も、7月20日判決も、自保ジャーナル1004号に掲載されているのです。
 
 もちろん、両者は全然別の判決なので、8月20日判決を見ても、家屋建て替えが認められたということは全然載っていません。

 この横浜地裁判決は大分前から赤い本に掲載されています。
 私が確認した限りでは1999年版には載っていました。
 おそらく、一度載せられて、何のクレームもないため、そのままになってしまっているのでしょう。
 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

控訴審における反訴と附帯控訴

2008年07月11日 | 交通事故民事
以前このようなコメント(質問)がありました。

「控訴審における反訴と附帯控訴は
どういう違いがあるのでしょうか。
一審で原告が敗訴し、控訴があった場合
被告としては反訴と付帯控訴が可能なんでしょうか。
その場合要件が異なるのは分かるのですが
主張内容がどのように違ってくるのか分かりません。
手段としての違いしかないのでしょうか。」

 反訴(はんそ)とは、民事訴訟の被告が口頭弁論終結前に同じ裁判の中で、原告を相手方として提起する訴えのことをいいます。
 反訴というのがどのようなものなのかについての詳細は、
ウィキペディア(Wikipedia)
をご参照ください。

 質問のような例は、あまり交通事故訴訟ではお目にかからないと思います。
 他の訴訟でもいい例がすぐには私の頭には浮かびません。

 附帯控訴ができる場合というのは、原告一部勝訴、被告一部敗訴(又はその逆)というようなケースだけなんです。原告が完全勝訴というような場合は、被告が控訴しても、原告は附帯控訴はできないですから。

 附帯控訴は、相手の同意がなくてもできますが、反訴は控訴審では相手の同意が必要です。

 反訴の訴訟の内容と控訴(附帯控訴)された訴訟の内容は、厳密に言えば違うわけので、主張内容も違うはずです。
 もっとも、本訴と関連性があるから反訴できるので、その内容は似てくる可能性はありますが。 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

答弁書

2008年07月08日 | 交通事故民事
 訴訟をするときには、原告から裁判所に訴状を提出します。
 これに対して、被告から提出される書面が「答弁書」です。
 
 答弁書は、準備書面の一種ですが、訴状に対する「答弁」が書かれていることから、「答弁書」という特殊な言い方がされています。
 
 「答弁」というと、だいぶいかめしい言い方ですが、訴状で書かれた請求や事実について、被告としてどう答えるのかということです。

 被害者側が原告だった場合の、答弁書の読み方ですが、まず、訴状を脇に置いてください。答弁書は、訴状の記載が前提となっていますから、訴状がないと何を書いているのかがわからなくなります。

 さて、答弁書の最初には、
「第1 請求の趣旨に対する答弁
  1 原告の請求を棄却する
  2 訴訟費用は、原告の負担とする」
と書いてあることがほとんどです。

 これは、訴状で「請求の趣旨」として書いてあることに対する被告の答えです。
 「原告の請求を棄却する」というのは、”原告の請求を認めない”というのが文字どおりの意味ですが、被告が本気で支払うべきではない(つまり、原告の請求額がゼロである)と考えているのか、ある程度は支払う義務があると考えているが、ここではあえて「原告の請求を棄却する」と書いてあるのかについては、ここを読むだけではわかりません。
 
 そこで、「請求の原因に対する答弁」というところを読み進めるわけです。
 ここには、訴状に書いてある「請求の原因」を認めるか認めないかが書いてあります。
 もっとも、素っ気ないものだと、「原告の証拠提出をまって、おって認否する」などと書いてあるものもあります。
 これは、”被告からは、今のところ認否を留保し、原告から証拠が提出されてから、それを見て認否を明らかにしますよ”という意味です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自賠責保険への遅延損害金の請求

2008年07月05日 | 未分類
 事故の加害者に対しては、損害額の請求とプラスそれに遅延損害金の請求を行うことができます。
 遅延損害金については、詳しくは過去記事遅延損害金についてをご参照いただければと思いますが、事故日から遅延損害金を請求できます。

 ところで、自賠責保険会社に被害者請求をする場合、自賠責保険に対しても遅延損害金を請求することができます。

 この場合の遅延損害金がいつからつくのかですが、
”被害者が自賠責保険会社に請求をしたときから”
です(事故時からではありません)。
 これは、最高裁の判例です。

 ちなみに、最高裁の判決文を紹介しておきますと、
 ”自動車損害賠償保障法一六条一項が被害者の保有者及び運転者に対する損害賠償請求権とは別に保険会社に対する直接請求権を認めた法意に照らすと、同項に基づく保険会社の被害者に対する損害賠償額支払債務は、期限の定めのない債務として発生し、民法四一二条三項により保険会社が被害者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものと解するのが相当である”
となっています(最高裁昭和61年10月 9日判決 判時1236号65頁)。

 この文章が何をいっているのかわからない方が、ほとんどではないかと思います。
 私も法律を勉強しはじめの時は、最高裁の判決やら法律の条文が日本語で書かれているにも関わらず、何をいっているのかよくわからずに、非常に苦労しました。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遷延性意識障害の平均余命の問題

2008年07月02日 | 遷延性意識障害
 介護が必要な重度の後遺障害を負った場合、介護料を請求できます。
 症状固定後の介護料は、症状固定したときからの平均余命をもとにして算定されます。

 「平均余命」というのは、あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、厚生労働省が毎年発表している統計があり、それによって平均余命を決めます。
 例えば、26歳の女性の平均余命は、60.11年とされています(平成16年の統計=簡易生命表による)。
 つまり、26歳の女性はあと60.11年生きる可能性が大(もちろん統計上ですが)ということになります。

 ところで、遷延性意識障害の場合、加害者側から「厚生労働省の発表する平均余命を適用するのは不当だ」という主張が出る場合があります。

 遷延性意識障害の場合は、長く生きられないのではないかというのがその理由で、保険会社サイドの医師から「被害者の平均余命は10年程度と推測される」というような意見書が証拠として提出されるようです。

 このような主張に対して、最近の裁判例は遷延性意識障害も一般人と同じ平均余命を認める傾向にあります。
(この点は、過去記事でも書きましたので、ご興味のある方はこちらへ)

 医師の意見書を厳しく否定した裁判例として
 仙台地裁平成19年6月8日判決(自保ジャーナル1737号)があります。
 判決の一部を抜粋しておきます。

 「被告は、E医師の意見書を前提として原告の余命をせいぜい10年程度であると主張しているが、E医師の意見書記載の報告例についてはその報告例の対象がどのような基準から選択されたものか不明瞭である等その内容の正確性に疑義があるし、対象年度とされる1994年から現在に至る間の医療水準の向上が反映されているとも解されない。
 そもそもE医師が原告を診察したことはないということを抜きにしても、同医師の意見の前提をなす報告例の正確性や妥当性には疑義を呈さざるを得ず、E医師の意見に依拠することはできない。」


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする